ローカリティ!時代の開拓者たち

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スーツの買い方を変える。 グローバルスタイルが挑む改革「オーダーメイドを楽しむ」 【大阪府大阪市】

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オーダースーツ専門店「GINZA Global Style」を全国に展開するグローバルスタイル株式会社は、1928年創業の老舗卸からスタートし、時代の変化とともに大胆な事業転換を遂げてきました。経営危機のなかで立ち上がった新規事業を、会社の主力へと育て上げたのが、代表取締役社長の田城 弘志(たしろ・ひろし)さんです。

「オーダーメイドを楽しむ」という新しい価値観は、いかにして生まれたのか。企業の歩みと、これからの未来について伺いました。

グローバルスタイル株式会社代表取締役社長の田城 弘志さん

老舗卸の「経営危機」。成功率わずか一割の新規事業

かつて生地の卸売業者として知られた同社は、創業から約100年の歴史を持つ老舗。海外から生地を仕入れ、小規模なテーラーや専門店に卸す事業を生業としていましたが、時代の変化とともに業績は悪化の一途をたどります。ピーク時に90億円あった売上は10億円台まで落ち込み、赤字が恒常化していました。

2007年頃、先代社長の経営コンサルタントとして関わっていた田城さんは、緊迫した経営状況を目の当たりにします。本業の立て直しだけでは立ち行かない状況下で、会社はジュエリー販売や飲食店など、五つほどの新規事業に次々と着手しました。しかし、そのすべてが失敗に終わります。

唯一、事業として成立し、後に会社の主力事業へと成長したのが、田城さんが手がけたオーダースーツ事業「グローバルスタイル」でした。老舗企業の存続をかけた最後の希望は、外部から来た田城さんの知見と覚悟に託されたのです。

外から見た「業界の歪み」。数値と感性の両立を目指して

田城さんはもともと地方銀行の出身です。その後、取引先であった既製スーツ販売会社「オンリー」へ転身。商品部長として組織構築に携わるなかで、彼が直面したのは、発注や在庫管理などをアナログで行う経営体質でした。

「デジタルと感性、そしてマーケティング。これらを組み合わせなければ生き残れない」

この既製スーツ店での確信から、田城さんはある傾向に気づいていました。「パターンオーダー」のような簡易的なオーダーシステムを導入すると、既製品を購入していた顧客がそちらへ移行していくのです。顧客は価格が変わらなければ、自分に合ったサイズやシルエットを求めている。この気付きが、後の事業構想の核となりました。

既製品から「オーダー」へ。スマホ広告が拓いた新市場

2009年12月、現在の「グローバルスタイル」事業が始動しました。コンセプトは「エンジョイオーダー」。一部の富裕層や愛好家だけのものであったオーダースーツを、誰もが楽しめるものへと開放する挑戦でした。

田城さんが目をつけたのは、既製スーツ市場の顧客層です。2010年代に入り、スマートフォンの普及が進むと、いち早くネット広告を展開。「オーダースーツ」というキーワードだけでなく、「スーツ」という広義の言葉で検索する層にアプローチしました。

結果、成人式を迎える若者から経営者まで、幅広い客層が店舗に押し寄せました。既製品と変わらない価格帯で、納期さえ待てば自分の体にフィットした一着が手に入る。かつては敷居が高かったオーダーメイドの壁を取り払い、スーツ市場に新たな選択肢を提示したのです。

事業の成長にともない、会社は卸売業から小売業へと完全に業態転換を果たし、2021年には上場を遂げました。

全ての人に「選ぶ自由」を。ラグジュアリーとコスパの両立

同社の最大の強みは、質のいいオーダー商品をコストパフォーマンスの高い価格で提供できる点にあります。既製スーツを購入していたビギナー層から、高級ブランド生地を好むこだわり層まで、価格帯ごとの異なるニーズに応えることで、あらゆる顧客を受け入れる体制を構築。店舗では、プライベートな空間でゆっくりと生地を選べる個室を完備するなど、体験価値の向上にも努めています。

「ターゲットを絞るのではなく、どんな人でも楽しめる場を作りたかった」と田城さん。この逆転の発想により、同社は競合他社と直接争うことなく、独自の市場を開拓し続けています。

暮らしのシーンに「物語」。共感を呼ぶマーケティング

事業が拡大する中で、田城さんは次なる一手として「物語」の力を活用し始めています。2025年の夏、外部のPR会社と協力し、恋愛や仕事をテーマにしたショートドラマを制作しました。「グローバルスタイルのスーツを着ると、仕事も恋もうまくいく」というストーリーをYouTubeなどで配信したところ、再生回数は1000万回を超え、新規顧客は前期比115%増を記録しました。

社内では部門間の壁を越え、組織全体でマーケティング視点を共有。会社独自の強み(USP)を模索し続けています。田城さんは「思いつきだけでは形にならない。顧客に刺さる価値を作り出すことが重要だ」と語り、機能的な価値を超えたブランド作りが進んでいます。

勝負の日の「ガチスーツ」。誰もが主役になれる社会へ

これからの未来に向けて、田城さんは「ガチスーツ」という言葉を掲げます。それは、結婚式や重要な商談など、ここぞという勝負の場面で身にまとう一着のことです。プライベートでもビジネスでも、大切な瞬間に自分を鼓舞し、自信を与えてくれる装いを世の中に広めたいと考えています。

また、今後はレディース分野の強化にも注力します。男性だけでなく、女性もオーダーメイドの楽しさを享受できる社会を目指しています。

「スーツの買い方を変える」。その挑戦は、単なる衣服の販売にとどまりません。身につけるものを通じて、人々の振る舞いを変え、人生の重要なシーンを彩るインフラとなること。田城さんの改革は、これからも続いていきます。

最も印象に残った言葉: 「スーツの買い物の仕方を変えることに挑戦しているんだと思います」

※写真はすべてグローバルスタイル株式会社提供

会社概要

会社名: グローバルスタイル株式会社
取材対象者: 代表取締役社長 田城 弘志
経営理念: 豊かで価値あるビジネスを展開し、人々の暮らしぶりに貢献する
設立: 1949年4月(創業1928年2月)
事業内容:オーダースーツ、オーダーシャツ等の専門店の経営
本社所在地: 大阪府大阪市中央区淡路町3-5-1
URL: https://www.global-style.jp/corporate/

木場晏門

木場晏門

神奈川県鎌倉市生まれ藤沢市育ち、香川県三豊市在住。コロナ禍に2年間アドレスホッピングした後、四国瀬戸内へ移住。webマーケティングを本業とする傍らで、トレーニングジムのオープン準備中。

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