アーティストが壁に絵を描く壁画事業やア-ト雑貨通販サイトの運営などアート事業を中心に幅広い事業を展開する東京の株式会社NOMAL(ノーマル)。若手芸人のお笑いライブの開催、プロ野球独立リーグの球団オーナーなども行うなど「小さな挑戦を、当たり前にできる社会」を実現するべく、狭き門にチャレンジする人の背中を押す事業を創り続けています。
今回は「アート・アーティストを身近に」という思いでアートビジネス領域に参入し、アートが持つパワーを届けたいと奮闘する取締役COO平山 美聡(ひらやま みさと)さんに話をお伺いしました。
目次
ライフスタイルにアートがある環境に感激。日本でもアートを当たり前にしたい
株式会社NOMALは2015年に代表取締役CEOの松本 祥太郎(まつもと しょうたろう)さんが創業しました。松本さんと大学時代からの友人である平山さんは16年にジョインし、アートビジネスのサービスをゼロから立ち上げました。
幼少期から絵を描くことが好きで、社会人になってからもアート活動が趣味だという平山さん。米サンフランシスコを旅行した時に、どこにでもアート作品が売っていたり、美術館がカジュアルに楽しめたりするなど、アートが身近にある世界を体感したそう。「日本でもライフスタイルの中にアートを」という思いで事業展開をスタートさせました。
「ファーストアート」を後押しし、アートに興味がない人にもリーチさせたい。アートはなくてはならない存在
NOMALが取り組むアートビジネスは二つあります。
参画した16年に、アート雑貨の通販サイト「WASABI(ワサビ)」を開設。日本ではまだまだアートは買うものではないという固定観念がありますが、「そこを取っ払ってファーストアートを後押ししたい」というコンセプトの通販サイトです。
また18年からは「NOMAL ART COMPANY」をスタート。オフィスや公共施設の壁画にアートを展開する事業です。壁画としてアートが存在することで、アート自体が視野に入っていない人にもリーチすることできると考えています。
「アートがまだ身近ではない人にとってはアートがあってもなくても何も変わらないと思えるかもしれませんが、一度アートを飾ると、もうアートがない生活は考えられなくなります」と平山さん。アートを“なくてはならない存在にしたい”と考えています。
アーティストは怖くない。制作過程をみることで身近な存在に
「壁画のいいところは制作過程がオープンになっているところ」と平山さんはいいます。
「どうしてもアーティスト、芸術家ってビジネスパーソンと遠いところにいる存在と思われがち。怖いんじゃないかとか、変わっているんじゃないかというイメージを持たれる方も多く、食わず嫌いしてしまうケースもあるのですが……共通しているところもあるし、身近な存在なんだって思ってもらえたら」
アートが出来上がる過程を目の当たりにすることで、アート作品だけでなく、アーティスト自身を好きになるきっかけになるのです。
アートの可能性。まちと人の暮らしにポジティブな影響を
壁画アートは、オフィス内ではとどまらず、まちづくりの分野でも注目を浴びています。23年には京王電鉄とともにショッピングモール「ミカン下北」で数カ月毎にアートが変わる壁面の運用をスタート。道行く人々の目を楽しませながら、アートの制作場面を目の当たりにする機会となっています。同時にアーティストにとっても自分の作品を多くの人に見てもらえる絶好のチャンスの場でもあります。
平山さんは、「アーティストが自由に描きたいものをアウトプットしている姿を見ることで、周りの目を気にしている自分がバカバカしく思えてきて、『自分が思った通りにやってみよう』とポジティブに思えることがある。見る人の心の縛りを解く力があるのです」と熱く語ります。
そんなアートの力で、町や人々の暮らしによい影響が生まれる場面をこれからも展開していきます。
聞き手:丸山夏名美、 執筆:田口有香