稲はこう干せ!収穫の秋はアートだった!【福島県須賀川市】

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コメの生産量県別ランキングで全国6位の福島県。

私が小さい頃は田んぼに稲を干す風景を普通に見ることができましたが、機械化された現代では逆に稲を天日干しをする風景を見る方が珍しくなりました。稲の干し方も「ハザ掛け」「とうか」「ほにお」など、地域や地形、風向きに合った方法で行われており、その工夫もさまざまなんだとか。

そこで今回は刈り取った稲をどのように乾燥させているか、福島県の県中地域を中心に見かけた「稲の自然乾燥」についてご紹介します。

まず最初に会津若松市にある福島県立博物館で見かけた「はざ掛け(はぜ掛け)」という方法。

<福島県立博物館「秋の企画展~ふくしま藁の文化」にて>

しかも、案山子が鋭い目つきで空を睨んでますね。

この「はざ掛け(はぜ掛け)」というのは、束ねた稲を棒などに架け、太陽光線と自然の風で約2週間かけて乾燥させる方法。稲穂の部分を下にし逆さまに吊るすことで、わらの油分や栄養分、甘みが最下部の米粒へ下りて、栄養とうま味が増すのだとか。私が小学生の時に、学校の帰りに見かけた田んぼもこの乾燥方法だった記憶です。

次は、須賀川市仁井田地区や猪苗代町磐根(いわね)地区の田んぼで見かけた干し方。

<須賀川市仁井田地区にて>

こちらは、地面に稲の束を立て自然の風と地面の熱で乾燥させる「束立て」または「わら立て」という乾燥方法。高さは膝より少し高いくらいなので、50~60㎝くらいでしょうか、それより低いものもあります。稲わらの束が倒れていると田んぼと接している部分が乾かないので、わらを立てるというのが基本だそうです。

<猪苗代町磐根地区にて>

続いて、郡山市大槻町で見かけたのは「杭掛け」と呼ばれる方法。田んぼに1本の棒を立て、その棒に束ねた稲を交互に掛けて積み重ねる方法です。

<郡山市大槻町にて>

支えが杭一本しかないので、県立博物館で見た「はざ掛け(はぜ掛け)」に比べるとバランスを考えて重ねていかないとちょっと不安定そうですが、その分スペースはコンパクトで済みそうです。

ちなみに、ここから少し離れた地域でははざ掛けと杭掛けのハイブリッド型もありました。干し方の違いで味比べしているのでしょうか。

<郡山市片平町にて>

<会津磐梯山は宝の山>

最後に番外編として磐梯山のふもとに広がる猪苗代町の「農業アート」をご紹介します。

<猪苗代町磐里百目貫(どうめき)にて>

田んぼが広がるのどかな農村地帯に、アーティスティックな天日干しモニュメントが登場すると、近所の写真ファンがSNSで紹介するのでちょっとしたスポットに。

ちょうど撮影した日は県内の高校駅伝大会の直前で、陸上部と思われる生徒と先生・保護者と思われる方たちがたくさん下見に来ていました。

この「農業アート」、高さは約3m、横幅は約4~5mで、少し見上げるほどの大きさ。私だったらこの作品が気になって、ついつい立ち止まってしまい試合にならなさそうです。

<近くの田んぼにシベリアからの白鳥の姿も>

今年も猪苗代で”例”の稲干しが始まったらしい、とうわさを聞きつけて町外からわざわざ見に行った私。ドライブがてらに行ける範囲にも関わらずいろいろな方法がある「稲の自然乾燥」。こうやって1年を掛けて大事に育てられた新米を食べるのが楽しみです。

参考資料:令和2年産水陸稲の収穫量(農林水産省)

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「東日本大震災における津波で被災した月待塔の追跡調査について」で渡部潤一奨励賞受賞。