ローカリティ!時代の開拓者たち

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「包むこころ」が153年の歩みを導いた。変化を先取りし新しい文化を追及する朝日印刷【富山県富山市】

3 min
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  • 医薬品・化粧品パッケージ
  • 朝日印刷株式会社

1872(明治5)年に小澤活版所として創業した朝日印刷株式会社は、医薬品・化粧品パッケージのトップメーカーとして153年の歴史を歩んできました。1900年頃より薬袋中心の印刷業を営み、戦後の復興、医薬品市場の成長、化粧品分野への進出、そして海外展開と、時代の変化を読みながら事業を進化させてきました。

代表取締役社長の朝日 重紀(あさひ・しげのり)さんは「包むこころ」をミッションの中心に据え、変化の激しい時代にあっても“選ばれ続ける存在”でありたいと語ります。これまでの長い歴史の中で培われた価値観、ミッションの再定義、今後の成長戦略、そして未来の朝日印刷グループが目指す姿について、朝日さんにお話を伺いました。


小澤活版所から始まった印刷の歴史

朝日印刷株式会社の原点は、1872年に創業された小澤活版所です。創業者の小澤重三郎は富山藩で新聞、県庁の関連書類、教科書など幅広い商業印刷を手掛けていました。しかし、1946年の富山大空襲で工場が全焼。ゼロからの再スタートとして設立されたのが、「朝日印刷紙器株式会社」でした。

「戦後の朝日印刷は“第二の創業”。あの復興の時期に一から立て直した先代の姿勢が、今の会社の基盤です」と、朝日さん。

その後、「くすりの富山」という立地環境を生かし、有力地場産業である家庭配置薬向け印刷包材の供給で地位を築き、富山の薬の歴史と歩みを共にしてきました。


時代の変化を読み、早く動く

1960年代、医薬品市場は薬事法制定と国民皆保険制度の導入によって急拡大しました。朝日印刷はこの動きを読み取り、医薬品パッケージングに集中する経営判断をします。

「市場がどこへ向かうのかをつかみ、早く動く。それが当社の強みです」

さらに1970年代後半、医薬品包装で培った技術を生かして化粧品パッケージ分野へ進出。品質管理や美しさへのこだわりが生かされ、現在の二本柱が確立されました。

「医薬品で磨いた品質管理のノウハウは化粧品にも通じます。二つを掛け合わせたときに、当社らしい価値が生まれました」

朝日さんは朝日印刷の歩みをそう振り返ります。

150周年で見つめ直した不変の価値

2022年、創業150周年を迎えた際には、新たな経営理念を掲げるとともに、朝日印刷グループの社会へ果たすべき信念を、ミッション・ビジョン・バリューとして定め明文化しました。時代を超えて代々受け継がれてきた企業精神を再確認することが目的でした。

そのうちのミッションは創業当初から受け継がれている「包むこころ」をもとにして作られています。


包むこころを大切にし、安心・安全と美を追求した商品・サービスを提供することで社会に貢献します。

「『包むこころ』というのは、お客様への『安心と安全』、そして『美を追求した心』を、パッケージングを通じて市場や社会に提供するという姿勢を表現しています。どちらも人に寄り添う心が流れているんです」と朝日さんは説明します。

このミッションは社員にも丁寧に語られています。社長が直接思いや背景を語る「ER(エンプロイー・リレーションズ)」などを通じて、理念を“腹落ちする形”で伝え続けています。

「包むこころ」は単なる言葉ではありません。150年にわたって受け継がれてきた朝日印刷の文化そのものであり、それを時代に合わせてどのように伝え続けるかが大切だと朝日さんは話します。

従業員の幸福と企業の成長は一致する

朝日印刷が大切にしてきたのは、朝日印刷グループの経営理念でもある「お客様本位を基本とし、企業の永続成長と従業員の幸福とが一致する」経営。創業時から受け継がれてきたこの価値観は、今後のさらなる成長戦略となる人的資本経営にもつながっています。

社長就任後、朝日さんはワークエンゲージメントの向上を掲げ、従業員の仕事への意欲などを数値化するサーベイ(調査)やキャリア支援にも力を入れてきました。仕事の細分化により見えづらくなった“つながり”を取り戻すことも重視しています。

一方で、製造業の採用は、人材不足や若年層の応募減少など、全国的にも大きな課題となっています。価値観が多様化する中で、朝日印刷は「共感でつながる採用」を重視し、仕事内容の理解や価値観の共有を深める取り組みを進めています。

「朝日印刷で働き続けてよかった、と思ってもらえる会社でありたい」と朝日さん。そうした“人を軸とした経営”こそが、朝日印刷の未来を形づけているのです。

変化を読み、先に動く企業であり続ける

朝日印刷は、次の成長に向けた新たな挑戦も進めています。包装機械メーカーと協働する「包装システム販売事業」は、資材と機械をセットで提案する新しい価値創造につながっています。また、マレーシアを中心とした海外展開も本格化し、医薬品・化粧品の両分野で現地に供給体制を整えています。

2026年度からスタートする新中期経営計画には中堅若手社員が参画し、10年後の姿を全社で議論しています。

「変化の時代において重要なのは、情報をつかみ、すぐに動けるスピード。包装の価値創出企業として日本と世界に新しい包装文化を発信していきたい。そして朝日印刷グループで働く世界中の誰もの子どもや孫の世代が『入社したい』と思うような会社を目指します」


朝日印刷は“文化をつくる企業”として創業200年へ歩みを進めています。

最も印象に残った言葉:
「変化の時代において重要なのは、情報をつかみ、すぐに動けるスピード。包装の価値創出企業として日本と世界に新しい包装文化を発信していきたい。そして朝日印刷グループで働く世界中の誰もの子どもや孫の世代が『入社したい』と思うような会社を目指します」

※写真はすべて朝日印刷株式会社提供

企業情報

会社名:朝日印刷株式会社
取材対象者:代表取締役社長 朝日 重紀さん
創業:1872(明治5)年
経営理念:
お客様本位を基本とし、企業の永続成長と従業員の幸福とが一致する経営を目指します。
ミッション:
包むこころを大切にし、安心・安全と美を追求した商品・サービスを提供することで社会に貢献します。
所在地:〒930-0061 富山県富山市一番町1番1号 一番町スクエアビル
URL:https://www.asahi-pp.co.jp/

天野崇子

天野崇子

副編集長/第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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