ローカリティ!時代の開拓者たち

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紙とFAXの時代に始まった「企業がデータで動く時代」への挑戦。社会実装を成し遂げ、今もアップデートし続けるインフォマート【東京都港区】

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紙とFAXが当たり前だった1998年、株式会社インフォマートは創業者の「世の中の役に立つ仕事をしたい」という思いから生まれました。企業間で交わされる受発注や請求書、見積もりといった日々のやりとりを「紙ではなくデータで直接つなぐ」。当時は理解されにくかったその構想に挑み続け、いまや120万社以上が利用する社会インフラへと成長しました。

そして2026年1月、その先見的な思想を受け継ぎながら会社の未来の舵(かじ)を取る存在として、木村 慎(きむら・しん)さんが代表取締役社長に就任しました。木村さんは「企業がデータで動く時代」をさらに前へ進めるため、業界拡大や組織のアップデートに力を注いでいます。その思想をどのように育て、未来へ紡いでいくのか。インフォマートの歩みとこれからの挑戦を、木村さんの言葉とともにひも解いていきます。

創業者が見た「企業がデータで動く時代」


インフォマートの挑戦は、紙とFAXが当たり前だった1998年に始まりました。創業者の村上勝照(むらかみ・かつてる)さんは「前人未踏の領域で、世の中の役に立ち、喜んでもらえる仕事がしたい」という強い思いから、インターネットによって企業と企業を直接つなぐ未来を構想しました。

当時、企業間の受発注や請求書のやり取りは紙が中心で、データでつなぐという発想自体が珍しく、理解されにくいものでした。しかし村上さんは、インターネットが本格的に広がる前の時代に「企業同士がデータでつながる仕組み」を描き、それを実現するためにサービスづくりを始めます。

木村さんは、創業者の村上さんが残した思想についてこう語ります。

「クラウドやSaaS(ネット経由でソフトウェアをサービスとして利用する形態)という言葉すらない時代に、『企業をデータでつなぐ』未来を考えていた。本当に先を見ていたと思います」

そして、当時の同社が形にしたのが、送り手と受け手が同じツールを使うことで注文内容を書き直さずに扱える受発注のデジタル化。当時としては非常に革新的で、のちの企業間の商取引をデジタル化し、業務効率化やコスト削減を実現するクラウドサービス「BtoBプラットフォーム」の原型となっています。

25年以上が経った今、その構想は100万社以上に使われる社会インフラとなり、創業者の描いた未来は、確かな形として受け継がれています。

フード業界が選ばれた理由

村上さんが企業間の帳票類のやりとりの分野で最初に着手したのは、フード業界の受発注のデジタル化でした。紙でのやりとりが当然だったフード業界を変える大きな挑戦だったのです。

当時の状況について、木村さんはこう振り返ります。 「受発注をデータでつなぐことは業務の効率化やコスト削減などにつながり、フード業界の“未来を作る”という意味でもすごく大事だったんです」

インフォマートは、フード業界に特化し、現場で本当に必要な機能を理解しながら仕組みを整えていく“バーティカル戦略”を選びました。この選択が、後の事業展開すべてを支える礎になっていきます。

標準化×デジタル化という発想が生んだ“業界の未来”

まず取り組んだのは複雑な受発注の“共通仕様づくり”でした。

野菜・肉・調味料・備品など、多種多様な取引が毎日動く世界で、紙やFAXが当たり前だった時代。さらに企業ごとに書式もバラバラだったため、手間や無駄が積み重なり、業界全体が非効率なまま取り残されていました。

同社はここに、変革の核心を見いだし、あらゆるフード業界の企業が使える統一フォーマットを作りました。導入時の手間は大きくても、一度定着すれば、保管コストも、管理工数も、人的ミスのリスクもまとめて減っていく。業界全体の土台が軽くなるのです。

さらに、この発想はフードを越えて建設領域へ、そして新たな領域へと広がり始めています。インフォマートは、業界の垣根を越え、“複数産業をデータでつなぐプラットフォーム”へと進化しようとしているのです。

「なぜなぜ5回」は、今のインフォマートを動かす“問いのエンジン”

インフォマートの文化を語るうえで欠かせない言葉が、「なぜなぜ5回」です。これは創業者の村上さんが残した行動指針ですが、今、その考え方を最も強く体現しようとしているのは現社長の木村さんです。

木村さんは、この指針をこう解釈しています。

「どんな改善も、どんな業務理解も、全部『なぜ?』を深掘りするところから始まる。『なぜこの業務が必要なのか』『なぜ現場が困っているのか』など課題の根っこを掘り下げる。企業間取引の標準化を語るには、業界のことを深く理解していないといけない。だから『なぜ?』を問い続ける文化は本当に重要なんです」

創業者が残した「問い続ける姿勢」は、木村さんによって現代の事業に接続され、 業界をまたいだ展開にも応用される“今のインフォマートのエンジン”として動き続けています。

全員で“未来を握る”組織へ

創業以来、インフォマートは仕組みをつくり変えながら成長してきました。しかし、木村さんは「これから10年の変化は、過去の延長だけでは起こせない」と語ります。

「経営層だけで未来を決める時代ではないんです。どの役割の人も“同じ情報量を持ち、同じ未来を見て動ける組織”を作らなければ、本当の変化は生まれません」

コロナ禍でリモートワークが広がったことで、偶然の学びや社内のつながりが薄くなりました。木村さんは、そこであえてリアルな接点を増やす取り組みを進めています。

現場理解を深めるための訪問機会、エンジニア同士がオフラインで集まる専用オフィス、営業発信で全国各地に顧客と共創する場をつくる取り組みなど、情報を開き、対話を増やし、“同じ未来を握る”ための基盤づくりを続けています。

さらに、社内では0→1(ゼロイチ)を生み出す人材を育てるため、「新しい業界を立ち上げる挑戦」を常に走らせる文化を始動。社員一人ひとりが“未来のインフォマートをつくる側”として動ける組織を目指しています。

“AIでも読めない変化”を、自ら生み出す未来へ

木村さんが語る未来は、単なる事業拡大ではありません。インフォマートが目指すのは、「想定できる未来」ではなく、“AIでも読めない変化”を自ら起こす企業になることです。

「SaaSは積み上げ型のビジネスなので、安定成長はできるんです。でも、それだけでは社会の変化のスピードに追いつけなくなる。だからこそ、私たち自身が“予測できない変化”を意識して起こさなければ意味がないんです」

そのために木村さんが重視するのは、挑戦し続ける文化です。

「過去の延長ではイノベーションは起きません。失敗しても挑戦した人が評価される文化をつくることが、未来をひらく力になるんです」

新規領域の開拓、業界を超えた標準化、企業間の連携強化。インフォマートが次に描くのは、業界の“外側”に広がる新しい社会基盤づくりです。

そして木村さんは、これからの10年をこう語ります。

「私たちは、企業のデジタル化を“便利にする”だけで終わらせたくない。 企業の動きそのものを変えることで、日本の未来にインパクトを残したいんです」

創業者・村上さんが思い描いた「企業がデータで動く社会」。あの時に描かれた未来を、さらにその先へ――。インフォマートは今、次の大きな変化を生み出すフェーズに入っています。

最も印象に残った言葉:
「過去の延長ではイノベーションは起きません。失敗しても挑戦した人が評価される文化をつくることが、未来をひらく力になるんです」

企業情報

会社名:株式会社インフォマート
取材対象者:代表取締役社長 木村 慎さん
設立年月日:1998(平成10)年2月13日
経営理念:
世の中の役に立ち、世の中に必要とされ、
世の中に喜んでいただける事業を通じ、
お客さまと共に会社も個人も成長し続け、
社会に貢献していきます。
事業内容:BtoB(企業間電子商取引)プラットフォームの運営
所在地:東京都港区海岸1-2-3 汐留芝離宮ビルディング13階
URL:https://corp.infomart.co.jp/

天野崇子

天野崇子

副編集長/第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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