「子育ては大変」だからこそねぎらいが必要。子育てがしやすい秋田だからできる支援を【秋田県秋田市】

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託児のようす(後藤さん提供写真)

特定非営利活動法人あきた子どもネット(以下あきた子どもネット)は、秋田県を拠点に、子育て支援事業を幅広く展開しています。共働き家庭の増加により、仕事と子育てを両立する親たちの負担も増大しています。あきた子どもネットは、このような地域の課題に寄り添いながら、子ども食堂や産前産後ケア、放課後児童支援員の研修運営など、子どもとその家族を支える包括的な支援を行っています。

「だれにも頼れない子育て」の経験

代表の後藤さん(後藤さん提供写真)

あきた子どもネットワーク代表の後藤節子さんは、東京都内で幼稚園教諭として働いた経験があります。結婚後は、転勤の多い夫の仕事に伴い、複数の地域で子育てを経験しました。

子育てをする際に、親や身内などの支援を受けにくい人は日々の育児や生活での苦労が絶えません。後藤さんは「頼れる身内が近くにいないため、特に子どもが病気の時などは不安を感じることが多かった」と自身の子育てを振り返ります。

育児サークルのさきがけ。ママたちの仲間ができた。

「私が仙台で娘を育てていた35年以上前、大阪出身のママ友が大阪で当時盛んに活動が始まっていた『育児サークル』というものがあると教えてくれたんです」

当時仙台には育児サークルは存在していませんでした。後藤さん自身も初めて聞いた言葉ではあったものの、「さまざまな事情や立場があるから、きっとみんな子育てに苦労をしているはず。そんな人たちが集まる機会を持ちましょうよ」と、公園などで顔見知りになった方に声をかけ、仙台で初めての育児サークルを作りました。

手探りではあったものの、集まる人たちの輪が徐々に広まっていきました。

その後秋田県に転勤になり、引っ越した先の秋田市や能代市などでも同様のサークルをいくつも立ち上げ人の輪を作りました。

「子ども」を通した小さな輪が大きな輪になりNPOに

幼稚園の先生をしていたころから子どもに関わる活動は続けたいと思っていた後藤さんは、娘が小学校に上がってから秋田市で子どもに関するボランティアを「オタク」のごとく続けていました。その縁もあり、サークル活動の拠点となる施設が秋田市に開所した際、そこの職員として働くという機会に恵まれました。

「そこで出会うメンバーには託児を専門としたり、育児情報の発信をメインにしたりするサークルなど、さまざまな切り口で育児に向き合うメンバーがいて、そのひとたちが集まってイベントをする機会があったんです。小さな輪がつながって大きくなっていって。それがこのNPO法人を立ち上げたきっかけなんです」

子ども食堂活動中、東北電力マスコットキャラクターのマカプゥと(右が後藤さん・後藤さん提供写真)

「健やかに子どもが育ってほしい」思いを持った人の知恵が結集

2006年「あきた子どもネットワーク」はNPO法人として「子どもが健やかに育ってほしい」という思いを持つ仲間たちとともに活動が始まりました。

活動するメンバーたちが、自分たちの体験や他地域の課題の例を参考にしながら、型にはまらぬ手作りの支援を作り上げてきました。

子ども食堂のようす(後藤さん提供写真)

子ども食堂の活動が盛んになり始めた10年ほど前に「秋田でも必要としている子どもがいるはず」と、当時行っていた、市内各地区の公民館の学習支援にきていた150人ほどの中学生を対象に食事を提供するようになったのが、今活動を行う子ども食堂の原型です。

他にも産前産後ケアの運営やイベントの設営、18歳までの子どもが気軽に相談できる専用電話の運営など、「知恵を持ち寄って、必要とされることならなんでもやる」という姿勢で子どもの支援に日々向き合ってきました。

子育てに必要なのは「ねぎらい」と「ごほうび」

子育ては生きる学びになることが多く楽しさもある反面、体力的にも精神的にも周りが思うより壮絶なもの。だからこそ、子育てをする人にとって「ねぎらい」と「ごほうび」の時間が必要だと後藤さんは話します。

2022年度には「子育て世帯宿泊ケア」のモニターとして、乳幼児の育児者とその家族に仙北市田沢湖にあるホテルに宿泊してもらい、スタッフが赤ちゃんや子どもの面倒をみるという取り組みを行ったことがあります。参加者には普段味わうことのできないゆっくりとした「ごほうびの時間」を味わってもらったといいます。

託児のようす(後藤さん提供写真)

また、その一環として、「子育て世代マッサージケア」や「仙北こどもフェスタ」などのイベントも行い、子育てに「ねぎらい」と「ごほうび」をあげる時間を持ちました。

「仙北こどもフェスタ」お年玉さかな釣りの場面(後藤さん提供写真)
「仙北こどもフェスタ」ヒーローショーの場面(後藤さん提供写真)

「こんなにゆっくりできたのは何年ぶりだろう」「赤ちゃんをみてもらっている間、上の子とじっくり向き合って過ごせた」「マッサージを受けながら、普段がんばっていることをほめてもらえたので、子育てを頑張る気持ちになれた」などの声が寄せられました。

子育て世代マッサージケアのようす(後藤さん提供写真)

この取り組みでは、日々子どもに向き合う親のリフレッシュだけでなく、家族の絆を深め、新たな気持ちで子育てに向き合えるとても良いきっかけを提供することができました。

子育てに関わる「人の充実度」で支援の質が変わる

「子育て支援の質を上げるためには、関わる人の充実度が大切」と後藤さんは語します。

「社会全体が子育ての大変さを理解していないのが問題なんです。多くの人がもっと子育てに関心を持ち関わり、ともに支えることで、社会全体は変わっていく。そのきっかけを作るのがわたしの使命」

後藤さんが活動を始めた当初から関わってきたメンバーの中でも高齢による体力の低下を理由に離れられる人も増えてきたそうです。

「活動に取り組む人が増えて、その輪が広がれば子育て環境はより豊かになり、質も上がります。未来に向かう新たな輪を広げるために、当団体の活動に興味を持って参加してほしい」

今後のイベントの掲示板(筆者撮影写真)

秋田は広々とした環境で子育てをするのには最適な場所です。

あきた子どもネットワークの拠点である秋田児童会館「みらいあ」では、親子でイベントに参加するだけでなく、得意なことや趣味を生かして子どもたちにお絵描きなどを教えるボランティアとしても活動できます。

また、中学生や高校生も、ボランティアとして参加したり、遊びに来る場として利用することができ、幅広い世代が集える場所です。

「みらいあ」二階の木育ルーム(筆者撮影写真)
「みらいあ」二階図書室内の小上がりスペース(筆者撮影写真)

「旅行や里帰り出産などで秋田に来たら、『みらいあ』で子どもと一緒に遊んでみてほしい。広くて混雑していないからゆっくりと一日過ごすことができます」

今後は、旅行を組み合わせた宿泊つきの子育て支援のプランをまたやりたいと画策中だという後藤さん。

「まずは秋田を訪れてみてください。豊かな自然や地域の温かい交流の中で、子どもたちがのびのびと育つ環境を感じられるはずです。そして、自分が得意なことや知恵を持ち寄ることで、さらにみんなが支え合える社会を一緒に作っていきましょう」

関わりしろ

子どもの支援活動への参加
子どもネットワークが開催する子ども向けワークショップや、子ども食堂の運営サポートなど、子どもたちとの遊びの場を作る活動にボランティアとして参加する

学生ボランティアとしての参加
中高生や大学生が、学びながらボランティア活動に関わり、子どもたちや地域社会とつながる経験を得る

専門スキルを生かした支援
専門的な知識やスキル_生かして、個別相談や専門講座を提供したり、子育てアドバイスやスキルをシェアする講座や勉強会を提供する

お問い合わせ

住所:〒010-0955 秋田県秋田市山王中島町1-2
TEL:018-865-1161 FAX:018-865-1110
特定非営利活動法人あきた子どもネット事務局(秋田県児童会館内)
ホームページ:https://www.akita-kodomo.net/

「あきたの物語(https://kankei.a-iju.jp/)」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

天野崇子

天野崇子

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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