蒸気機関車が空を飛んでお引越し?!(後編)【山口県美祢市】

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山口県美祢市にて2025(令和7)年10月12日(日)、C58形機関車が空を飛んで引越しをした。

これまで設置されていた市立図書館前から、川沿いの桜公園側への移動だ。セレモニーが終わりカウントダウンののち、クレーン車が下の車体部分(車輪部)を持ちあげ、ゆっくりとトレーラーへ載せる。よくもこんな重いものを持ち上げられるものだ、と感心する。

トレーラーの荷台に車体の上部分が載せられ、ゆっくりと移動していく。そして、車体の下の部分も移動する。

設置予定地で、今度は車体の下部分から線路に載せる。最後に車体の上部分を載せて、作業員の方々が何度も確かめながら、ゆっくりと降ろしていく。

作業員からOKが出ると、拍手が沸き起こり、引越し作業は終わった。一連の作業は一生に一度見られるかどうか、そんな貴重な瞬間に立ち会った。

今回、引っ越し作業の様子を写真を中心に追った。

記録している写真の点数が多いため、本記事は前編・後編の二回に分けてお届けする。
※前編はこちらhttps://thelocality.net/sl-soratobuhikkoshi-1/

いよいよ移動も終わり、今度は新居ともいうべき線路の上に設置する。まずは車輪がついている車体下部分から先に設置する。

ここでの見どころは、きちんと線路の上に車輪をかませることができるかどうかだ。

鉄道模型のNゲージで遊んだことのある人は分かるかもしれないが、模型がうまく線路上に載らないと脱線したまま走らせてしまうことになる。今回は設置だけだが、安全を保つ上では最重要事項だ。

吊るすためのワイヤーがしっかりと固定されているか、何度も確認している。

2台のクレーン車のモーター音と共に、ゆっくりと車体が上がっていく。これもまた作業員の息の合った作業が求められる。

持ち上がったら、今度は平行移動させる。クレーンがゆっくりと回頭していく。うまくいきますようにと、祈るような気持ちで見守る。

線路の上に移動させ、一旦止めて揺れがおさまるまで待つ。少しずつ車体を降ろし、何度も止めてはちゃんと真上に来ているのか、確認作業が繰り返される。

少しずつ降ろされていき、もう間もなく線路に着地する。

「よし、もうちょい」。最後までミリ単位のズレを修正させながら、慎重に降ろしていく。

無事に設置できたようで、確認していた作業員からOKが出る。ホッと一息の瞬間。ワイヤーを外し、次は車体上部分を接続させる作業へ移行する。

最後は車体上部分を移動

いよいよ車体上部を移動させて、上下を接続させる。作業もいよいよ大詰めだ。

トラックを移動させて、設置場所ギリギリにまで近づける。

ワイヤーがしっかりと固定されているか、何度も確認をしている。

しっかりと固定されていることを確認し、上に吊り上げる。何度見ても息をのむ瞬間だ。

車体をバックで移動させていき、予定の位置まできたら向きを変える。車のバック駐車みたいな感じだが、大きさもスピードも違う。ゆっくりと安全に安全に移動する。

少しずつ回転させながら、前後の間隔も調整していく。もう間もなく真上にくる。

真上にきたら、ゆっくりと降ろしていく。これもまた作業員のワイヤーを降ろすタイミングがピッタリでないとできない作業だ。

日もだいぶ落ちてきて、気温も下がってきた。それにつれて風も出てきたので、車体が少し揺れている。これを微調整しながら、ゆっくりと降ろしていく。

作業も大詰めになり、もう間もなくといったところか。車体の接続部分を見ながら、止めては下げ、止めては下げを繰り返している。

設置完了!

見ていたこっちもふーっと一息ついた。

カウントダウンしてから、約2時間20分ほどかけて、作業がここまで完了した。長い道のりだった。とうとう終了かと思いきや?

パカっと、そこが開くんかい!

思わず突っ込みそうになったけど、機関車の鼻のような場所、「煙室扉」がパカっと開いた。中の「煙室」に入ってメンテナンスのために入れるようになっているようだ。

作業員も何人かで、中から外からのぞいている。

なにやらバールのようなもので、グッと押し込んでいるようす。

反対側もグイッと。

どうやら中の調整が終わったようだ。中はもちろん空っぽだ。

ワイヤーも外され、いよいよ作業終了だ。作業開始から約3時間という長丁場。事故もなく、壮大な引越し作業は完了した。これからは復元に向けて徐々に作業をし、またみんなの前で新たな姿を披露してくれるだろう。

機関車の活躍を支えた石炭

会場ではこんなものも展示されていた。「無煙炭(むえんたん)」という。煙がほとんどでない石炭だ。石炭は機関車のガソリンともいうべき燃料だ。かつては美祢市内から採掘され、各地に出荷されていた。

どことなく丸みをおびていて、かわいらしい姿だ。

火をつけても煙の出る量は少ない。貴重なものを見せていただいた。

機関車は愛されて、次世代へ受けつがれていく

今回、機関車が空を飛んで引越しするという、人生で一度見られるかどうか、という歴史的瞬間に立ち会えたのは、鉄道ファンとしてもうれしくもあり、多くの方が見守ってくれた機関車は本当に愛されているんだな、と思った。

かつてこの街を機関車が走り、人や石炭・物資を運んでにぎわったが、今度は桜のある川のほとりで静かに人々を見守ってくれるだろう。

※写真は全て筆者撮影

情報

場所:美祢市役所
住所〒759-2292 山口県美祢市大嶺町東分326-1
電話番号:0837-52-1110

久田一彰

久田一彰

福岡県福岡市出身。
取材を通じて、そこにあるヒト・モノの魅力・ストーリーをお伝えします。

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