
SNSで“誰でも発信者”となれる時代、企業の広報・PRの在り方も大きく変わりつつある。
そうした中で「PR・広告・メディアを横断し、すべて自社で担う」という独自のモデルを築いてきたのが、東京に拠点を置く株式会社Creative Groupの代表・中原 一真(なかはら かずま)さんだ。元々は21歳で学習塾を起業。そこから着想を得たSNS活用を武器に、10年かけてPR業界に風穴を開けてきた。なぜ塾の先生が、PRのプロフェッショナルになったのか。その歩みの背景にある原体験と信念に迫った。
目次
一気通貫の広告事業で、企業の埋もれた魅力を発掘・発信
企業のPR戦略から広告出稿、マーケティング、キャスティング、メディア運営までをすべて自社で一貫して支援しているCreative Group。
「世に眠る“0”を“1”へと変え、想いを込めて広く届ける」
埋もれたモノやサービスの魅力を発掘・発信することによって、世の中に新たな光を灯す。同社はそんな志を持って、挑戦を続けてきた。これまでに飲食、アパレル、美容など300社以上の企業PRをサポートしている。
ここにいたるまでに何があったのか。
人生を変えた受験の成功体験。“できない”が“できた”感覚が原点に

「自分には何もない」。地元・三重県の小さな町で、高校3年生だった中原さんは将来を諦めかけていた。当時の偏差値は38。しかし、担任の先生からの「東京に行ってみたら?」という言葉をきっかけに毎日10時間、2年間の猛勉強を経て、東京の難関大学に合格した。
その経験から「努力すれば人生は変えられる。自分のような人を一人でも多く救いたい」と思うようになった中原さんは大学入学後、塾講師のアルバイトを始める。だが、そこで出会ったのは「能力があるのに選択肢を狭めてしまっている」子どもたちだった。
自分が変われたのなら、彼らもきっと変われるはず。生徒たちの人生を変える手助けがしたい。そんな思いから、21歳の在学中に自ら塾を立ち上げた。
誰もやっていなかったSNS活用。塾経営の経験が、PR事業の原点に
開業当初、名もない塾に人は集まらなかった。そこで活用したのがSNS。授業風景や理念を発信すると、次第に投稿が“バズり”、全国から問い合わせが来るようになった。
「SNSは誰もが無料で発信できて、人の心を動かすことができる」。この実感が、広告・PRの領域へ踏み出すきっかけになったという。
伴走するスタイルは、“社内の人”より“社内の人らしく”。評価につながる
現在、Creative Groupでは、広告に関わるすべての業務を自社で支援している。この事業体制は、“目の前の課題に向き合う”という姿勢がかたちづくった。
「我々が目指すのは、“社員の一員みたいな外注先”。一緒に悩み、一緒に考え、一緒に実行する。それが結果として成果にもつながると思っています」
現在は年間億単位の予算を任される案件も複数抱えている同社。実は、その一線を任されているのは若手メンバーだという。業務委託を含めれば約35名(うち社員約10名)の組織だが、その多くが20代。業界経験者ばかりではない。
「経験や知識よりも、“誰かのために動こう”という気持ちと、“成長したい”という意思を大事にしています」
プロである必要はない。大事なのは、“誰かに必要とされる存在になること”だと中原さんは語る。
「計画は立てない」。そのワケは
中原さんは「5年後の計画は立てない」と言い切る。
「これまでの10年、思い描いたとおりに進んだことなんて一つもない。だったら、目の前のことに集中して、その都度全力を尽くした方がいい」
未来は描かない。だから、柔軟に変化できる。確かに、予測不能な時代においては、その姿勢こそが最大の武器なのかもしれない。
“ありがとう”の数が、事業の成果

事業を行う中で、最もうれしいのは「ありがとう」と言われることだという。
「結局、誰かの人生がちょっとでも前向きになったときに“ありがとう”って言ってもらえる。それがあるから、続けられる」
報酬や数字では測れない価値を、Creative Groupは創り出している。