使い終えた後まで、責任を持つ。ユニ・チャームが描く循環社会のかたち【愛媛県四国中央市】

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清潔で快適な暮らしを支える商品を、いまも世界中に届けているユニ・チャーム。創業から約65年、衛生用品メーカーとしての枠を超え、人々のライフステージに寄り添う総合ライフケア企業へと歩みを進めています。

その変化を現場から見つめ続け、現在は役員のひとりとして次の時代の挑戦をけん引しているのが、上席執行役員の城戸勉(きどつとむ)さんです。長く商品開発や企画に携わり、組織の成長を支えてきた城戸さんに、企業の歩みと、これからの未来について伺いました。

ユニ・チャーム株式会社 上席執行役員の城戸勉(きどつとむ)さん

地元で見つけた「最初の挑戦」

愛媛県出身の城戸さんがユニ・チャームに入社したのは1987年。大学卒業を控え、地元で働くことを意識していた時期でした。

「研究室の一つ上の先輩がユニ・チャームに入っていて、とても楽しそうに働いていたんです。県内企業で成長している会社だったので、地元で挑戦したいと思いました」

当時、ユニ・チャームは売上800億円ほど。愛媛県四国中央市という地方発の成長企業として知られ始めた時期でした。「地元にこんなに勢いのある会社があるのか」と感じた城戸さんは、迷うことなく応募を決めます。

開発の最前線で学び、全社的な視点の土台を作る

入社後は、ベビー用紙おむつなどの吸収体商品の開発部門に配属されました。

「若い頃から責任ある仕事を任せてもらえました。正直、大変でしたが、任せてもらえることがうれしかった。経験が浅いぶん失敗もありましたが、そのたびに必死で学びました」

「自分が携わった商品が世に出て、お客さまに使ってもらえる。その実感こそが“働く面白さ”でした」

城戸さんは14年間、開発の最前線で手を動かし続けました。その時間が、後にユニ・チャーム全体を俯瞰する役割につながる土台になっていきました。

その後、開発畑で経験を重ね、2000年に企画部門へ異動。そこから約20年、企画業務を中心に人材育成、仕組みの設計に携わっていきます。

リサイクル技術資源循環モデルを社会全体の文化へ

現在、ユニ・チャームはウェルネスケア、ベビーケア、フェミニンケア、ペットケアの4つの事業を柱に、約80の国と地域で商品を展開しています。海外売上比率は約3分の2に達しています。世界の生活水準が上がるにつれて、衛生用品の需要も拡大しています。

「国のGDPが一定水準を超えると、衛生用品の利用が一気に広がります。ナプキンなら1000ドル、おむつなら3000ドル程度が目安。そのタイミングを見ながら、まだ商品が届いていない地域に事業を広げています」

おむつを「使い終えた後」に注目。自治体と共にリサイクル技術構築へ

一方で、社会の関心は「使うこと」から「使い終えた後」に移りつつあります。ユニ・チャームにとっての課題は、清潔で安心な商品を届けながら、環境負荷を減らすこと。
それを具現化する取り組みの一つが、使用済み紙おむつのリサイクルに挑む「RefF(リーフ)」プロジェクトです。

「紙おむつは衛生的であることが第一。一方で、使い捨てだからこそごみが出る。これをどう解決していくかが、私たちの使命です」

そこでユニ・チャームは2016年に、鹿児島県志布志市との共同で資源循環モデルの構築に向けた実証実験に乗り出しました。自治体や住民と連携し、使用済み紙おむつの回収ボックス設置や再生材を使用した商品化を進めています。

「技術だけではなく、地域の協力や行政との対話が欠かせません。だからこそ、リサイクルを“技術”ではなく“社会の仕組み”として定着させることが大切です」


同社は「衛生」「環境」「社会課題解決」を三本柱とし、製品と人を通じてより良い暮らしを支えることを企業の使命としています。

健全な危機感と、現場に宿る意思

長いキャリアを振り返り、城戸さんが口にするのは「健全な危機感」という言葉です。「どんなに成果が出ても、満足は一瞬。次の目標を決めて動く。その繰り返しです」と話します。

この感覚は、ユニ・チャーム全体に受け継がれる文化でもあります。「若いころはとにかく失敗して、汗をかいて。その経験が力になります。修羅場をくぐった人は必ず成長する。だからこそ、若い人たちには挑戦を恐れないでほしい」

一方で、会社の経営方針にも独自の考え方があります。それが「共振の経営」です。

「経営が上から方針を出すだけではなく、現場の意見や危機感を拾い上げて、経営判断に生かす。経営と現場が振り子のように行き来しながら共鳴することで、会社全体が前に進むと思います」

成果を上げても立ち止まらず、次の挑戦へと移る。そのリズムが、同社の成長を支えています。

「働くこと」は、社会の中で何を良くしたいかを問い続けること。城戸さんの穏やかな語り口の奥には、そんな信念を感じました。

最も印象に残った言葉:
「技術だけではなく、地域の協力や行政との対話が必要です。だからこそ、リサイクルを“技術”ではなく“社会の仕組み”としてつくることが大切なんです」

会社概要


会社名:ユニ・チャーム株式会社
取材対象者:上席執行役員 城戸 勉(きど つとむ)さん
経営理念:コーポレート・ブランド・エッセンス:Love Your Possibilities~なんでもできそう。いつでも、いつまでも。~
設立年月:1961年2月10日
事業内容:ベビーケア、フェミニンケア、ウェルネスケア、ペットケアなど、衛生用品を中心とした商品、サービスの提供
本店所在地:愛媛県四国中央市金生町下分182番地
URL:https://www.unicharm.co.jp/

木場晏門

木場晏門

神奈川県鎌倉市生まれ藤沢市育ち、香川県三豊市在住。コロナ禍に2年間アドレスホッピングした後、四国瀬戸内へ移住。webマーケティングを本業とする傍らで、トレーニングジムのオープン準備中。

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