ローカリティ!時代の開拓者たち

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医療現場の困りごとを解決し、入院患者らを笑顔に。「笑顔」を世界に広げるヘルスケア企業【長野県松本市】

5 min
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入院したとき、必要なものが一式そろった「CS(ケア・サポート)セット」というものを目にしたことがあるのではないでしょうか。タオルや寝巻き、日用品などをまとめて利用できるこの仕組みは、患者や家族の負担を軽減するだけでなく、病院現場の課題解決にもつながっています。

このCSセットを軸に、医療・介護の現場で「心豊かな生活環境の実現」を目指してきたのが、株式会社エランです。寝具の訪問販売から事業をスタートし、社会の変化と向き合いながら事業を進化させてきた背景には、どのような思いがあったのでしょうか。

「私達は、お客様に満足していただける最高の商品とサービスを追求し、情熱を持った行動を通じて、心豊かな生活環境の実現に貢献します」

エランはこのような経営理念を掲げています。

株式会社エラン代表取締役社長CEO 峯崎友宏さん

その言葉は、「CSセット」というサービスの中に、具体的なかたちで息づいていました。株式会社エラン代表取締役社長CEOの峯崎友宏(みねざき・ともひろ)さんに、創業の原点から現在、そして実現したい未来までを伺いました。

始まりは寝具販売。「捨てられていく現実」に向き合った大きな転換

エランの歴史は寝具の訪問販売から始まりました。峯崎さんは、当時の役員から伝え聞いた創業時のエピソードをこう話します。

「もともとは、ふとんを売る仕事からのスタートでした。ただ、仕事をしていく中で、まだ使えるふとんが粗大ごみとして大量に捨てられている現実に直面したんです」

1995年当時、粗大ごみは社会問題になりつつありました。まだ使えるものが捨てられていくことへの違和感。そこからふとんを「売る」だけでなく、「打ち直して使い続ける」寝具リフォーム事業へ発想は広がっていったと言います。

「困っている人がいるのに、なぜそれが当たり前に解決されていないのか。その視点が、ずっと私たちの根底にあります」

この“違和感”こそが、のちの大きな事業転換につながる起点でした。

「入院患者や家族の困りごとを解決したい」CSセット誕生のきっかけ

CS(ケア・サポート)セットへの事業の転換点となったのは、とある病院の院長のご自宅を訪問したこと。

当初は自宅で使う寝具を提案していましたが、話題は次第に病院での環境へと移っていきました。院長からは、病院向けの寝具のレンタルについて相談を受けたものの、当時は設備投資や業界構造の問題もあり、現実的には難しい状況でした。

そのとき、院長から投げかけられたのが、次の一言でした。

「じゃあ、日用品はどうだろう?」

病院では、入院患者が使う寝巻きやタオル、歯ブラシなどの日用品を、患者や家族が持参するのが前提となっていました。急な入院の場合、準備が間に合わないことも多く、洗濯や不足した消耗品の買い出しに走ることも、決して珍しいことではありませんでした。

「入院している環境というのは、ご本人だけでなく、ご家族も不安でいっぱいなんです。どうしても、みんなの顔が暗くなってしまう」

寝具や日用品そのものは、特別なものではありません。けれど、それらがその場にそろっているかどうかだけで、入院初日の負担や不安は大きく変わります。

「自分たちができる形で、困りごとをまとめて解決できないか」

そうして生まれたのが、「寝巻き・タオル・消耗品を必要なときにまとめて使える仕組み」としてのCSセットでした。

峯崎さんが、現相談役であり当時の社長だった櫻井さんに誘われ会社に加わったのも、ちょうどこのタイミングでした。CSセットは、まさに“ゼロから立ち上げたサービス”で、峯崎さんは立ち上げの経緯を、現場で見続けてきた一人でもあります。

「困った顔を、笑顔に変えていきたい」

突然の入院や病気は、誰にとっても予測できない出来事です。不安や負担を、少しでも軽くすること。それがCSセットという商品の原点であり、エランの事業が“人の困りごと”を起点に進化してきた理由でもあります。

「誰かが損をすると、続かない」WIN-WIN-WINで笑顔の総量を増やす

CSセットが目指してきたのは、患者や家族の負担を減らすことだけではありません。
もうひとつ、根底にあるのが、エランの行動指針にもなっている「WIN-WIN-WIN」という考え方です。

「誰かが我慢したり、損をしたりする仕組みは、必ずどこかで無理が出ます。続けるためには、関わる人みんなが少しずつ楽になることが大事なんです」


患者や家族だけでなく、病院、そして現場で働く人たち。誰か一方だけが得をしたり損をしたりする形では、事業は続かないと峯崎さんは話します。

その考え方が、現場で実感として語られた象徴的なエピソードがあります。
CSセットを導入した病院で、看護師からこんな声が寄せられたといいます。

「ちゃんと休憩が取れるようになった」

CSセットによって、寝巻きやタオルの洗濯、消耗品の買い出しといった業務が減り、看護師は本来のケアに集中できるようになりました。その変化は、結果として患者や家族への関わり方にも余裕を生み、病院全体の空気を少しずつ変えていきました。

「私たちはよく『笑顔の総量を増やす』と言うんですが、それは理念というより、現場で実感してきたことなんです」

患者の不安を減らすこと、現場の負担を軽くすること、病院運営が無理なく続くこと。
すべてが重なったとき、はじめて“続く仕組み”になる。峯崎さんは、これまで積み重ねてきた取り組みを振り返ります。

高齢化社会の中で見えてきた「高齢者一人暮らしの困りごと」

現在、高齢化が進む中で、社会構造そのものが大きく変わりつつあります。

地方では、病院や公共交通などのインフラが縮小し、そもそも「通院すること自体が難しい」高齢者が増えています。

一方で都市部は、医療機関も情報も豊富にあるように見えますが、実際には独居高齢者が多く、周囲とのつながりを持てないまま孤立してしまうケースも少なくありません。スマートフォンやインターネットを前提とした社会の中で、それらを使わない、あるいは使えない世代の人たちは、制度や支援があっても、その存在自体を知らないまま生活していることがあります。

地方と都市部で形は違っても、結果として「困っていても声が届かない」状況が生まれている点は共通しています。

エランが見ているのは、そうした高齢者一人ひとりの暮らしの現場です。
「入院時の支援だけではなく、生活の場がどこにあっても、必要な情報やサポートにつながれる状態をどうつくるか」
その問いが、在宅を含めた暮らしの現場へと広がる、エランの次の取り組みにつながっています。

コロナ禍で浮き彫りになった「伝えること」の難しさ

事業が拡大する一方で、エランは新たな課題にも直面しました。

それまでは営業活動や現場で一緒に動きながら、仕事の進め方や考え方を自然と伝えていましたが、コロナ禍を機に、直接会って伝えてきた仕事の意味や価値観を、同じように共有することが難しくなったのです。

特にエランの仕事は、マニュアルだけで完結するものではありません。患者や家族、医療現場に向き合う姿勢や判断の背景には、言葉にしきれない価値観や考え方があります。それが共有されないままでは、ズレが生まれてしまう危機感がありました。

そこで立ち上げた教育プロジェクトでは、新入社員研修やメンター制度、階層ごとの学びの場など、成長の段階に応じた仕組みを用意しました。

また、日々の仕事の中でも、先輩社員が声をかけ合い、自発的に勉強会やロールプレイを行う文化が根づいています。誰かにやらされるのではなく、「必要だからやる」という空気が、現場の学びを支えています。

エランでは、朝礼の進め方にも特徴があります。「偉い人が前に立って話す、という形にはしたくなかったんです」と峯崎さんが話すように、社員が交代で話をする形をとっています。また、毎朝、経営理念と指針を全員で唱和しています。「ちょっと古臭いかもしれないですけど」と前置きしながらも、峯崎さんはその時間をとても大切にしています。

距離が生まれても、エランが大切にしてきた価値観をどう受け渡していくのか。コロナ禍は、その問いを会社全体に突きつける出来事でもありました。 「伝え続ける」ことをあきらめず、言葉と場の両方で工夫を重ねていく。その姿勢は、いまもエランの組織づくりの土台になっています。

言葉が通じなくても大切なのは気持ち。世界の困りごとを笑顔に変えていく

エランが描く未来像は、明確です。

「入院セットといえばエラン、と言っていただけるようになってきましたが、ヘルスケアといえばエラン。そう言ってもらえる存在になりたいと思っています」

今後は国内だけでなく、海外展開も視野に入れています。医療インフラが発展途上にある地域ではかつての日本と同じように、入院や療養をめぐる新たな困りごとが生まれ始めています。CSセットに限らず、日本で培ってきたヘルスケアに関する商品やサービスを、国の状況に合わせて展開していきたいと考えています。

言語や制度の違いはあっても、「困っている人に寄り添う」という姿勢は変わらない。峯崎さんは、そう考えています。

「言葉の壁よりも大切なのは、気持ちです。誰かの困りごとを、笑顔に変えていく。国が違っても通じると思っています」

寝具販売から始まり、CSセットを通じて医療現場の困りごとに向き合ってきたエラン。
その歩みはこれから、領域を広げながらも、“人のぬくもり”を軸に、国内外へと続いていきます。

もっとも印象に残った言葉:
「誰かが我慢したり、損をしたりする仕組みは、必ずどこかで無理が出ます。続けるためには、関わる人みんなが少しずつ楽になることが大事なんです」
「言葉の壁よりも大切なのは、気持ちです。誰かの困りごとを、笑顔に変えていく。国が違っても通じると思っています」

企業情報

会社名:株式会社エラン
取材対象者:代表取締役社長CEO 峯崎友宏さん
設立年月:1995年2月6日
経営理念:
私達は、お客様に満足していただける最高の商品とサービスを追求し、情熱を持った行動を通じて、心豊かな生活環境の実現に貢献します。

事業内容:
【医療介護関連事業】
●手ぶらで入退院ができる日用品レンタルサービス「CSセット」
∟入院・介護費用保証「CSセットR」
∟トラブル保証「CSセットLC入院保証」
∟癒しと上質感を実現したオリジナル患者衣ブランド「lifte」
∟入院・入所中の洋服レンタル「スマイルウェア」
●介護用品の通販サイト「エランオンラインショップ」所在地:長野県松本市出川町15-12
URL:https://www.kkelan.com/

天野崇子

天野崇子

副編集長/第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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