ローカリティ!時代の開拓者たち

ローカリティ!時代の開拓者たち
ローカリティ!

「日本の良さが消えていく」全国を巡り抱いた危機感。プロ人材を地域へつなぐ起業家の想い 【東京都港区】

6 min
  • 東京都
  • 港区
  • プロフェッショナル人材マッチング
  • 日本を元気に

株式会社みらいワークスは、専門的な経験や知識を持ち、課題解決の即戦力となるフリーランスや起業家などのプロフェッショナル人材を、その力を必要とする企業の仕事へつなぐ「プロフェッショナル人材事業」を主軸に事業を展開しています。さらにその事業基盤を生かし、都市部のプロ人材を、副業や転職・移住の形で地域企業につなぐ地方創生事業をはじめ、地域企業やスポーツチームが抱える課題を大企業社員の学びの場にする実践型リスキリング事業、オープンイノベーション事業、大企業の社会課題解決プロジェクトを伴走支援するソーシャルデザイン事業へと事業の幅を広げてきました。

代表取締役社長 岡本祥治(おかもと・ながはる)さんが、みらいワークスを創業した原点のひとつには、日本全国を巡る中で感じた「日本の良さがどんどん消えていく」という危機感がありました。地域の良さを生かしながら日本の経済を発展させるにはどうすればいいのか。その問いから始まり、志や実力を持つ人が力を発揮できる仕組みを築いてきた岡本さんに、創業の原点と目指す未来を聞きました。

人の経験や能力を、必要としている場所につなぐ

みらいワークスの売上の約9割を占めるのが、プロフェッショナル人材のマッチング事業です。例えば企業が新しい事業を始めたい、業務を改善したいと考えても、社内にその分野の経験者がいるとは限りません。そこで、必要なスキルを持つフリーランスや起業家などのプロ人材を業務委託の即戦力としてマッチングします。

また、この仕組みは地方にも広がっています。都市部で働く人材を、副業人材として地方の中小企業や自治体につなぎ、課題解決に関わってもらったり、転職や移住につなげたりする地方創生事業も展開しています。

さらに、地方企業や自治体と関わる中で集まる課題を、都市部の企業に勤める社員の「実践の場」として活用するリスキリング事業も展開しています。デジタル分野などを学んでも、実際に力を試す機会が少ない企業の社員に、地域のリアルな課題に取り組んでもらう仕組みです。

一見すると異なる事業ですが、その根底にあるのは、人が持つ経験や能力を、それを必要としている場所で生かすという考え方です。

その原点をたどると、みらいワークスを立ち上げる前の岡本さんの経験に行き着きます。

日本中を旅して気づいた、「日本の良さが消えていく」という危機感

大学卒業後、外資系コンサルティング会社に入社した岡本さんは、その後、知人に誘われてベンチャー企業へ転職しました。

しかし、その会社が2006年のライブドア事件の影響を受け、経営が傾きます。転職活動を始めても、在籍している会社への評価がそのまま岡本さん自身への評価となり、採用に至らないことが続きました。自分の能力や経験は何も変わっていないのに、所属する会社によって個人の価値まで決められてしまう。この経験が、岡本さんの働き方に対する問題意識につながっていきます。

「学生時代から、会社員として出世することばかり考えていました。その道が突然絶たれてしまって、じゃあ自分はどうすればいいんだろう、と考える機会になりました」

岡本さんは、自分の原点を見つめなおします。その中で気づいたのが、「日本人なのに、日本のことを知らない」ということでした。日本を知り、自分の目で今の日本を見るために、47都道府県を巡りました。

「行けば行くほど、人も歴史も食も文化もいいところがいっぱいある。一方で、シャッター商店街が増えて、大きな商業施設のまわりだけが栄えている。同じような光景を日本全国で目の当たりにし、『日本の良さがどんどん消えていく』と感じました。日本の良さを生かしながら経済を発展させていく方法はないのかなと」

やがて自分のやりたいことは「日本を元気にすること」なのではないかと思い始めます。しかし、雇われる生き方しか考えてこなかった自分にとって、起業に踏み切る覚悟が定まらず、なかなか一歩を踏み出せませんでした。

ねぶた祭りで火がついた。「日本を元気にしたい」起業を決意

背中を押すきっかけとなったのは、青森ねぶた祭で目にした、祭りに1年を懸ける人たちの熱量でした。

「チームの大将が『この1年間、お前ら何のために生きてきたんだ?今日のためだよな』と言っていたんです。それを見て、何もやっていない自分はどうなんだろうと。『日本を元気にしたい』と思いながら挑戦できない自分が、恥ずかしくなってしまったんです」

翌日、デール・カーネギーの『道は開ける』を読み込み、これまで抱えてきた思いをあらためて考えた岡本さん。そして、「起業しよう」と心を決めます。その翌月末には法人登記を終えていたといいます。

ただ、この時点で決まっていたのは「日本を元気にしたい」という思いだけでした。何を事業にするのか、答えはまだありませんでした。

「志ある人が挑戦できない」その憤りから見つけた事業の形

会社員を辞め、自分の事業に専念し始めてから約3ヵ月後の2008年、リーマンショックが起こりました。仕事が世の中から一気に減る中、岡本さんはフリーランスのコンサルタントとしての仕事に集中し、少しずつ仕事の依頼が増えていきました。やがて1人だけでは受けきれない仕事を、仕事がなくて困っていたフリーランスの友人たちに紹介するようになりました。これが想像以上に喜ばれたといいます。

「コンサルタントとして大企業のプロジェクトを支援して、『ありがとうございます』と言われることはありました。でも、生活がかかっているフリーランスに案件を渡した時の感謝の熱量は、段違いでした。『こんなに感謝される仕事はやったことがない』と実感し、マッチングの事業化を考え始めたのです」

仕事を紹介したフリーランスたちに話を聞く中で岡本さんが気づいたのは、「ライフワーク(自己実現の仕事)」と「ライスワーク(生活や稼ぐための仕事)」の乖離でした。フリーランス仲間の多くは、「大企業で得た経験を中小企業やベンチャー企業の支援に生かしたい」、「地方創生に関わりたい」、「日本と世界とのつながりを作りたい」といった、「日本を元気にする」ための熱い志をもって独立していました。しかし現実は、ライフワークだけでは生活ができず、ライスワークに追われる日々を送っていたのです。

「『なんでこんなに志も高く、実力もある人たちが挑戦できないのか』と、すごく憤りを感じました」

そこで岡本さんの考え方が変わります。

「自分1人が活動するより、それぞれの経験や知識を持った100人が100通りのやり方で挑戦をしたら、100倍のスピードで日本が元気になる。だったら、その人たちが挑戦できる仕組みをつくる方に力を入れた方がいい」

こうしてプロ人材に仕事の機会をつくる事業が形になり、2012年みらいワークスを設立しました。

実現したい未来のために選んだ上場

岡本さんは当初、上場を考えていませんでした。ライブドア事件に巻き込まれた経験から、上場企業になることへの強い抵抗感があったからです。

しかし、大手企業との直接取引を進めようとすると、会社の信用力が足りず、別のコンサルティング会社を間に入れなければ契約できないことがありました。個人が正当な対価で仕事を得られる市場をつくりたいのに、自分たちまで多重下請けのような構造に加わらなければならない。その現実を突きつけられます。

「自分たちが財務基盤を強くして、日本中の会社と直接取引できるようにならないと、この構造は変えられない。やりたいことを実現するなら上場するしかない」

自分が上場したいかどうかではなく、実現したい社会に必要かどうか。岡本さんはその選択を貫き、2017年、みらいワークスは東京証券取引所マザーズ市場(現在の東証グロース市場)への上場を果たしました。

「日本を元気にしたい」を、組織の共通言語に

現在、みらいワークスが掲げるミッションは「日本のみらいの為に挑戦する人を増やす」。ビジョンは「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」です。根底には、岡本さんが抱き続けてきた「日本を元気にしたい」という思いがあります。

「挑戦したくてもできない。そんな人たちの挑戦を形にすることで、日本経済が元気になると気づいたこと。それが今のミッションにつながっています」

一方、ビジョンには、プロ人材が仲間や企業とつながりながら力を発揮できる環境をつくりたいという思いが込められています。

「どんなに優秀な人材であっても1人では実現できることに限界があると思うんです。挑戦する個人が仲間になることもそうですし、お客さんとも一緒にやっていく。そういう世界観をつくりたい」

それらの言葉は、採用から日々の仕事まで、会社の仕組みに組み込まれています。

「ミッションやビジョンに共感してくれる人を採用することを大切にしています。毎週月曜日の全社朝会でも、私はミッション、ビジョン、バリューに関連する話をします」

新卒社員へのバリュー研修は、一つ上の世代の社員が担当します。教える側に回ることで、自分自身も考えるようになるからです。さらに、週報や評価にも、会社のミッション・ビジョンを実現するための行動指針である「挑戦」「主体性」「チームワーク」「変化」「持続的な関係」という価値観を組み込んでいます。名刺にはビジョンを点字で刻んでいます。

岡本さんが約20年前に抱いた「日本を元気にしたい」という思いは、今では1人の経営者の思いではなく、組織の中で繰り返し語られ、社員の行動につなげられています。

100万人が動けば、日本が動き始める

現在、みらいワークスに登録するプロ人材は約10万人。岡本さんが次に掲げるのは、「100万人のプロ人材に挑戦の機会をつくる」という目標です。

「創業から14年で、登録者は約10万人まで来ました。次は100万人を目指しています。年収800万円以上を一つの目安にすると、国内のプロ人材は約550万人いると見ています。そのうち100万人、約2割が何かに挑戦し始めたら、日本そのものが動き始めると思うんです」

さらに近年は、企業や地域をつなぐネットワークを生かし、大企業の社会課題解決プロジェクトを伴走支援するソーシャルデザイン事業にも力を入れています。

「自分たちだけで社会に与えられるインパクトには限界があります。でも、社会課題を解決しようとしている企業を後ろから支援して、彼らと共に大きなインパクトを生み出せたら、もっと日本を良くしていけるはずです」

約20年前、地方を巡りながら考えた「日本の良さを生かしながら、経済を発展させる方法はないのか」という問い。その答えを、岡本さんは自分1人の力ではなく、志ある人や企業が持つ力を生かすことに見いだしました。

100人が100通りの方法で日本を動かす。そして、その100人を10万人、そして100万人へ。みらいワークスがつくろうとしているのは、一人ひとりが持つ力を社会のさまざまな場所で発揮できる未来です。

聞き手:丸山夏名美 執筆:天野崇子 猪股豪
写真はすべて株式会社みらいワークス提供

もっとも印象に残った言葉

(青森ねぶた祭を見た際)「チームの大将が『この1年間、お前ら何のために生きてきたんだ?今日のためだよな』と言っていたんです。それを見て、何もやっていない自分はどうなんだろうと。『日本を元気にしたい』と思いながら挑戦できない自分が、恥ずかしくなってしまったんです」

企業情報

会社名:株式会社みらいワークス
取材対象者:代表取締役社長 岡本祥治さん
設立年月:2012年3月
経営理念:「日本のみらいの為に挑戦する人を増やす」
ビジョン:「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」
事業内容:プロフェッショナル人材事業を主軸に、コンサルティング、実践型リスキリング、オープンイノベーション、地方創生、ソーシャルデザインなどを展開。
所在地:東京都港区虎ノ門4-1-13 Prime Terrace KAMIYACHO 2F
URL:https://mirai-works.co.jp/

猪股 豪

猪股 豪

宮城県加美町生まれ・在住。地方創生に興味を持ち政治の世界へ。国会議員秘書を経てまちづくりに取り組む。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です