「たとえ首都の機能が失われても」ミッチーさんが地域の生き残りをかけて(株)KAMUROにかけるもの【秋田県湯沢市】

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私が今回訪れた「秋ノ宮」という地域は秋田県の南部に位置する湯沢市の中でも、さらに南端であり、宮城県との県境付近に位置しています。「秋」田県と「宮」城県をつなぐ地域であることから「秋ノ宮」という地名がつけられたようです。人口は約1200人で、少子高齢化の進行が激しい地域のひとつです。冬になると付近の田んぼや山が真っ白な雪で覆われた景観を見ることができます。

そんな秋ノ宮の役内(やくない)地区にある株式会社KAMURO(以下KAMURO)は農業から飲食店経営にいたるまで幅広いフィールドで活躍している企業です。KAMUROの代表取締役である菅通悦(すが・みちよし)さんは「生産」や「つながり」によって、この先ずっと生き残っていくことができるような地域づくりに取り組んでいます。通悦さんは、周りから「ミッチーさん」と親しみを込めて呼ばれています。今回はそんなミッチーさんの地域の生き残りにかける思いに迫りました。

「生産」がカギだと気づいた、都市部と農村部の違い

取材を通して、まずミッチーさんが語ったのは都市と農村部の性質の違いです。都市は農作物の「生産」は行わず地域から仕入れた作物を「消費」するいわゆる消費社会です。それに対し、農村部では自分たちで食べたり、都市に出荷したりするための作物の「生産」を行っています。しかし、現在その「生産」を担う農村部の多くが消滅の危機に瀕(ひん)しています。そのため、ミッチーさんはその「生産」を担うべく、まず初めに農業に着手しました。

ミッチーさんは、「第二次世界大戦時の疎開において、人々は地域に食べるものを求めていた」と話します。このことから、地域における「生産」こそが人々をひきつけたり、受け入れたりするためのカギになるとミッチーさんは考えています。

「人と人がつながる」場所は今後の社会に必要

また地域には都市のコミュニティにはない、人と人とのつながりがあります。この取材の前日、私は実際にKAMUROが運営する居酒屋でご飯やお酒をいただく機会に恵まれました。

そこには前からの顔なじみ、何回か会ったことがある人、今日初めて会った人など、そういったものの一切の隔たりがなく、お店の方も含めて「みんなで楽しむ」という雰囲気があったように感じます。

こういった、都市では味わえないであろう独特な雰囲気や肌で感じられる地域の人々とのつながりは、KAMUROを含め、この地域ならではの魅力であると感じました。

ミッチーさんは、今後の社会では特に精神的なケアがより必要性を増すと考えており、地域は都会にはない精神的なつながりを提供できる場としての役割を果たすと考えています。居酒屋の運営もそのつながりの提供の場なのだということが実際に訪れて理解できました。

ミッチーさんのこうした考えや思いのもとで、KAMUROは食べるものと人のつながりを大切にした地域を残す仕組みづくりに取り組んでいます。ミッチーさんは、このような事業を通じて「もしも、首都の機能が失われたとしても、あそこの地域の人たちはなんか生きてるらしいよ、生き残ってる人たちがいるらしいよ、みたいな地域になっていけば面白い」と語ります。

国家公務員として感じた限界を地域へのパワーに

ミッチーさんはもともと財務省で勤務していましたが、東北に地域活性化のためのポストとして出向いた際、1990年代から2010年代にかけて東北全体で人口が約100万人減少しているということを知りました。実際、生まれ育った湯沢に戻ってみても少子高齢化で人口減少が進んでいる現状を実感し、危機感を覚えたそうです。

また、国家公務員の立場では地域復興に対する長期的な計画に携わることができず、財務省で勤務をしながら地域の復興に関わることに限界を感じた部分があったのだそうです。

こういった地域の消滅への危機感や、国家公務員の立場からのアプローチに限界を感じたことを受け、ミッチーさんは財務省職員の立場からではなく、自ら地域に出るプレイヤーとして生まれ育った地元に戻り、地域づくりに携わることを決めました。

筆者撮影:2026年2月22日

ミッチーさんは今後、農業体験や釣りなど、秋ノ宮に豊富にある恵みを体験しに訪れた人が泊まることができる民泊などの宿泊施設を整備したいと語ります。

また、持続可能な地域を作るために、ゆくゆくは水資源を活用した小水力発電や、酒粕やサツマイモを原料とするバイオガス発電で、地産地消のエネルギーの生産などに取り組んで、多くの人々を受け入れられるようにしていきたいそうです。

ミッチーさんはこうした地域づくりの事業を秋田県内で横展開し、秋田県全体そして日本全体が生き残っていけるような未来を目指しています。

※筆者撮影以外の写真は全てAsoV!va秋ノ宮提供

戸島千駿さんの投稿

情報

取材対象:株式会社KAMURO代表取締役 菅通悦さん 

株式会社KAMURO:https://yakunai-kamuro.com/

NPO法人こまちハート・オブ・ゴールド × ローカリティ! in 湯沢秋ノ宮

NPO法人こまちハート・オブ・ゴールド × ローカリティ! in 湯沢秋ノ宮

このプロジェクトでは、NPO法人こまちハート・オブ・ゴールドが、地域活性化に向けた事業連携の一環として、「ローカリティ!」とともに湯沢市秋ノ宮地区でワークショップを実施しました。
参加したメンバーたちは、地域の人々と出会い、イベントや地域の宝、人々の日々の営みを取材し、それぞれの記事を制作しました。その土地に何かしらの想いを持ったとき、そこは自分にとって大切なふるさとになります。参加者のフレッシュな視点で綴られた、価値が共感として広がっていく記事をご紹介します。

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