ローカリティ!時代の開拓者たち

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和歌山・南紀古座川で、世界に地域の魅力を伝える。関係人口を育み、地域を未来へ【和歌山県串本町】

3 min
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  • 古座川
  • 株式会社古座MORI
代表の坂本直弥さん


和歌山県・南紀古座川(こざがわ)で活動する株式会社古座MORIの代表・坂本直弥さんと、今上亜也さんをはじめとするスタッフの皆さん。同社は、シェアオフィスや宿泊施設の運営や書店業を通じ、人がこの土地を訪れ、滞在し、継続的に関わるきっかけを生み出している。目指すのは、自然や歴史、人の営みが残る古座川の魅力を“体験”として届けること。今回は、地域の魅力を掘り起こし、人と地域の新しい関係を育てる同社の取り組みと思いをうかがった。

それぞれの原点が、古座川での挑戦につながった

南紀古座川で地域の活性化に取り組む坂本さんとスタッフの今上さんだが、この場所にたどり着くまでの経緯は異なる。二人に共通しているのは、「この土地の価値をどう残し、次の世代につないでいくか」という問題意識だ。

坂本さんは、学生時代に訪れた京都の丹後半島で、廃村化が進む現実に触れた。「自然が豊かでも、人が住めなければまちは衰退していく。その現実を目の当たりにし、地方の課題を解決する方法を考えるようになった」と振り返る。農村計画や地域経営を学ぶなかで海外生活を経験後、移住先として選んだ串本町古座でも同様の課題を感じ、実践に踏み切った。現在は、古座川で数百年続く「御舟謡(みふねうた)」の伝承者としても活動している。

一方の今上さんは、高知県にある祖母の家で過ごした幼少期の体験が原点だ。思い入れのある地域が年々縮小していく様子を目の当たりにし、「好きな場所が失われていくことへの危機感を抱いた」という。大阪の宿泊施設運営会社に入社後、和歌山へ転勤。約3年働くなかで坂本さんと出会った。坂本さんの想いに共感したことも後押しし、愛着のあった和歌山を盛り上げようと決意した。

世界中の人を呼び込み、関係人口を育む

本州最南端の清流としてしられる古座川流域は、川や海でのカヌー体験や国の天然記念物である巨岩「一枚岩」、日本で唯一の民間ロケット射場など、観光資源に恵まれている。一方で、宿泊施設や飲食店の不足、アクセスの不便さといった課題も抱えているほか、若者の流出で地域の担い手は減少している。

こうした課題に対し、古座MORIでは、地域住民と外部の人が交流できるシェアオフィス「サテライト古座」や、一棟貸しの宿泊施設「浦神邸」を運営。さらにキャンピングカーのレンタル事業も展開し、滞在方法の選択肢を増やすことで、観光へのハードルを下げている。この春からは、地元唯一の書店であった「田中文明堂」を引き継ぎ、地域の小中高校の全校生徒へ教科書を届け始めた。今後は、地元の名旅館として岡本太郎も宿泊されたという「神保館」を再生し、本のある清流古座川をつくっていくという。

地域コーディネーターとして観光客の案内や住民との交流の橋渡しを行う坂本さんは、「自然を見るだけでなく、人や文化に触れてもらうことで、もう一度来たいと思ってもらえる。その積み重ねが、地域のファンづくりにつながる」と話す。

また、これらの事業は日本人だけでなく外国人観光客もターゲットとしている。フィリピン・マニラにも拠点を持つ坂本さんと、翻訳経験のある今上さんは、「当地は昔から海を通じて世界と交流を持ってきました。国籍に関係なく、古座川に興味を持った人に訪れてほしい」と語る。

土地の魅力を次世代へ

こうした取り組みの先に二人が見据えているのは、「人を呼び込むこと」そのものではない。訪れた人が地域の人や文化、歴史に触れ、何度も足を運ぶ中で、少しずつ関係を深めていく。そんな状態をつくることだ。観光で終わらない関係が積み重なることで、地域の活力につながっていくと考えている。

坂本さんは「取り組みを通じて地域課題を解決することは、同時に土地の魅力を広め、次世代に活気あるまちを残すことにもつながる」と語る。今上さんも「訪れた人との関係が深まることで、住民一人ひとりも自分の役割を意識し、主体的にまちに関わるようになる。それが結果的に地域全体の活性化につながっていく」と続ける。

南紀古座川が持つ自然や文化、歴史を大切にしながら、新たな人の流れと関係性を生み出す。その挑戦が、地域の未来を形づくろうとしている。

(聞き手:三芳洋暎 書き手:渡邉俊)

最も印象に残った言葉 :
「複雑であるがゆえに面白い。でも、複雑であるがゆえに伝わりにくいところを、シンプルにするのではなく、そのまま伝えたい」

企業情報

会社名:株式会社古座MORI
取材対象者:坂本直弥さん、今上亜也さん
事業内容:シェアオフィス運営、観光・滞在体験の企画運営、書店業等。
設立:2020年7月17日
所在地:和歌山県東牟婁郡串本町中湊95番地5
インスタグラム:https://www.instagram.com/koza_mori/

渡邉俊

渡邉俊

東京生まれ東京育ちの大学2年生です。
大学ではアフリカに関する学生団体に所属しています。セネガルに渡航するなど国際的な興味が強かったのですが、日本にも目を向けたいなと思い、参加させていただきました。
現在は東日本大震災とそこからの復興に興味があります。

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