蒸気機関車が空を飛んでお引越し?!(前編)【山口県美祢市】

3 min 15 views

山口県美祢(みね)市にて2025(令和7)年10月12日(日)、C58形機関車が空を飛んで引越しをした。

これまで設置されていた市立図書館前から、川沿いの桜公園側への移動だ。セレモニーが終わりカウントダウンののち、クレーン車が下の車体部分(車輪部)を持ちあげ、ゆっくりとトレーラーへ載せる。よくもこんな重いものを持ち上げられるものだ、と感心する。

トレーラーの荷台に車体の上部分が載せられ、ゆっくりと移動していく。そして、車体の下の部分も移動する。

設置予定地で、今度は車体の下部分から線路に載せる。最後に車体の上部分を載せて、作業員の方々が何度も確かめながら、ゆっくりと降ろしていく。

作業員からOKが出ると、拍手が沸き起こり、引越し作業は終わった。一連の作業は一生に一度見られるかどうか、そんな貴重な瞬間に立ち会った。

今回、引っ越し作業の様子を写真を中心に追った。

記録している写真の点数が多いため、本記事は前編・後編の二回に分けてお届けする。

引越し予定地

蒸気機関車C58引越し前夜

引越し前に最後の勇姿をカメラにおさめた

C58形機関車は中型のなかで代表的な機関車だ。美祢線の開通にともない、旅客・石炭・石灰石運搬に活躍した。

美祢駅駅舎 2024(令和6)年3月23日に美祢線全線開通100周年を迎えた

現在の最寄り駅は「美祢駅」。駅舎の中には、100周年を記念したパネルや、製作物が置かれており、駅に降り立つ人々を迎えている。

引越し当日

会場にきてみると、すでに多くの鉄道ファンや報道陣、近くの住人などが集まっており、その珍しい光景をカメラに収めようと、思い思いの場所に陣取っている。

私も割と近くにスタンバイ

この光景がみられるのも最後かと思うと、すごい瞬間にいるんだと改めて感じる。セレモニーも行われているが、早く引越しする時間にならないかと、気分は校長先生の長い話を聞いている学生時代に戻ったみたいだった。

まずは台車部分と上部を切り離し、上部をトラックに載せて移動する。次に台車部分も同じように移動する。

セレモニーが終わりカウントダウンは始まった。

「……3・2・1・0!」

0に近づくに連れ、みんなの期待が最高潮に達して、自分も叫んでいた。

作業員によって最後の部品が切り離されていく。

バーナーを使って焼き切っているのか、時おり火花が激しく散っている。あんなところにも、接続されている部品があるんだ、と感心しながら見守る。

少しずつ、本当に少しずつクレーンで持ち上げていく。徐々に浮いていくのが分かる。

バランスよく上げるために、クレーンを2台使っている。ワイヤーを巻き上げるスピードもタイミングが合わないとバランスが崩れるため、作業員の慎重さ、そして息を合わせて進める力が求められる。

筒のような上部がだいぶ持ち上げられてきた。向こう側のクレーン車と車体を運ぶトラックも見えてきた。

ここから向きを変えていく。まずは先頭部分をゆっくり回転させていく。

慎重に慎重に移動するのを、ただただ見守る。

先頭部分がだいぶ向きを変えていく。

先頭部分が向きを変え終わったので、次はゆっくりと前進させて、トラックの台座に載せる作業だ。

ここでも作業員が息を合わせて、ゆっくりゆっくりと車体を運ぶ。

前進が終わったので、ここからは車体をゆっくりと下降させていく。2台のトラックのワイヤーモーター音を聞きながら、見守ることしかできない。

ゆっくりと車体がトラックの台座に載っていく。しっかりと載ったかどうか、作業員が車体の下にもぐり込んで目視する。

「車体を吊って移動させて、トラックの台座に載せる」

文字にするとこれだけなのだが、ここまでの作業時間は約30分だ。いかに慎重に安全に作業しているかが分かる。

次は車体の下部分、車輪がついている方を移動させていく。吊り上げるために、ワイヤーなどでしっかりと作業員が固定する。

いざ、移動開始

トラックの台座に載った車体が、いよいよ移動開始。機関車の陸上輸送を見るという、これまためったにない機会で、夢中でシャッターを切った。

線路を走る蒸気機関車よりも近くを通り、巨大な鉄の牛が目の前を通り過ぎるような感覚だった。

車体下部の移動

車体上部を見送った後は、車体下部がいよいよ移動を開始する。上部と同じようにワイヤーなどで吊り上げる。

ワイヤーなどが固定されているかを作業員が確認していく。

クレーンを操作する作業員の息を合わせて、車体をゆっくりと釣り上げていく。

先ほどと同じように、先頭部分から方向転換していく。

ゆっくりとクレーンを転回して、トレーラーの台座へと移動させる。移動が終わったら、こちらもトレーラーと共に移動していく。

車体下部だけなので、かなりすっきりとした印象を受けるが、重量は相当なものだと思う。

車体下部だけの移動というのも、なかなかお目にかかれない光景である。

車体が通り過ぎるのはあっという間だが、こうして写真でみていくと貴重なシーンに立ち会っているのが実感できる。

続いてクレーン車も移動する。今度はトラックの台座から、降ろす作業が待っている。行進曲でも聞こえてきそうな勇敢な姿だ。

車体の移動を終えて、ポツンと貨車と線路だけが残った。こちらは後日に移動するという。

その姿はとても寂しそうだが、長年の役目をひとつ終えたという誇らしさも感じる。

後編へ続く:https://thelocality.net/sl-soratobuhikkoshi-2/

※写真は全て筆者撮影

情報

場所:美祢市役所
住所:〒759-2292 山口県美祢市大嶺町東分326-1
電話番号:0837-52-1110

久田一彰

久田一彰

福岡県福岡市出身。
取材を通じて、そこにあるヒト・モノの魅力・ストーリーをお伝えします。

1 件のコメント

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です