ローカリティ!時代の開拓者たち

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現場の誇りを次代へつなぐ。インフラ企業の持続成長を支える”もう一つの事業基盤【東京都豊島区】

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1922年の創業から、100年以上にわたり送電線工事や設備工事を手がけ、東証スタンダード市場に上場してきた株式会社ETSホールディングが、2024年10月に持株会社体制へ移行し、新規設立され上場を引き継いだのが株式会社ETSグループ(以下、ETSグループ)です。代表取締役社長・上江洲剛(うえず・たけし)さんは、2025年1月に就任し、持株会社として会社の変革を牽引(けんいん)してきました。電力という社会インフラを守り続けるため、あえて「不動産」という異質な事業を育て、現場の職人技を「仕組み」へと昇華させようとする挑戦の全貌(ぜんぼう)を追います。

ETS代表取締役社長・上江洲剛(うえず・たけし)さん

感謝される原体験と不動産管理の仕事

上江洲さんがキャリアの原点として語るのは、地元の不動産会社を営んでいた父親の背中です。中高生の頃にはすでに、夜中に水漏れの連絡が入ればすぐに駆けつけ、地域の人々から直接「ありがとう」と感謝される父の姿に、尊敬と憧れを感じていたと語ります。 

その思いを胸に2004年、ETSグループの親会社であるアムスインターナショナル株式会社に入社し、建物の維持管理や賃貸管理の現場に身を投じました。 

「オーナーの大切な資産価値を向上させ、入居するお客さまに快適な暮らしを提供するという視点を、この時期に現場で培った」と、上江洲さんは振り返ります。

現場と経営の間にある論理の溝

キャリアを重ね、役員として経営判断に関わるようになると、上江洲さんはある強烈なジレンマに直面します。 それは「現場の論理」と「経営の論理」は必ずしも一致しないという現実です。 「いくら経営側が『こうしなさい』と言っても、現場が納得して動かなければ意味がない」と上江洲さんは語ります。 

経営方針を現場の言葉に翻訳し、どのように腹落ちさせるかという点に腐心し続けました。 この経験が、現在のETSグループにおける組織づくりの根底にある「現場への敬意」につながっています。

政策に左右されない第2の柱を育てる

2024年10月、同社は持株会社体制へと移行しました。 その最大の狙いは、主力である電力事業に次ぐ「第2の柱」として不動産関連事業を確立することにあります。 現在の売上構成は、送電線工事や設備工事を行う電気工事事業が全体の約85パーセントを占めていますが、この事業は国のエネルギー政策や景気動向といった外部要因の影響を強く受けやすい側面があります。 

上江洲さんは、インフラ事業の変動リスクを、時間軸の異なる不動産事業で補完することで、企業としての盤石な足場を固めようとしています。 これは単なる多角化ではなく、社会インフラを守る企業として永続するための、論理的な生存戦略なのです。

建設業界が直面する属人化という壁

上江洲さんが特に危機感を抱いているのが、建設業界全体を覆う深刻な人手不足と、専門性の高さゆえに生じる「属人化」という壁です。 

送電鉄塔の建設や保守といった現場では、「この仕事はこの人しかできない」という状況が生まれやすく、特定の個人に負荷が集中してしまう傾向があります。 また、若年入職者が減少するなかで、 熟練の技術者が引退すれば、その技術やノウハウが失われてしまいかねないという現状も。

この課題に対し、上江洲さんが推進しているのが業務の「標準化」と「仕組み化」です。 個人の経験や勘に頼っていた業務プロセスを可視化し、組織全体で共有できる形式知へと変換することで、誰が担当しても一定の品質を担保できる体制を目指しています。

「10年前の当たり前は、今では非常識」。そう話す上江洲さんは、時代に合わせて仕事のやり方は柔軟に変えていくべきだと語ります。 それは、社員が技術を次の世代へと受け渡していくための成長基盤を作る思想なのです。

社会インフラを支える使命と未来への視座

変革を続けるなかでも、上江洲さんが絶対に変えてはいけないと語るものがあります。 それは、インフラを支える者としての誇りを込めた「この街に明かりを灯すのは私たち」という企業理念です。

上江洲さんによると、送電線工事に携わる社員には使命感が強い方が多く、“自分たちが日本のインフラを支えている”という自負を持って、高さ数10メートルの鉄塔の上で作業にあたっているということです。 

100年の歴史を持つ技術と誇りを、現代的な経営の仕組みで守り抜くこと。 それが、次の100年もこの社会に明かりを灯し続けるための、ETSグループの挑戦です。

※写真はすべて株式会社ETSグループ提供

最も印象に残った言葉:「仕事のやり方は時代に合わせて変えていくべきですが、社会インフラを守るという『存在意義』は変えてはいけないのです」

会社概要

社名: 株式会社ETSグループ(イーティーエスグループ)
代表者: 代表取締役社長 上江洲 剛(うえず たけし)
理念: 「この街に明かりを灯すのは私たち ~100年の伝統から100年の未来へ~」
設立: 2024年10月(創業1922年2月)
事業内容: 電力事業、設備・再生可能エネルギー事業、建物管理事業等の経営管理
住所: 東京都豊島区南池袋1-10-13 荒井ビル
URL: https://ets-group.co.jp/

木場晏門

木場晏門

神奈川県鎌倉市生まれ藤沢市育ち、香川県三豊市在住。コロナ禍に2年間アドレスホッピングした後、四国瀬戸内へ移住。webマーケティングを本業とする傍らで、トレーニングジムのオープン準備中。

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