
株式会社シーズ 代表取締役
Kenji Suzuki
鈴木 憲司氏
印刷工程における製版を専門に扱う製版会社として、2000年に立ち上げられた仙台の株式会社シーズ。その後、印刷のデジタル化にともない、上流から下流まで印刷工程を一貫して対応する総合印刷会社へとメイン事業をシフトさせました。現在は、ポップコーンやナッツの製造といった食品事業にまで大きく事業の幅を拡げています。同社代表の鈴木 憲司(すずき けんじ)さんに、創業からの事業の変遷や経緯について、お話を伺いました。
製版事業から総合印刷事業へシフト。時代に対応し、事業の幅を拡大し続ける

会社創業までの軌跡を教えてください。
宮城県で生まれ育って、高校を卒業した後、地元の印刷会社に就職。そこで、色校正を中心とした製版業務を約4年、印刷業務を約2年と、計6年ほど印刷現場の業務に従事しました。
その後、営業の仕事にチャレンジしたいという思いが芽生えたことで、薬品会社に転職。どうせするなら、徹底的に鍛えたいと思い、営業の中でも一番大変だといわれる家庭用置き薬の営業として、2年ほど働きました。
その後、作業服の会社へと転職した直後、印刷の製版事業を専門的にグループ展開している会社から「仙台にも会社を立ち上げるから一緒にやらないか」とお声をかけていただき、10年勤めました。のちに社長や、千葉にあったグループ本社の取締役も任され、最後の2年間は自宅の東京から千葉、仙台、静岡、札幌などを常に行ったり来たりしているような生活でした。
その後、2000年に独立して仙台で株式会社シーズを創業しました。
創業から現在までの事業の歩みについて、お聞かせください。
色校正と刷版を中心にした製版事業の会社としてシーズを立ち上げ、開業時から順調に売上を伸ばしていました。しかし、時代の変化によって印刷業界のデジタル化が進むと、業界全体の受注量が減少。当社も製版のみでは厳しいと考え、2004年にはコンピューターで作成したデータから直接「印刷版」を作るCTP機を導入しました。以前よりも工程が減ったほか、コスト削減にもつながり、メリットは非常に大きかったです。
これを機に、データの作成から印刷までをトータルで担える体制を構築し、本格的に印刷業に進出。ライブドアショック、リーマンショックなどの市場の混乱にも影響を受けましたが、大変だったのは2011年の東日本大震災の時ですね。社屋も損傷したことから機械が正常に稼働するまで2週間かかりました。稼働できるようになっても3カ月間は売上が前年比50%以下でした。
そんな最中、2012年にポップコーンの製造卸販売を始めました。試行錯誤を繰り返し、新しい味を次々と開発して商品力を強化。現在では会社の大きな柱へと成長しました。また、2024年には本格的にWeb事業も始めました。
新味のポップコーンを次々と開発し、食品卸製造販売が新たな柱へと成長

ポップコーン製造はどうして始められたのでしょうか?
過去にまちのイベント出店に誘われ、ポップコーンを販売していたことがきっかけです。年に2回、春秋2日間のイベントでしたが、次第に出店の規模も大きくなっていったので、マシンの数を増やして出店していました。
そんなところに、ある方から「ずんだポップコーンを作れないか?」と相談を受けたんです。それで、食品メーカーの協力を得て、実現させたところ、非常に好評を博しました。それをきっかけに、いろいろな味の商品開発を始め、各地の名産品にちなんだ味などのポップコーンを自治体や施設、道の駅などで導入していただけるようになっていきました。
変わったところでは、ホヤ味やずんだシェーク味、チョコミント味なども開発していまして、現時点で77種類あります。ありがたいことに現在は受注量に対して、生産が追いつかなくなってきているので、今後の生産体制の強化が目下の課題となっていますね。

ポップコーンと同時に、ナッツの卸販売もされているんですね。
燻製職人の友人が飲み会の度に持ってきてくれていたナッツが非常においしくて、せっかくだから販売させてもらおうと、2020年から卸販売を始めました。
多賀城跡の桜の木の廃材を燻して作るナッツを「桜チップの燻製ミックスナッツ極」と名付けて販売したところ、非常に好評で、毎年売上を伸ばしており、すでに3万食以上販売しました。最近では当社オリジナルだけでなく、ポップコーン同様にOEM(相手先ブランドによる生産)での提供もしており、お客さまオリジナルラベルや味の開発なども手がけています。さまざまな自治体や事業所や販売所とコラボ展開などしており、こちらもまだまだ事業を伸ばしていく考えです。
苦しい時でも常に明るい会社で。自分の力を出し惜しみしない
あらためて、現在の事業内容を教えてください。
メイン事業である印刷関連事業にくわえて、ディスプレイ看板事業、イベント企画・タレント派遣事業、ポップコーン・ナッツの食品製造卸販売事業、Web事業を展開しています。
食品に関しては、生産キャパシティなどの課題はありますがまだまだ伸び代があると思っていますし、引き続き注力していく考えです。
また、2024年から本格的に始めたWeb事業でも、SNSなどを活用して自社の食品事業の受注を増やしており、それらの実績などもうまく使いながら、次の柱へと成長させていきたいと考えています。

会社を運営していくうえで大切にされていることがありますか?
「正しいことより明るいこと」という言葉を胸にとどめています。正義を求めるばかりに会社の空気を悪くするくらいなら、会社の空気を明るくしようと努めています。たとえ、経営が苦しい時であっても、社内の明るさを失わないようにはしたいですね。
また、柔道の創始者である嘉納治五郎さんの言葉「盡己(じんき/己を尽くす)」という言葉に共感して会社の壁にも貼っています。人は、自分の力を出し惜しみすると、成長がそこで止まります。今持っているスキルや経験を出し尽くすことが、自分の器を大きくし、さらに大きな仕事にも取り組めるようにもなります。一杯一杯に自分の持てる力を出していくことが、お客さまの喜びにつながると考えています。
今後、どのようなクリエイターと一緒に仕事をしたいと考えていますか?
数年前に子どもの将来なりたい職業にYouTuberがランクインし、話題になったことがありましたが、一時的に注目を集めることはできても、継続的にできている人は本当に一握りの人だけだと、世間も気づき始めたような気がしています。クリエイティブというと言葉の響きが格好いいですが、毎日動画をアップしていくのは本当に大変なことです。表で見ることのできる動画はよく見えても、撮影して、編集してという表には見えない苦労があります。裏側を突き詰められるクリエイターと、ぜひ一緒に仕事をしていきたいですね。
取材日:2025年7月23日
株式会社シーズ
- 代表者名:鈴木 憲司
- 設立年月:2000年6月
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:印刷・製版・デザイン・看板・ディスプレイ・イベント・企画・タレント派遣・食品製造卸販売
- 所在地:〒984-0015 宮城県仙台市若林区卸町2-6-5
- URL:https://seeds-2000.jp/
- お問い合わせ先:022-782-6916
この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。




