
宇宙、医療、社会インフラ。私たちの暮らしの裏側では、私たちが計り知れない領域で技術が静かに働いています。
株式会社セックは、1970年にシステム工学を学んでいた大学院生3人によって設立された、学生ベンチャーの先駆けでした。社会の生命線となる社会基盤システムや宇宙先端システム、モバイルネットワーク、インターネットといった暮らしの根幹を支える4つのビジネスフィールドで、即時応答が絶対条件の「リアルタイム技術」という独自の高度な専門領域を磨き続けてきました。
現在、その舵を取るのが、代表取締役社長の櫻井伸太郎さんです。
櫻井さんが経営判断のよりどころとしてきたのは、「社会の安全と発展のために」という創業理念です。技術的にできるかどうかではなく、社会にどんな影響を与えるのか。その問いを引き受け続けてきた姿勢こそ、セックの現在、また未来を形作るものとなっています。
目次
設立当初から唯一無二の存在・他社の追随を許さない専門領域への挑戦

株式会社セックは、1970年、大学の研究室から生まれました。コンピューターが巨大で高価だった時代に、同社は要求に対して定められた時間内に処理を完了させる「リアルタイムシステム」という領域に照準を定めます。時代に先駆けて設立したベンチャー企業による、まさに唯一無二で他社の追随を許さない専門領域への挑戦でした。
櫻井さんは「設立当初からの姿勢である、誰もやらないこと、簡単にはまねできないことをやる。その積み重ねが、結果として会社を支えてきました」と話します。
「社会の安全と発展のために」の理念を経営判断に

櫻井さんが社長に就任したのは2019年。1980年代から技術者としてセックとともに歩んできた櫻井さん本人にとって、当初から強く意識していたポジションではありませんでした。「気づいたら、その立場に立っていた感覚に近い」と振り返ります。
ただし、引き継いだものは明確でした。歴代の経営者から繰り返し示されてきた「社会の安全と発展のために」という理念です。
「この判断は理念に照らしてどうなのか」を問い続ける櫻井さん。経営判断を迫られる場面では、必ず「社会の安全と発展のために」に立ち返り判断を下します。
8割の想定外を前提に設計する。解決を実現するのは支え合う文化あってこそ
セックが向き合ってきた技術領域は、やり直しがきかない世界です。宇宙機器、社会インフラ、決済基盤。現場で失敗が許されないからこそ、設計と検証に時間をかける。櫻井さんは「リアルタイム技術の世界では、想定外が8割を占める」と語ります。 社長就任前までは、現場の責任者を務めていた櫻井さんですが、トラブル対応の場面では、櫻井さん自らが現場に出ることも少なくありませんでした。
今では考えられませんが、櫻井さんが最前線で働いていたころは、昼夜逆転が当たり前だったと振り返ります。「現場で苦しんでいるエンジニアは放っておけない」と、問題のただ中に入り、状況を一緒に引き受けることもいといません。その姿は現場で働く人々を勇気づけてきました。
システムとって想定外の状況が起きることは設計の前提であり、そういった状況下でも動き続けるソフトウェアを提供することがプロの責務、それこそがセックのスタイルです。最優先されるのは顧客課題の解決そのものであり、櫻井さんがこれまで示してきた、上下関係に関わらず支えあう姿勢や、現場で働く人たちへのリスペクトは、顧客課題の解決を実現するための社内共通の文化となっています。
何をつくるか、つくらないか
近年、防衛産業の分野からの引き合いが増え、防衛関連システムの技術提供の可能性が広がる中で、櫻井さんは技術の力に対して明確な線を引いています。
「たとえ防衛目的であっても、結果として人の命を奪うことに直結しうる技術開発には関わらない」
それは感情的な拒否ではなく、経営理念を軸に導き出した判断です。
「技術的にできるかどうかではない。社会にどんな影響を与えるのかを考えたとき、創業理念に立ち返れば答えは一つでした」と櫻井さんは話します。
何を作るかを決めるのはもちろん、何を作らないかを決める。その姿勢は、他の経営判断にも一貫して表れています。
一方で、社会の安全に資する分野には積極的です。高速道路の管制、決済インフラ、宇宙ごみの検知と除去など、止まった瞬間に社会が困る領域を支えてきました。
「派手さはなくても、なくてはならないもの」。セックは、そうした価値ある技術を生み出し続けています。
時間のかかる未来を選ぶという判断

櫻井さんが今後、力を入れていくと語るのが、量子コンピューター、エッジコンピューティング、宇宙ロボット、医療分野です。いずれも、すぐに社会の安全と発展につながるとは限りません。それでも「今できないものに挑むのが、自分たちの役割だと思っています」と話します。
医療分野では診断支援技術に取り組み、一次産業では安全確保や負担軽減につながる技術の可能性を探っています。野生動物対策といった身近な課題にも目を向け、「技術はもっと生活の足元で役立てる」と語ります。
櫻井さんにとって経営とは、「社会に必要な技術を、必要なかたちで提供し続けること」なのです。そのために、何をやるか、何をやらないかを決め続けてきました。
想定外が前提となる時代においても、判断の軸を手放さない。
その姿勢こそが、櫻井さんが率いるセックの現在地であり、未来への道筋です。
もっとも印象に残った言葉:
「たとえ防衛目的であっても、結果として人の命を奪うことに直結しうる技術開発には関わらない。技術的にできるかどうかではない。社会にどんな影響を与えるのかを考えたとき、創業理念に立ち返れば答えは一つでした」
会社概要
会社名:株式会社セック
取材対象者:代表取締役社長 櫻井伸太郎
経営理念:「社会の安全と発展のために」
事業内容:社会公共分野・先端分野のリアルタイムソフトウェア及びソリューションの提供
住所:〒158-0097 東京都世田谷区用賀4-10-1 世田谷ビジネススクエア
URL: https://www.sec.co.jp






