「人を守る」が事業の軸、普段は硬いのに、転んだ時だけ柔らかくなる魔法の床材で転倒骨折から人々を守る<株式会社 Magic Shields 下村 明司さん>【静岡県浜松市】

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高齢者の転倒による骨折は数多く、高齢者の3人に1人が、年間1回以上は転ぶと言われています。また、大腿(だいたい)骨を骨折すると、その後歩けなくなる人が6割いたり、そのまま寝たきりになったり認知症が進行したりというリスクを伴い、本人にとっても、家族や社会にとっても大きな負担となります。株式会社Magic Shields(マジックシールズ)は、骨折リスクを低減する「転んだ時だけ柔らかい床、ころやわ」の開発・製造・販売を通じて、高齢者の転倒による大腿骨骨折という課題の解決と、国が負担する医療費・介護費、及びご家族の介護負担の削減に向けた取り組みを行っています。

今回は代表の下村明司(しもむら ひろし)さんにマジックシールズの設立背景や目指す未来について伺いました。

身近な人の死が、事故から人を守ることで起業する原動力に

下村さんはいわゆる理系少年で、車やバイクやロボット好きが高じて、機械工学の道に進み、大学院でもロボットの研究室を選んで進学しました。就職先をヤマハ発動機株式会社に選んだのも、バイクが好きで、自分が乗りたいバイクを作りたいというところからです。

事故が多い業界のため、下村さんは仕事でもプライベートでも、身近な人や友人が立て続けに死亡事故や再起不能になるという経験をしました。そのことをきっかけに、ニュースで目にするような事故や事件、災害などを防ぐことに関心が高まり、「人を守る」というコンセプトで様々な発明をしてきました。

ただ、プロトタイプを作るだけでは、実際に人を救うことが出来ず、材料にもお金がかかることから、「ちゃんとビジネスにしないと、世界の人を守ることはできない」ということに気付き、MBA(経営学修士)の資格を取る学校に進みました。

そこで後に共同創業者となる、理学療法士として転倒骨折の患者さんに向き合う杉浦太紀(すぎうら たいき)さんとの出会いと、下村さんご自身が、祖母の転倒骨折をきっかけに亡くしたこともあって、この社会課題を何とかしたいと、起業を決断しました。

社名になっているMagic Shieldsは、「魔法の盾という意味です」と下村さんは話します。世界には事故や災害、暴力といった様々なことがあるけれど、そういうものから人々を守れる盾になりたいという思いで名付けられました。

シールドに”s”が付いて複数形のシールズになっているのは、まず第一弾が「ころやわ」という製品をリリースしますが、その後も次々と新しい製品を生み出していくという思いからだそうです。

普段は硬いのに、転んだ時だけ柔らかくなる、相反するものを両立させた魔法のフロア「ころやわ」とは

「ころやわ」の開発・製造・販売を中心に高齢者の転倒を防ぐ取り組みを行うマジックシールズ。

「ころやわ」という床材の内部には、国際特許を取得している、可変剛性構造体(メカニカル・メタマテリアル)という、自然界にはない特性を実現する人工材料が使用されています。

歩行時には、フローリングと同等の安定性を保ち、車いす移動や歩行器、杖をついての移動でも凹まないのに、転倒などの大きな負荷が掛かった時だけ潰れる構造となっていることから、転倒時には衝撃を低減することが可能になっています。

「ころやわ」は、これまで両立が困難とされていた「歩行快適性」と「衝撃吸収性」という2つの性質を合わせ持つ、今までになかった構造です。寝たきりにつながる大腿骨の骨折を防ぎ、転んだ時にだけ凹んで衝撃を吸収します。

安定して歩行できるだけでなく、車いすやベッドなど重量のあるものを載せても沈み込みがないため、600以上の医療機関・福祉施設で導入されています。※2024年5月1日時点

「ころやわ」の開発背景に関して下村さんは「これまでの世の中の流れとしては、人手を用い『転ばせない、一人で歩かせない』ことに力が注がれてきました。しかし見守りや付き添いができる看護師や介護士、同居の家族は不足しているなど完全に転倒を防ぐことは難しいのが実情です。また、『転ばせない、一人で歩かせない』ことを優先するあまり、認知症など他の病気の進行や、心身が衰弱していくという負の連鎖が発生し、悪循環となっていました。そこで私たちは、 『すべての人が骨折を気にすることなく、自分の意思で自由に動ける』社会を実現することで悪循環を断ち切り、世界中で『大腿骨骨折が原因で、寝たきりになる人をゼロにする』ことを目指しています」と話します。

センサーの導入で「転ばない」世の中へ

提供元「Get in the Ring Foundation」

現在は「ころやわ」を中心に転んでも骨折を防げる商品を提供するマジックシールズですが、センサーを入れた製品も発売を開始し、そもそも転ばないようにすることを目指す取り組みも行っています。

「私たちのセンサー入りの新素材を世界中の床に張り巡らせ、データを積み上げていく。そして、多くの人を守っていきたいです」と下村さんは胸を張ります。 

マジックシールズと下村さんの「多くの人を守る」ための挑戦はこれからも続きます。

情報

株式会社 Magic Shields 
https://www.magicshields.co.jp

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市来聡

市来聡

2023年3月に、次の仕事を決めないまま勤務先を退職。さらに、常識やこうであるべきといった、自分を押さえ付けるしがらみを、全て取っ払った時に顕在化した、「沖縄に住んでみたい」を叶えるため、家族と共に移住。

子どもの時は親が決めた場所、大人になってからは、家賃の手頃感や自身の勤務先に近い場所といった基準で、住む家を決めてきたが、今の住まいは、人生で初めてと言っても過言ではないくらい、自分の「好き」を軸に決めた。

そのおかげで、満足度の高い状態が続き、地域への思い入れが強まり、他所から来た自分たちを、温かく受け入れてもらってる感覚を持っている。そしてその感謝の気持ちを少しでも、地域や地域の人たちに循環したいという思いが芽生えている。

ご縁があって、移住して間もなく、夫婦でラジオパーソナリティをする機会をもらい、現在も放送を続けている。地縁も血縁もなく沖縄に来た自分たちは、少しでも知り合いを増やしたい思いもあり、地域に住まう方々に、ゲストとしてラジオに出演してもらい、出演後はそのゲストに次のゲストを紹介してもらう、笑っていいともの「友だちの輪」を真似したやり方で、放送を続けている。

パーソナリティをやっていて感じることは、もっとみんなに知ってもらいたい、個性的で魅力的な市民がたくさんいること。反面、ゲストが取り組まれている活動を、ラジオの放送時間内に語り尽くせなかったり、心に響く内容も、音声の放送では形として残らず流れていってしまうため、もどかしさを感じることも経験。
そこで、文字情報として残していくことが、いつでもどこでも何度でも、その魅力を味わってもらえる機会になるのではないかと考え、ハツレポーターにチャレンジすることを決断。

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