「宇宙一おせっかい」で企業のシステム管理を無意識化へ。人に寄り添うDXで業務管理がラクな世界をつくる〈アストロラボ株式会社 日下ヤスユキさん〉【東京都港区】

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東京都港区に本社を構えるアストロラボ株式会社は、デジタル技術を駆使し、ビジネスの効率化を図るサービスを提供する企業です。2012年12月に設立された同社は、企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)をサポートし、「宇宙一おせっかいなIT/DXコンサル会社」という看板を掲げ、備品や契約書の管理に特化したクラウドプラットフォームを提供しています。

代表取締役CEOの日下ヤスユキさんは、アメリカでの学位取得後、外資系コンサルティングファームであらゆる経験を積み、その後ビジネスを立ち上げました。日下さんは、DXが叫ばれる以前から業務システムの効率化に取り組み、「はたらく人を中心にサポートするシステム」を開発。ユーザー体験を重視した革新的なソリューションを次々と提供しています。

DX成功のカギは人に寄り添うシステム構築にあり

アストロラボが提供するサービスの中心は、企業の備品や契約書の管理などを効率化するクラウドプラットフォームです。これは単なる管理システムではなく、業務のデジタル化を促進することはもちろん、「システムに合わせて人が動く」という従来の考え方を改革し、「人の心と体に寄り添い使いやすさを重視」。業務の効率化だけでなく、従業員がストレスなく業務を行える環境を提供します。

日下さんはこれまでのコンサルティング経験から、情報システムの構築・運用などの業務を請け負うシステムベンダーや、顧客のシステムへの理解が十分でないことに問題を感じています。「日本ではプログラミングやテクノロジーに関する学問的な知識を持つ人が、海外と比べてとても少ない。その結果、効率的で活用しやすいシステム作りが難しい場面が多くみられます」と言います。

日経ものづくりが実施したアンケートで、「DXが進んでいる」と答えた企業がわずか10%しかないという現状があるなか、日下さんはシステムを基礎から再構築し、人に寄り添ったユーザーインターフェイス(以下、UI)を提供することで、「DXの成功率はもっと高められる」と話します。

大企業が直面するシステムの壁

AIの普及や急速なIT技術の進展により、DXの重要性がますます増しています。多くの企業がDXに取り組んでいるものの、大企業であっても順調にDXを推進できているところはそれほど多くありません。

とある大企業では、15億円を投じて構築したシステムが機能しないという問題に直面していました。日下さんがその企業のニーズに寄り添い一から作り上げたシステムは、当初投じた約半分の8億円で実現し、その後その業界の基幹システムとして広く使用されています。

「特に大企業のシステムとなると構築するのには大変な労力が必要で、各企業は十数億円にものぼる巨額な金額をかけている」と日下さん。一度作ったシステムは簡単には変えられず、使いにくくわかりにくい業務システムを20年にわたって使う会社もまだ多くあると日下さんは話します。

システム刷新で「レガシーをセクシーに」。顧客ニーズに寄り添い収益の向上を実現

アストロラボでは、時代が進化してもいまだ使われている古いシステム、いわゆる「レガシー」なシステムを、魅力的で使いやすい「セクシー」なシステムに刷新するというビジョンを掲げ、システムの改革に寄り添います。

アストロラボのサービスは、徹底したユーザー体験の追求が根本にあります。「無料だとしても使い勝手が悪ければサービスを利用しない」というB to Cサービスの日下さんが自ら経験したことをもとに「丁寧にクライアントに寄り添う。それによって収益の向上が実現できる」という提案を行い、サービスを提供しています。

例えば、「どこでも契約書クラウド」は、契約書の検索や保管にかかる時間やスペースを削減し、ビジネスプロセスを円滑に進めるための重要なツールとなっています。また、「備品管理クラウド」は企業が所有する備品の管理を効率化し、棚卸しや、相見積といった煩雑な業務を簡素化します。

「業務を簡素化することで上がるパフォーマンスによって結果的に収益の向上につながる」と日下さんは話します。

組織拡大による柔軟性の喪失を経て、「人に寄り添う」システム開発を実現

日下さんは12年にアストロラボを立ち上げた後、200人規模の組織を築きましたが、「規模が大きくなることで、エンジニア中心の会社となり、かつてのような柔軟性や創造性が失われた」と振り返ります。18年に上場のタイミングで100%の株式を買い戻し、より自由で活気ある経営体制へと移行し、これが現在の「人に寄り添う」アストロラボの基盤を築くことになりました。

アストロラボは「人に寄り添う」DXの課題に真正面から取り組み、顧客が抱えるシステムの問題を解決するためにYouTubeを通じて情報発信を行うなど、幅広い活動を展開しています。デジタル技術の進化にともない、同社は未来を見据えたシステム開発を続け、企業が本来の業務に集中できる環境を提供することを目指しています。

デザインは伝えるために必要な大事な要素。「使い続けたいシステム」を提供する

アストロラボが目指すのは、単なる技術の導入ではなく、ユーザー体験を通したデザインを重視する「使い続けたいシステム」の構築を通じて、企業の成長をサポートすることです。

「東京2020オリンピックの『ピクトグラム』ってありますよね。言葉が通じなくてもすごい情報量をたった一つの絵で直感的にその意図を伝える。デザインは伝えるために必要なすごく大事なものなのです。それを理解してほしい」。何よりもデザインの重要性を理解する日下さんはそう話します。

アストロラボの挑戦は、まさにこのデザインの力を生かしたシステム作りを反映しています。

「システムなんかなくなってもいい!」。管理を無意識化する

日下さんは、小売業やアパレル業界において、リアルタイムでの在庫管理がきちんとされていない現状に課題を感じています。特に、店舗、倉庫、ネットショップ間の連携が取れていないために、売り逃しや廃棄商品が発生していることに懸念を抱いています。また、アパレル向けシステムが高額なために、小規模店舗では導入が難しいという問題も指摘しています。

日下さんは極論、「システムなんかなくなってもいい!」と話します。

「本当にすごいシステムというのは、目に見えなくなってきている。SiriやAlexaといった音声アシスタントは、それらの入力インターフェースが視覚的には存在しないが、直感的な使いやすさを提供している」という点に着目しています。利用者がその存在を意識しないほど自然に使えるものであり、これが「使い続けたいシステム」の核となり、そういう世界観に近づけることをやっていきたいと日下さんは話します。

「現在は各サービスを月額5000円程度で提供していますが、ゆくゆくは無料で提供できるようになるのが目標です。アストロラボのシステムが広く浸透し、日本中の企業や自治体が使うようになれば世界は変わりますよ」

アストロラボの「宇宙一おせっかい」なシステムの導入で、企業や自治体が新たな一歩を踏み出し、誰もが効率的に働ける未来が現実になり、社会に大きな変革がもたらされるのは遠くない将来に実現しそうです。

聞き手: 丸山夏名美  執筆: 天野崇子

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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