2000年10月の設立以来、卵の殻の内側にある「卵殻膜(らんかくまく)」を主成分とした化粧品や健康食品の企画・開発・販売ならびにOEM(受託製造)の企画・開発・製造を行っている株式会社アルマード(以下、アルマード)。その成長を牽引(けんいん)してきたのが、野村證券での約30年のキャリアを経て52歳で実業界へ転身した代表取締役社長の保科史朗(ほしな・しろう)さんです。 実体を伴わない金融という世界から「実業」へ飛び込み、理論と実践の間で組織を変革し続ける保科さんの歩みと、アルマードの未来について伺いました。

代表取締役社長の保科史朗(ほしな・しろう)さん
目次
金融業界からの転身。現場で突きつけられた赤字の現実
保科さんは1985年に大学を卒業後、野村證券株式会社に入社し、約30年間勤務しました。富裕層への資金運用や企業のM&A助言に携わるなかで、「実業の世界で自分の理論が通用するのか試したい」という思いを募らせていきます。特に人事部時代に学んだ「ものを作らない会社の財産は人しかない」という教訓は、その後の経営観の基礎となりました。
転機が訪れたのは52歳のときです。当時、関係のあったアルマード創業者からの誘いを受け、2014年12月に経営企画部長としてアルマードに入社しました。当時、成長の第二の柱とすべくドラッグストアなど小売流通への進出を進めていましたが、配荷は進んでも商品は売れず、2016年には、商品が陳列棚から撤去される「棚落ち」を経験し、会社は赤字に転落します。この赤字転落を機に保科さんは営業本部長を兼任し、在庫の山と数字の現実に、当事者として向き合うことになりました。
外部資本の導入という決断。痛みを伴うモデルチェンジ
国内店舗販売の立て直しに奔走する一方、台湾進出など海外販路の開拓も試みましたが、爆発的な成長には至りませんでした。このままでは成長の限界がくると感じた当時のアルマード経営陣は、2017年末、大きな決断を下します。それはファンドの支援を受け入れ、経営体制を抜本的に刷新することでした。
これまでの主力事業であったテレビショッピング事業依存からの脱却をはかるべく、成長率の高いWeb通販事業へと舵(かじ)を切ります。2018年からスタートしたWeb通販は、卵殻膜という素材の独自性も追い風となり、立ち上げからわずか7年で売上高約70億円規模へと急成長を遂げました。
コロナ禍を好機に変えた「内製化」。1年で築いた成長事業の基盤
好調を維持するテレビショッピング事業に加え、Web通販事業とOEM(受託製造)事業が原動力となり、2020年には株式上場が見えていました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、上場は1年の延期を余儀なくされます。社員のモチベーション低下が懸念されるなか、保科さんはこの停滞期間を最大の好機と捉えました。それまで外部に委託していたWeb広告制作・運用の「内製化」に着手したのです。
優秀なデジタル人材の奮闘によって、わずか1年で内製化の体制を確立。これが現在の売上高約100億円を支える基盤となっています。そして2021年6月、同社は東証スタンダード市場にて念願の株式上場を果たしました。
「内製化による機動力の向上がなければ、今の成長はなかった」と保科さんは振り返ります。
江戸時代からの知恵を科学する。追随を許さない素材へのこだわり
アルマードの事業を支えているのは、古くから存在している素材「卵殻膜」です。400年以上前の中国の薬学書「本草綱目」にも効果が記され、日本でも江戸時代から傷薬として使われてきた生活の知恵でした。一方で、水にも油にも溶けず熱にも強い性質のため長らく製品化は困難とされてきました。
しかし、アルマードは2007年から東京大学などと連携し、産学一体となって卵殻膜の基礎研究への投資を継続。伝統的な素材に科学の力を掛け合わせ、新たな価値創出に挑み続けています。
20年以上にわたる研究データの蓄積が、他社の追随を許さない独自の強みとなっています。一時のブームではなく、確かなエビデンスに基づく商品開発が、信頼や継続購入につながっています。
多様な人材が混ざり合う。風通しを良くする組織の工夫
上場後、従業員数は約3倍の100名超に増加しました。保科さんが社長就任後に注力しているのは、野村證券時代に学んだ「人が財産」という原点に立ち返り、ライフスタイルの変化に柔軟に対応し、働きやすい環境を整えることです。現在は約7割がリモートワークを活用しており、地方在住者や子育て世代など、多様な優秀人材の確保につながっています。
リモート環境下でのコミュニケーション不足や、出社必須職種との不公平感といった課題に対し、チーム単位での交流や定期的な対面の機会を設けることで、多様な背景を持つ社員同士の「風通しの良さ」を維持しようと試みています。
「卵殻膜」と「人」の可能性を深掘りする。業界トップ10への道
保科さんは、今後の展望として「卵殻膜研究の深掘り」と「組織の進化」を掲げます。基礎研究にとどまらず、臨床試験を踏まえた研究に資金を投じ、より説得力のあるデータを世に示していく方針です。
また、急拡大した組織においては、人事制度や運営体制の整備が急務であるとし、人材が能力を最大限発揮できる仕組みづくりに意欲を燃やしています。
「最終的な夢は、業界トップ10入り」。金融の世界で企業の栄枯盛衰を見てきた保科さんは、「卵殻膜」と「人」という二つの財産を磨き上げ、実業の現場で確かな価値を証明し続けていきます。
最も印象に残った言葉: 「野村證券時代、ものを扱っていない会社だからこそ『財産は人しかない』と学びました。工場を持たない私たちアルマードも同じです。人が財産であり、その可能性を引き出すことが経営の役割だと考えています」
※写真はすべて株式会社アルマード提供
会社概要
会社名 株式会社アルマード
取材対象者 代表取締役社長 保科 史朗さん
経営理念 世界の人々の人生に健康と美しさをもたらす 卵殻膜とバイオテクノロジーで。
設立 2000年10月18日
事業内容 自社ブランド化粧品・サプリメントの企画・開発・販売ならびにOEM(受託製造)の企画・開発・製造
本社所在地 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-6-2 菱華ビルディング7F
URL https://www.almado.co.jp/






