香川県三豊(みとよ)市仁尾(にお)町で長年親しまれてきた伝統行事「仁尾八朔(はっさく)人形まつり」が、数年ぶりに復活しました。運営を担ってきた世代の高齢化により一度は途絶えていましたが、地域の有志団体が中心となり、再び開催にこぎつけました。秋に行われる「ひな祭り」として全国的にも珍しいこの行事は、地域の文化を次の世代へつなぐ象徴として新たな一歩を踏み出しています。

秋に行われる珍しい「ひな祭り」
仁尾八朔人形まつりは、旧暦8月1日(八朔)にあたる時期に行われる伝統行事で、子どもの健やかな成長を願って始まったとされています。江戸時代に起源を持つと伝えられており、地元では400年以上続く行事として知られています。かつては商店や民家の軒先にひな人形や物語を模した人形を飾り、来場者が町を歩きながら巡るスタンプラリー形式で親しまれてきました。
ひな祭りといえば春の行事という印象が強いですが、仁尾町では秋に行われる点が特徴です。稲の収穫前後に合わせて感謝と祈りを込める地域風習が根付き、季節の節目に人々が町を歩いて祝う「秋のひな祭り」として受け継がれてきました。全国的にも数少ない存在であり、地域の暮らしと深く結びついた行事です。
高齢化で一度消滅、そして復活へ
この祭りは近年、運営委員会の高齢化により継続が難しくなり、一時的に姿を消しました。人手不足や準備の負担が重なり、資金の確保も難しくなっていたと聞きます。地域では「なくなるのは惜しい」という声がありながらも、後継世代の不在によって中止を余儀なくされたといいます。
そうした中、2025年に有志団体「仁尾八朔人形まつり守りびと」が立ち上がり、行事を再び開催しました。地域の若手や商工業者らが中心となり、以前より規模を縮小しながらも賀茂神社を中心に人形展示を行いました。
私は当日現地に行くことはできませんでしたが、復活の知らせに強い感動を覚えました。高齢化によって消えた文化をもう一度形にすることは容易ではありません。どのように行うかも分からない中で、資金も人も限られています。それでも続けようとした人たちの意思が、この復活を支えています。
仁尾八朔人形まつりは、地域の人々が協力し合いながら文化をつなぐ、その象徴として今後も続いていくことでしょう。




