
岩沼駅から徒歩で15分ほどの場所にある竹駒神社。境内には、イベントなどで特別開館する場合を除き、基本的に春と秋のみしか開館しない非常に珍しい博物館がある。それは宮城県柴田郡柴田町出身の彫刻家・小室達氏が作成した伊達政宗公の石膏で造られた騎馬像(試作品)のある馬事博物館だ。
開館日は「初午大祭」のある3月上旬と「秋季大祭」のある9月下旬の年に2回の祭事のあるわずか数日だ。筆者は「開館日」の情報を竹駒神社のホームページにて確認して2025年9月26日に駆け付けた。

日本で唯一馬に関する博物館
馬事博物館は、2021年に国登録有形文化財、そして、今年2025年3月6日に岩沼市指定有形文化財に指定された。建立は1938年と歴史があり、「日本で唯一馬に関する博物館」として建てられて現在に至る。始まりは6月で、その半年後の12月に小室氏の最終試作品に石膏づけした作品が寄贈された。竹駒神社の建立は842年で創建1100年を祝うことを控えて馬事博物館が開館したとされている。
太平洋戦争や東日本大震災含む多くの災害による倒壊を免れるほど頑丈に建てられており、床の高さぐらいまでが鉄筋コンクリートで壁から上までが木造と非常に珍しい造りとして現在も残されている。





小室達氏による制作の苦悩
小室氏は1935年に仙台城跡に建立された伊達政宗公の騎馬像(初代で、現在は仙台市青葉区の青葉山公園・仙臺緑彩館にて胸像部分のみ建立)の制作者として建立の2年前に選ばれた。
しかし、小室氏の日記(詳細は柴田町のしばたの郷土館に展示)によると制作は順風満帆にいかなかった。最初の目的は帝国美術院展覧会(現在の日展)への出展だったが宮城県の関係者の反対により断念した。
それでも、小室氏は試行錯誤し、馬事博物館に寄贈された最終試作品である粘土造形(等身雛型)を1934年に石膏像化したものである。過程としては、甲冑、馬、歴史に関係する専門家からも意見を聞きながらのことだった。
また、伊達政宗公によって馬市開催が許可されており、江戸時代から岩沼は「馬」で栄えていた町とされている。そして、来年2026年は午(うま)年で竹駒神社は御縁年を迎える予定だ。この機会に「馬」についてうまく歴史を学ぶのもいいかもしれない。
そして、次回の開館日は来年3月の初午大祭の予定。ぜひ、訪れて学んでみてはどうだろうか。
※画像はすべて筆者撮影。
情報
竹駒神社
住所:宮城県岩沼市稲荷町1-1
電話番号:0223-22-2101
ホームページ:https://takekomajinja.jp/