ローカリティ!時代の開拓者たち

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金融の不安を、計画と対話でほどいていく。ブロードマインドが描くAI時代のフィナンシャルパートナー像【東京都渋谷区】

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全国の生活者の人生設計をオンラインで支える会社があります。保険、投資信託、住宅ローン、不動産までを一社で扱い、「フィナンシャルパートナー事業」を展開する東京のブロードマインド株式会社。2002年の創業以来、「金融の力を解き放つ」というパーパスのもと、金融サービスの“あるべき姿”を探り続けてきました。

同社を率いるのが、代表取締役社長の伊藤 清(いとう・きよし)さんです。生命保険の営業として働くなかで業界のあり方に違和感を覚え、「商品ではなく人生に向き合う金融」という考えに行き着きました。コロナ禍から8割をオンラインに切り替え、いまはAIエージェントの開発にも挑んでいます。伊藤さんが歩んできた道のりと、これからの金融をどのように変えていきたいのかを聞きました。

代表取締役社長の伊藤清さん

生命保険の「一生寄り添います」に対する違和感

現在、保険などに携わる伊藤さんは当初、「保険への苦手意識があった」といいます。

「若いころ、職場に保険の営業の方がよく来ていたんです。お昼時に突然現れて、『あなたは独身だから保障が必要よ』と高額な商品を勧めていく。正直、良い印象は持てませんでした」

そんな伊藤さんの価値観を変えたのが、とある大手生命保険会社との出会いでした。商品を売る前に、家族構成や将来の希望、人生で大切にしたいことを丁寧に聞き、最後にその人に合った商品を提案する――。

「『商品ありき』ではなく、ライフプランを一緒につくる。『これならお客さまの人生に寄り添えるかもしれない』と感じて、飛び込むことにしたんです」

しかし、現実の業界には大きなギャップがありました。98人いた保険会社の同期が、5年後には数人しか残らない光景を目の当たりにしたのです。

「インセンティブを稼ぐために見込み客探しに9割の時間を費やし、残りの1割でなんとか契約を取る。社員は一人ひとりの人生に向き合うやりがいを感じられないまま、辞めてしまう。この仕組みの中では、お客さまに『一生寄り添う』という約束が守れないと感じました」

伊藤さんはそうした業界の課題を打ち破ろうと、ブロードマインド株式会社を立ち上げました。

オンライン8割とAIコンシェルジュで、相談のハードルを下げる

ブロードマインドの特長の一つが、コロナ禍以前から進めてきたオンライン化です。対面だと1日に3件ほどが限界だった相談件数は、オンライン化により6〜7件、多い人で10件以上にも増えました。移動時間や交通費も大きく削減でき、より多くの生活者と向き合えるようになりました。

オンライン化を支えるのが、独自開発のライフプランシミュレーター「マネパス」です。画面を共有しながら、収入や支出、将来のイベントを入力していくことで、家計と資産の将来像を一緒に描いていきます。

さらに同社は今、チャットやオンラインで事前に相談ができる「AIコンシェルジュ」の開発に挑んでいます。保険への疑問や不安などをこのサービスで解消してもらったうえで、人間のコンサルタントがマネパスと組み合わせてプランを検討できる設計です。

「ヒアリングの質には担当者によってばらつきがあります。その部分をAIで平均化できれば、より多くの方に、一定以上の品質のサービスを届けられる。AIは『人にしかできない寄り添い』に集中してもらうための存在だと考えています」

「こなす」から「創る」へ。総合的な営業チームを育てたい

もう一つの大きな特長が、ビジネスモデルと人材育成の仕組みです。

「生命保険業界では、中途採用やフルコミッション型が主流で、3年で6割近くが離職してしまうと言われます。その中で当社は、8〜9割を新卒採用とし、給与制を採用しました。会社側で月1,500〜2,000件ほどの相談を集める仕組みをつくり、コンサルタントは『開拓』ではなく『コンサルティング』に集中できるようにしています」

その結果、新卒でも安定した収入を得ながら経験を積むことができ、離職率も大きく抑えられているそう。オンライン面談は、知らない人の自宅に訪問してアイスブレイクをすることに抵抗がある若い世代にも「フィットした」といいます。

一方で、この仕組みならではの課題も見えてきました。相談案件が自動的に社員に振られるため、開拓する力や、自分でビジネスを組み立てる力が育ちにくいことです。伊藤さんが目指すのは、「先発完投型」のコンサルタントと、AIコンシェルジュが拾い上げた案件を担当する「残りのイニングを任されるコンサルタント」が共存する二軸の体制です。

「後者では、細かい金融知識よりも、人に寄り添う力を持った人が活躍できるはずです。アルバイトや副業人材の活躍の場にもなるかもしれません。ひとりひとりの強みを生かしながら、総合的な営業力を持つチームにしていきたいですね」

個人のライフプランは、「中長期の事業計画」だ

伊藤さんが描く未来は、単に自社の成長にとどまりません。金融リテラシーを向上させることで、「自分で前向きに考え、行動できる人を増やすこと」を目指しています。

だからこそ、同社はすべての相談の出発点に「ライフプラン」を置き、「お金を“何のために”使いたいのかを、一度言葉にしてもらう」と言います。それにより、資金の使い道を明確にし、人生を前向きに歩めるようにするのです。

「先々の不安でビクビクしながらお金を使えない人生ではなく、『計画を立てたうえで、残りは思い切り使い切る』という生き方を、もっと多くの人に届けたい。そのためにも、金融サービスを提供する側も、インセンティブ優先の発想から変わっていかなければなりません」

ブロードマインドは、生活者と事業者の双方に変化を促しながら、AIと人の力を組み合わせた新しいフィナンシャルパートナー像を着実に形にしようとしています。

最も印象に残った言葉:すべての相談の出発点に「ライフプラン」を置き、「お金を“何のために”使いたいのかを、一度言葉にしてもらう」

会社概要

ブロードマインド株式会社
代表取締役社長:伊藤 清
パーパス:金融の力を解き放つ
設立:2002年1月
事業内容:フィナンシャルパートナー事業(個人・法人向けの金融コンサルティング、金融経済教育、ファイナンシャル・ウェルビーイング関連のデジタルプロダクト開発・提供 ほか
本社所在地:東京都渋谷区桜丘町1-1 渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー33階
上場市場:東京証券取引所グロース市場(証券コード:7343)
URL:https://www.b-minded.com/

木場晏門

木場晏門

神奈川県鎌倉市生まれ藤沢市育ち、香川県三豊市在住。コロナ禍に2年間アドレスホッピングした後、四国瀬戸内へ移住。webマーケティングを本業とする傍らで、トレーニングジムのオープン準備中。

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