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人の力を信じ、広島から世界へ。マツダの風土変革「ブループリント」の挑戦【広島県府中町】

3 min
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デザインから技術まで、“クルマづくり”にこだわり抜く企業として知られるマツダ株式会社。マツダは今、広島の街から世界へ、“風土”で人と街を元気にしていく会社を目指しています。

いま、この会社が「次の成長のエンジン」として見つめているのは、技術でも拠点でもなく「人の力」です。

国内外あわせて約4万9千人が働く会社を、「人の力」で次の成長をするための土台をつくるのが、人事本部が進める風土変革プログラム「ブループリント」。2023年に始まったこの取り組みを推し進める中心人物が、人事本部で風土変革を担当する塩見 洋(ひろし)さんです。

財務、海外事業、経営計画――。マツダの変化の最前線で組織をけん引してきた塩見さんに、これまでのキャリアと「ブループリント」でマツダが目指す未来について伺いました。

マツダ株式会社 人事本部 BLUEPRINTアンバサダー 塩見洋さん


人の能力を最大化する“土台”づくりで、風土が大きく変わる

「マツダでは『価値創造の源泉はひとの力』という価値観を大事にしています。人の能力を最大限に発揮できれば、ビジネスも自然と伸びていく。その“土台”づくりが、いまの人事本部の大きな役割です」

このように語る塩見さんが推進する人事本部では、約2年半前から「ブループリント」と呼ばれる風土変革の活動を進めています。背景の一つにあったのは、従業員意識調査の厳しい結果でした。経営理念への共感度や職場への満足度、意見交換のしやすさといった項目で、他社の平均値よりも低いスコアが出てしまったのです。

「数字だけ見ていても原因がわからない。根っこには、部門間や階層間の“対話不足”があると感じました」

そこで人事本部は、「人の能力を最大化するための風土をつくる」ことを目的に掲げ、全社的な風土変革プログラムとしてブループリントを立ち上げました。所属や役職の垣根を超え、「マツダの風土とは何か」などさまざまなテーマに関して意見を交わすもので、現在は、技能系従業員を含む約23,000人すべての従業員がこのプログラムに参加。自分たちの職場の風土を見つめ直す対話の場が広がっています。


変革真っただ中のマツダに飛び込んで気づいた「人の力」を発揮する重要性

1997年、塩見さんは新卒でマツダに入社しました。バブル崩壊後の「先行きが見えない時代」に、あえて大きな変化の渦中にあった自動車メーカーを選びました。

「当時のマツダはフォードの傘下に入り、まさに変革の真っただ中でした。伝統を重んじる人と、新しいやり方を持ち込む人。その間で議論が起きている会社は、きっと面白いだろうと思ったんです」

入社後は財務本部で約9年間、経営企画やIT関連の仕事を経験したのち、成長市場として注力していた中国事業へ。製造領域の財務やITを担当し、フォードと現地企業、マツダの3社合弁での工場立ち上げに携わりました。

「国も文化も違う相手とどう信頼関係をつくるか。そこで学んだ“対話の難しさと大切さ”は、今の風土変革の仕事にも直結しています」

帰任後は、国内他社との協業プロジェクトや、ロシア・ウラジオストクでの工場建設、スカイアクティブ技術(マツダの自動車技術の総称)を柱とした経営計画づくりなどにも参画しました。

「正直なところ、当時は『計画さえしっかりしていれば必ず結果が出る』と思っていたんです。でも現実はそううまくいかない。そこでようやく、『人の力を最大限に生かしきれていないのでは』と気づき始めました」


「対話ができていない」。見えない壁から始まったブループリント

経営企画本部の本部長を務めていた塩見さんが直面したのが、「現場から声が上がってこない」という現実でした。開発の手戻り、量産立ち上げの遅れ、想定どおりにいかないプロジェクト。計画と現実の間にギャップが生まれても、現場の実情が上まで届かず、原因が分からなかったのです。

「部門同士、上司と部下の間で対話が足りていない。“全社員を同じ距離でつなげる”必要があると感じました」

そんな折、代表取締役専務執行役員兼CFO(最高財務責任者)に着任したジェフリー・エイチ・ガイトン氏から、企業風土改革の司令塔となるよう要請を受けます。ガイトン氏はかつて欧州法人で変革プログラム「ブループリント」を実施し、その効果を肌で感じていました。だからこそ、日本でもこれを導入すべきだと判断したのです。

2023年10月、塩見さんはこの「ブループリント」を徹底的に学ぶべく、13人の社員とともにオランダへ渡りました。プログラムを主催する現地企業で一カ月間の集中研修を受け、従業員の意識改革と企業文化醸成のためのメソッドを習得。こうして、日本における本格展開の準備が整ったのです。

「ブループリントは、誰か特別な人が引っ張るプロジェクトではありません。マツダ全社員の“小さな挑戦”の積み重ねだと思っています」

ブループリントは、“全社員を同じ距離でつなげる”プロジェクトだからこそ、全社員が自分ごととして参加することができる。結果として、組織全体の風土改革につながるのです。

プログラム後には、人前で話すことが苦手だった社員が、何度かの対話を重ねるうちに表情を変え、自分の言葉で職場の未来を語り始める姿が見られるようになりました。定年を控えたベテラン社員が、「最近、表情が明るくなったね」と家族に声をかけられたというエピソードも。社内では、社員同士が活発にコミュニケーションをとる姿がみられるようになりました。

ブループリントプログラム実施の様子

「広島から世界へ、“風土”で人と街を元気にしていく会社」を目指し

最後に、マツダ全体としてどのような未来を描いているのかを伺うと、塩見さんは少し笑顔を見せながら、こう語ってくれました。

「『マツダって、いい雰囲気の会社だよね』と周りの方に言っていただけるようになりたいんです。いい車をつくる会社であることは前提として、その背景にある“いい風土の会社”としても選ばれる存在にしていきたい」

「マツダで働く人たちが元気になれば、その人たちと関わる地域や企業もきっと元気になるはずです。広島から世界へ、“風土”で人と街を元気にしていく会社になれたらうれしいですね」

人の能力の最大化を掲げたブループリントの挑戦は、まだ始まったばかりです。一人ひとりの小さな対話が積み重なった先に、どんな「いい雰囲気の会社」が形づくられていくのか。これからのマツダに、ますます注目が集まりそうです。

※写真はすべてマツダ株式会社提供


一番印象に残った言葉:
「価値を生み出す源泉は人です。人の力を最大限に生かせれば、会社も地域ももっと元気になれると信じています」

会社概要

会社名:マツダ株式会社
取材対象者:人事本部 BLUEPRINTアンバサダー 塩見洋さん
本店所在地:広島県安芸郡府中町新地3番1号 
事業内容: 乗用車の製造、乗用車・トラックの販売など
会社創立:1920年1月30日

木場晏門

木場晏門

神奈川県鎌倉市生まれ藤沢市育ち、香川県三豊市在住。コロナ禍に2年間アドレスホッピングした後、四国瀬戸内へ移住。webマーケティングを本業とする傍らで、トレーニングジムのオープン準備中。

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