光学分野の「単結晶」を育てる高度な技術を核に、半導体や医療分野向けの光学部品やレーザー光源を製造している株式会社オキサイド。創業者の後を継ぎ、財務のプロとして組織の「環境整備」に挑むのが、代表取締役社長の山本 正幸(やまもと・まさゆき)さんです。山本さんのこれまでの歩みや、激動の時代にあっても揺るがない、持続可能な企業のあり方について伺いました。

代表取締役社長の山本 正幸(やまもと・まさゆき)さん
目次
前職で目の当たりにした経営再建の落とし穴
バブル期の金融機関で9年間働いたあと、2000年から企業再生ビジネスに身を投じた山本さん。5〜6社の経営再建に関わります。
その中で、企業の経営が安定してくると、途端に組織の規律が緩み、各々が勝手な振る舞いを始める光景を何度も見てきたといいます。
「会社としての理念や社会的な存在意義が薄いから、危機が去るとバラバラになる。単に数字を整えるだけでは、真の強い組織は作れないのだと気づきました」
山本さんは企業再生の現場を離れ、確固たる理念を持つ場所で自身の力を生かそうと決意します。
火中の栗を拾う。CFOとして挑んだリーマンショックと買収
40社もの面接を経て、山本さんが選んだのが株式会社オキサイドでした。当時の社員数は約30名。上場準備(IPO)を見据えたCFO(最高財務責任者)として、2007年頃に入社しました。
しかし、入社直後から試練が訪れます。社内管理体制の整備に追われる中、2008年にリーマンショックが起きました。2期連続の大赤字に陥り、会社の存続すら危ぶまれる状況となりました。
転機となったのは2010年です。大手電機メーカーから半導体向けレーザー事業を買収に挑戦しました。素材(結晶)という「川上」の事業から、製品に近い「川下」へと事業領域を拡大。この攻めの投資が成長のエンジンとなり、2021年の東証マザーズ(現グロース市場)上場へとつながっていきました。
あえて嵐の船出。逆境を引き受ける「スーパーポジティブ」
2024年5月、山本さんは創業者からバトンを受け取り、社長に就任しました。しかしその新体制の幕開けは、決して順風満帆ではありませんでした。主力の半導体事業での品質問題に加え、買収したイスラエル子会社の政情不安による業績悪化と減損処理。大幅な赤字が見込まれる中での就任だったからです。
それでも山本さんは「悪い時期に社長になれば、あとは良くなることしかない」と前向きに受け止めます。創業者は次世代の成長を期待する分野に専念し、自身は財務の知見を生かして危機対応と、投資家への説明に集中する。この役割分担こそが、会社を次のステージへ進める最善策であると確信していたからです。

恒産あって恒心あり。技術を守るための「稼ぐ仕組み」
現在、オキサイドが目指すのは、量子分野やパワー半導体といった次世代技術の確立です。しかし、最先端の技術を維持し、優秀な人材を確保するためには、多額の資本が必要です。
山本さんは、中国の思想家・孟子の言葉「恒産(こうさん)あって恒心(こうしん)あり(安定した財産があって初めて、安定した道徳心が保てる)」を引用し、財務基盤の重要性を説きます。
「技術があるだけでは社会課題は解決できません。技術をマネタイズし、適正な収益を上げて再投資する財務プロセスが不可欠です」。素晴らしい技術があっても、資金が回らなければパーパスも維持できない。かつて企業再生の現場で見た光景を繰り返さないために、山本さんは「真の強い組織づくり」に全力を注いでいます。
明治神宮の森のように。100年先を見据えた「環境整備」
山本さんが描く未来のビジョンは、「明治神宮の森」のような組織です。明治神宮の森は、100年後の完成形を見据えて人工的に植林され、現在では多様な生物が共生する独自のエコシステムを形成しています。
「若い人たちが『この会社でこれができるから入った』と思えるような環境を整備すること。それが私の役割です」
創業100年を迎える頃、オキサイドが社会にとって不可欠な存在となり、自律的に成長し続けるエコシステムとなっていること。そのための土壌を整えるため、山本さんは今日も、財務と組織の両面から種を蒔き続けています。
最も印象に残った言葉:恒産あって恒心あり
会社概要
会社名:株式会社オキサイド
取材対象者:代表取締役社長 山本 正幸さん
経営理念:豊かな未来を光の技術で実現する
設立:2000年10月
事業内容:光学関連製品(単結晶、光部品、レーザ光源、光計測装置など)の開発・製造・販売
本社所在地:山梨県北杜市武川町牧原1747番地1
URL:https://www.opt-oxide.com/






