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「人生と資産の調整装置」トランクルームを“暮らしのインフラ”に。ストレージ王が考える収納の選択肢を広げる人生の再設計【千葉県市川市】

4 min
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住宅の狭小化、高齢化、そして気軽に物が購入できるようになったことで増え続ける家財。
日本の暮らしは、静かに、しかし確実に変化しています。そのなかで、トランクルームを単なる「レンタル収納スペース」や「貸倉庫」ではなく、「暮らしを支えるインフラ」として再定義してきた企業があります。

代表取締役社長の荒川滋郎さん

株式会社ストレージ王を率いる代表取締役社長の荒川滋郎さんのお話から浮かび上がったのは、トランクルーム事業を通じて「顧客資産の価値」と真正面から向き合い続けてきた、一貫した思想でした。

コンテナ建築から始まった、建築基準法を満たすトランクルームサービス

ストレージ王の原点は、2007年に設立された創業時の親会社・株式会社デベロップにあります。同社は、コンテナ建築を主業として事業を展開していました。

コンテナ建築の用途を模索するなかで、最初に着目したのがトランクルームでした。
2008年、コンテナ建築を活用したトランクルームの管理・運営を専門に行う会社として、ストレージ王はスタートします。

当時の日本では、トランクルームはまだ一般的な存在ではなく、安全性や品質にばらつきがありました。そのなかで同社が最優先に据えたのが、建築としての安全性です。

荒川さんは次のように話します。
「安全であることが、すべての前提でした。建築基準法を満たしていないものは、長く使われるサービスにならないと思いました」

基礎工事を含め、建築基準法を満たした施設を供給する。この判断が、事業の信頼性を支える土台になっていきました。

郊外と都心に広がる、2種類のトランクルーム

現在、ストレージ王が運営するトランクルームは全国約220拠点(うち約150拠点がコンテナ型、50〜60拠点が建物型)です。

郊外のロードサイドに多いコンテナ型は、資材やタイヤなどの保管に適しています。一方、都心部の建物型は、空調やセキュリティを備え、大切な衣類や思い出の品を収納する用途が中心です。

背景にあるのは、都市部の住宅事情の変化です。マンション価格の高騰により、居住スペースは年々コンパクトになっています。

「部屋は広くできない。でも、暮らしを狭くしたくない。そのような悩みを持つ方に、トランクルームが使われ始めています」荒川さんはそう説明します。

トランクルームはもはや、住まいを補完する「収納の外部化」として定着しつつあるのです。

「物」ではなく、「資産」を保管するという発想


顧客資産の持続的な価値向上を通じて、人々の暮らしや社会の未来を共創する。

ストレージ王は経営理念をこのように掲げています。

この理念は、現場で顧客と向き合うなかで形づくられてきました。多くの利用者は、トランクルームを使うのが初めてです。どの広さを借りるべきか、何を保管するべきか、迷いながら問い合わせてきます。

ストレージ王では、オペレーターが整理収納アドバイザーの資格を持ち、顧客の暮らし全体を見据えた提案をしています。

「私たちは物を保管しているのではなく、お客様の資産価値をどう守り、どう生かすかを考えています」と荒川さんが話すように、「物」ではなく、「資産」という視点が、ストレージ王の理念の核となりました。

人生の節目を支える「調整装置」。資産を整理し選択肢を生み出す

高齢化が進み、核家族化により家族で家財を管理することが難しくなるなど、日本の住環境や社会構造が変化する中で、トランクルームは人生の大きな節目を支える「調整装置」としての役割を担い始めています。

例えば、マンションを購入した夫婦が、子どもの誕生とともに荷物が増え、やがて子どもが独立して再び夫婦二人の生活に戻るというライフサイクルにおいても、一時的または段階的に荷物の量が増減します。トランクルームは、こうした家族の成長と変化に応じた荷物の「調整弁」としても機能します。「家が狭くて子ども部屋が確保できない」そんな悩みに対しても、暮らしの選択肢を広げる一助になっているかもしれません。

近年、特に増えているのは高齢者の利用事例です。高齢者の方が高齢者住宅などへの入居を機に、長年暮らした家を離れるケースは少なくありません。すぐに処分できない思い出の品などをトランクルームに保管し、空いた住宅を貸し出し、家賃収入を施設費用に充てる、といった利用も近年増えています。

荒川さんは、「トランクルームは、人生の次の段階に進むための“間”をつくる場所」と話します。ここでは、保管そのものが目的ではありません。暮らしと資産を整理し、次の選択肢を生み出すための装置として機能しています。

不動産に、新しい価値を与えるトランクルームの仕組み

トランクルームは、不動産の土地オーナーや投資家にとっても有効な選択肢です。住宅を建てにくい小さな土地や、使い道に困っていた敷地を有効活用できます。これは、通常の不動産活用では難しかったニッチなニーズに応えるものであり、土地に新しい価値を与えることにつながっています。

また、水回りが存在しないという特性から、追加投資が少ないことや築年数による価値低下も起こりにくいのです。

「まだ広くは知られていないのですが、管理がシンプルで価値が下がりにくく、トラブルも少ない。長く使える安定した投資商品なのです」

荒川さんが示す、トランクルームの不動産としての新しい価値観は、これまでにはなかったアイデアが集約されています。

30人に満たない少数精鋭の組織が、困りごとを自分ごと化。理念を日常に落とし込み判断する

ストレージ王は、社員数が30人に満たない少数精鋭の組織です。しかし、その規模感だからこそ、経営理念が現場まで浸透しやすい環境が整っています。

荒川さんが重視しているのは、「全員が顧客の困りごとを自分ごととして理解している状態」をつくることです。

そのために、部署を超えた情報共有が日常的に行われています。営業現場で得た顧客の声、運営で起きたトラブル、改善のヒント。それらは記録として残され、社員全員が確認できるようにしています。

また、オペレーターが整理収納アドバイザーの資格を持つのも、その延長線上にあります。目の前の契約を取ることよりも、顧客の暮らし全体をどう支えるかを考えることを、組織として大切にしているのです。

「トランクルームは、物を扱う仕事ですが、実際には人の人生に触れる場面がとても多い。そこに誠実でいられるかどうかが、いちばん大事だと思っています」

大きな組織ではないからこそ、一人ひとりの判断がサービスの質を左右する。その自覚を共有することが、ストレージ王らしさを支えています。

「理念は掲げるだけでは意味がありません。 日々の判断の中で使われて、初めて生きた言葉になると思っています」と荒川さんは、組織づくりについて語ります。

トランクルームは特別ではない。暮らしのインフラになる未来

トランクルーム市場は拡大を続けていますが、日本全体での普及率はまだ1%未満にとどまっています。

「特別な人のサービスではなく、暮らしのなかに自然にある存在になっていくと思っています」

荒川さんが見据えているのは、物を減らすことではありません。人生の節目ごとに、暮らしと資産の関係を見直し、選び直せる余白を残すことです。

「トランクルームは、物を収納する場所ですが、本質的には人生の次を考えるための“間”をつくる場所だと思っています」

住まい、家族、仕事、老後。
変化のたびにすべてを抱え込むのではなく、一度立ち止まり、整理し、次を選ぶ。
ストレージ王は、トランクルームを通じて、そんな選択が当たり前にできる社会にしようとしています。

最も印象に残った言葉:
「トランクルームは、物を収納する場所ですが、本質的には人生の次を考えるための“間”をつくる場所だと思っています」

※写真はすべて株式会社ストレージ王提供

企業情報

会社名:株式会社ストレージ王(証券コード:2997)

取材対象者:代表取締役社長 荒川滋郎さん
設立年月:2008年5月
経営理念:顧客資産の持続的な価値向上を通じて、人々の暮らしや社会の未来を共創する

事業内容:トランクルームに関する企画、開発、運営、管理/プロパティマネジメント業/上記に付帯関連する一切の事業
所在地:千葉県市川市市川南1丁目9番23号 京葉住設市川ビル4階
コーポレートサイト:https://www.storageoh.co.jp/
サービスサイト:https://www.storageoh.jp/

天野崇子

天野崇子

副編集長/第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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