100人中100人に響く映像制作を。名古屋発・製品を“魅せる”映像で、今と未来を紡ぐ【愛知県名古屋市】

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株式会社新東工業映像研究所TAKUMI 代表取締役

Kazuhisa Eguchi
江口 和久氏

名古屋を拠点に、製造メーカーに特化した映像制作を手掛ける株式会社新東工業映像研究所TAKUMI。代表の江口 和久(えぐち かずひさ)さんはCM業界での豊富な経験を経て、TAKUMIと株式会社カミングスーンを設立。ジャンルの壁をなくし、映像の力を企業価値の向上や社会貢献、エンターテインメントなどに生かすその姿勢は、クリエイターに新たな可能性を示します。江口さんのキャリアステップや映像制作へのこだわり、社会貢献、展望などを伺いました。

短い時間で人の心をつかむ「CM」に魅せられて

学生時代、どんな将来像や夢を描いていましたか?

高校生の頃から「CMを作りたい!」という夢を持っていました。日清カップヌードルのCMが大好きで、短い時間で強い印象を残す力に衝撃を受けたんです。テレビドラマもよく見ていましたが、短い時間で心をつかむCMの表現力が特別だと感じました。
それで映像やマスコミ系の専門学校に進学し、在学中から名古屋のテレビ局でアルバイトをして業界に少しずつ足を踏み入れました。大学に進んで広告代理店に就職する道も考えたのですが、CM制作への情熱が勝りましたね。

専門学校卒業後のキャリアについて教えてください。

電通グループのCM制作会社のCM制作部に入り、CM制作のノウハウを8年ほど学びました。最初はプロダクションマネージャー(PM)として現場を支え、ディレクターも少し経験しました。しかし、25~26歳の頃に「自分がやりたいのはディレクターではなくプロデューサーだ」と気づき、プロデューサーの道に進むことに。
その後、別の方から新会社設立の話をいただき、そこに参画しました。そして、CM以外の映像制作の幅を広げるため、43歳の時にテレビ番組やPVなどの映像制作を行う「カミングスーン」を設立しました。

名古屋ならきっと、ジャンルの壁を越えられる

いつかは独立したいと思われていたのでしょうか?

もともと強い独立心があったわけではないのですが、その時は「自分でやったほうがいい」と感じたんですね。東京では分業が厳格ですが、マーケットが小さい名古屋なら、CM、テレビ、映画といったジャンルの垣根を越えて幅広い映像が作れると考えたんです。
設立当初は大変でしたが、長年の人脈や応援してくれる方に支えられ、仕事は順調に増えていきました。

製造業の現場を魅力的に見せる演出力が強み。トレンドを追うための「研究費」とは

「新東工業映像研究所TAKUMI」設立の背景を教えてください。

5年前、名古屋の新東工業株式会社との縁でTAKUMIを設立しました。新東工業は世界にも拠点のある大きなモノづくり企業です。BtoCの製品はほとんどないため、世の中ではモノづくりを支える黒子のような存在ですが、広告やPRにも力を入れる必要が出てきました。新東工業の社長が「これからは映像の時代だ」と考え、グループ会社として映像会社を作ろうと決めたんです。
現在は新東工業グループはもちろん、多くのものづくり企業の展示会やWebサイトなどで使用する映像作品を制作しています。

また、その中での強みを教えてください。

製造業の現場を魅力的に見せる演出力です。工場は一般的に汚いイメージがありますが、私たちは暗幕や特殊なライティング技術で背景を落とし、ネジ1本から大型機械まで美しく撮ることができます。展示会のLEDビジョンで映す映像はクライアントの製品を際立たせ、認知度向上やリクルーティングに高い効果を上げています。

映像制作で大事にしていることは何ですか?

“雑にしないこと”を大切にしています。100人中80人が満足する作品ではなく、100人全員に響く可能性を追求したいですね。最初から80点を目指して妥協すると、クリエイティブが死んでしまいます。結果的に80点でも、全力で取り組めば納得できます。編集では、納期ギリギリまでこだわることもあるため、深夜に及ぶこともありますが…それでも制作過程では一切妥協はしません。
作品に対して妥協はしたくないし、スタッフにもその姿勢を求めています。そして、一緒に働くクリエイターには好き嫌いをなくして、広い知識や興味を持つよう伝えています。異なるジャンルや文化に触れることで、クライアントのニーズを多角的に捉えられます。
また、若い頃は音楽やトレンドが向こうから近づいてきてくれますが、歳を重ねていくと自ら近づいていく必要性が出てきます。私たちの価値である企画力が落ちないよう、当社では「研究費」と呼んでいる予算を使って社員が映画やコンサート、展示会などに行くことを奨励しています。私自身もつい最近、Adoのライブを観に行きました。

子どもたちに、実物大の迫力を伝えたい。映像がもたらす未来に目を向け制作

社会貢献活動について教えてください。

最近力を入れているのが「スーパーネイチャーアカデミー」という映像を駆使したプロジェクトです。新東工業の4〜5メートルの大型LEDビジョンを使い、大学の先生とも連携して子どもたちに自然や科学の授業を提供しています。例えば、4メートルのクジラを大型ビジョンに実物大でうつすと、子どもたちは「本物の大きさ」をリアルに体感することができます。映像が子どもたちの心を動かし、プロジェクトを通じて協賛企業の価値も高められると信じています。映像技術によって、教科書やテレビでは得られない学びを提供したいですね。
また、プロバスケットボールチーム「名古屋ダイヤモンドドルフィンズ」の総合演出も5年ほど手掛けています。試合前の盛り上げ映像やライティングを当社が担当し、ライブで観客の反応を直接感じられるのはとても新鮮です。
以前は求められた映像を納品して終わりだったのですが、映像がどう広がるかを考えるようになりました。舞台演出にも映像表現が効果的に活用されるようになってきました。今後は映像が果たす役割がさらに広がっていくと思うので、どんな未来がやってくるかワクワクしています。

見る人が楽しくなる映像を作りたい。広く文化に触れ、感覚磨いて

今後のビジョンや目指す会社像を教えてください。

明確なビジョンを掲げるタイプではありませんが“楽しいことを追求したい”という思いはずっと変わりません。これからも見る人が楽しくなる映像を作りたいですね。
映像がスマホや駅のサイネージで日常に溶け込むようになり、これから生まれる子どもたちにとって、映像表現は私たちが感じてきた以上に当たり前の存在になります。北海道にできた球場・エスコンフィールドでは、パネル660枚で構成された世界最大級の大型LEDビジョンがすでに設置されています。このようなトレンドの変化は、実際に見に行って体感しないと感覚が鈍ります。
機材も日々進化して、プロとアマの境界が曖昧になっていく今後は、企画力で差をつけないといけません。これからも枠にとらわれず、映像の可能性をどんどん広げて行きたいですね。

世の中のクリエイターにアドバイスやメッセージをお願いします。

クリエイターには、情熱の火を消さないでほしいです。クライアントの制約などで妥協が生まれることもあると思いますが、純粋なクリエイティブへの情熱を忘れないでください。
大学や専門学校などで授業を頼まれることもあるのですが、その時には「好き嫌いをなくしましょう」と伝えるようにしています。個人レベルで好き嫌いがあるのはかまいませんが、例えば、仕事で「野菜が嫌い」と言っていたら、野菜農家のPRの仕事が来た時に農家さんとの距離が生まれます。音楽や文化も、好きなジャンルにこだわらず、広く触れることが大事です。企画力はそこから生まれます。クリエイターは世の中の面白いことに積極的に飛び込んで、感覚を磨いてほしいですね。

取材日:2025年5月12日 

株式会社新東工業映像研究所TAKUMI

  • 代表者名:江口 和久
  • 設立年月:2020年8月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:製造メーカーに特化した映像制作・企業PR/商品やサービスの紹介/開発技術の紹介、オンライン配信 など
  • 所在地:〒460-0002 名古屋市中区丸の内2-9-23
  • URL:https://www.sinto.movie
  • 連絡先:Contactよりお問い合わせください。

    株式会社カミングスーン
  • 代表者名:江口  和久
  • 設立年月:2011年9月
  • 資本金 1,000,000円
  • 事業内容:企業広告の企画・制作/テレビ番組の企画・制作および編集/Webサイトの企画・制作・運営/各種イベントの企画・運営 など
  • 所在地:〒460-0002 名古屋市中区丸の内2-9-23
  • URL:https://comingsoon.from.tv/mobile.html
  • 連絡先:052-218-5546

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

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