ザックザク食感のクッキークランチとチョコとバニラアイスの組み合わせで、九州で愛され続けている「ブラックモンブラン」。佐賀県小城市に本社を置く竹下製菓株式会社は、1894(明治27)年の創業から130年以上にわたり地域の人々に愛されてきた老舗(しにせ)菓子メーカーです。
2016年、創業家の五代目として経営を引き継いだのが、先代の娘の竹下 真由(たけした・まゆ)さん。大学・大学院で経営を学び、民間企業での実務を経て家業に戻った竹下さんは、世代交代とともに、経営理念の中の「楽しい」にフォーカスし、地方企業の変革に取り組んでいます。
経営の現場で、どのように理念を実践しているのか。現場で社員と向き合いながら経営を進める竹下さんに、会社の歩みと今後の展望を伺いました。

目次
経営を学び、地元へ戻る決意
竹下さんは佐賀県佐賀市出身。大学院では経営工学を選考し、修了後は大手コンサルティング会社に入社。主に消費財や食品業界を担当し、業務改善、新規事業の立ち上げ支援などを経験しました。
「経営戦略と現場の実行力をどう結びつけるか。理論と現実の間にある課題を実感しました」と竹下さん。現場を知らずに仕組みを設計しても、実効性を持たないものは意味がない。その経験が、後の経営判断を行うための基礎的な判断軸となりました。
数年後、帰郷を決め、竹下製菓に入社。入社当初は製造、営業、商品開発など複数の部署を経験し、会社全体の流れを理解することに努めました。
2016年、父・竹下敏昭さんの後を継ぎ、代表取締役社長に就任。地方の中小企業が抱える人材不足やデジタル化の遅れなどの課題に向き合いながら、既存の経営理念に基づき、新たな経営スタンスを明確にしました。
現場を理解し、「楽しい」を判断基準に
社長就任後、竹下さんが最初に取り組んだのは、組織の「共通の基準」をつくることでした。「指示や目標ではなく、社員が共感して動ける言葉を持ちたかった」と竹下さん。そこで打ち出したのが、「楽しいを基準にする」という判断です。
竹下さんにとって“楽しい”とは感情ではなく、“成果を共有できる”組織の状態を示す言葉です。「そういう職場なら人は自然と動きますし、仕事も前に進んでいくんです」
この理念を共有するために、社内会議や商品企画の場で「この取り組みは楽しいか」という問いを自分自身で繰り返しました。部署の垣根を越え、立場に関係なく意見を出せる文化づくりを進めています。
社員の提案から始まった新しいアイスの企画や、地域イベントへの出展など、小さな変化が社内の動きを活性化させています。
社員が誇れる会社を次世代へ
竹下さんが目指すのは、“自分の子どもを入れたいと思える会社”をつくることです。給与や待遇の改善にとどまらず、「人として成長できるか」「仕事に誇りを持てるか」という観点の会社づくりを心がけています。
「社員が誇りを持てる会社であれば、地域にも良い影響を与えられる」と竹下さんは話します。
働き方改革の一環として、休暇制度や勤務形態を柔軟にし、育児・介護を抱える社員でも働き続けられる環境づくりを進めています。また、採用活動では“会社の素顔”を伝えることを重視し、社員インタビューや社内風景を発信する取り組みも行っています。
そのほか、地域と連携した販売企画や、環境配慮型の製品開発にも積極的に取り組んでいます。
「伝統を守ることと、新しい挑戦をすることは矛盾しません。両方を並行して進めるのが私たちの役割です」と語ります。

地域から生まれる持続可能なモデルへ
竹下製菓が拠点を置く小城市は、人口4万人ほどの地方都市です。竹下さんは、都市部のように人材や情報が集まりにくい環境の中で、地域の中で会社を続けること自体が社会的意義であると考えています。
「地元で働ける場所を守ることが、企業の責任。社員が地域の中で生活しながら働く。その循環を維持することが、地方企業の役割です」
今後は、デジタル化による業務の効率化と、社員の成長支援を両立させながら、竹下製菓を地域に根ざしたモデルケースにしていきたいと考えています。
“楽しい”という言葉は、竹下さんにとって経営理念であると同時に、社会との約束でもあります。地方企業の現場から、持続可能な経営のかたちを模索する挑戦が続いています。
最も印象に残った言葉:
「楽しいというのは感情ではなく、組織の状態です。自分の意見を言えて、成果を共有できる状態こそが楽しいと思います」
会社概要
会社名:竹下製菓株式会社
取材対象者:代表取締役社長 竹下 真由(たけした まゆ)さん
経営理念:「我社はおいしい楽しい商品を作って社会に奉仕する」――人が自発的に動き、地域とともに成長する企業へ
設立年月:1956年
事業内容:冷菓・菓子の製造販売
所在地:佐賀県小城市小城町池上2500
URL:https://takeshita-seika.jp/






