
筆者が初めて秋田県湯沢市秋ノ宮地区を訪れたのは2025年の夏。秋田県の地域づくりワークキャンプに参加したのがきっかけです。「自分たちが楽しみながらこの地域を守っていきたい」と笑顔で話す秋ノ宮地区に住む方々、またそこに関係人口として関わり続ける方々の温かさと、その中にある思いの熱さに心打たれ、再び帰ってきました。
山形県・宮城県との境、秋田県の最南端に位置する秋ノ宮地区。ここは、現在の高齢化率が50%、10年後には65%を超える見込みとされている地域です。約1200人の人口のうちの一人で、訪れる人を温かく迎え入れ、人と人とのつながりを大切にしている菅洋子さん。地域のお母さん方の中心として多方面の活動に参加し、秋ノ宮地区の昔、今、未来をつなぎ、太陽のように明るく支えています。洋子さんがなぜそこまで地域のために動き続けられるのか、その原動力についてお話を伺いました。
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大人気の家庭の味。地域のお母さん方による”ふるまい”

2026年2月22日、湯沢市秋ノ宮地区で「秋ノ宮雪っこまつり」が開催されました。湯沢市内外から10人近くのお母さん方を始め、総勢120名のボランティアスタッフ、約250名の来場者が集まりました。会場となった雄勝スポーツセンターの体育館は「いっぷく広場」と名づけられ、地域のお母さん方による”ふるまい”が提供されました。
前日から地域のお母さん方が集まり準備していたというその場で、ひときわ忙しく、それでいて穏やかな表情で、長蛇の列ができるほどのお客さんと、全体を見渡していたのが菅洋子さんでした。12時から始まる”ふるまい”を今か今かと待つ地域の人たちを、嬉しそうに見守る姿が印象的でした。
今年ふるまわれたのは、おにぎり、漬物、たまこんにゃく、お茶。まさに家庭の味そのもので、手渡される瞬間に自然と「ありがとう」がこぼれていました。


秋ノ宮を支えるエネルギーとは
洋子さんは地域住民の健康向上を支える結核予防婦人会、地域サロン、読み聞かせボランティア、一人暮らしの方への弁当配達ボランティアなど、地域の人がより良く暮らせるための多岐にわたる活動に関わっています。そのエネルギーの源を尋ねた時、返ってきた言葉が忘れられません。

「今までたくさんの人にお世話になったから。自分が動ける間はできることをしたいの。ボランティアって、自分が与えているつもりでも”ありがとう”とか”笑顔”をもらうのよね。それが1番のエネルギーかしら」その言葉に筆者は胸が熱くなりました。
自身が楽しむことの大切さを語る一方で、これら多くの活動を「そろそろやめなければいけない」と考える葛藤もあるようでした。その理由は「自分の年齢はどんどん上がっていく。でもどんどん若い人が少なくなってる。それでもこの地域を大切に守ってきたバトンをつないでほしいから」と話していました。「バトンはずっと出してるんだけどね。若い人たちが受け取ってくれたら嬉しい」その言葉はどこか寂しさを含みながらも、未来への希望のようにも聞こえました。

自身が楽しむことの大切さを語る一方で、年齢を重ねるなかで、こうした活動をいつまでも続けることはできないという思いもあるようでした。だからこそ、この地域を大切に守ってきた強い思いを次の世代へつなぎたいという願いが、いっそう強くなっているのかもしれません。
「バトンはずっと出してるんだけどね。若い人たちが受け取ってくれたら嬉しい」
その言葉には、継承の難しさをにじませながらも、次の世代への期待を手放していない思いが感じられました。
洋子さんの娘さんも参加する若者団体「AsoV!va秋ノ宮」の活躍

2024(令和6年)度、秋ノ宮地域づくり協議会主催の「秋ノ宮・若者ミーティング」がきっかけとなり、若者団体が設立されました。「若者一人ひとりが主役」という基本方針のもと、地域の自己肯定感を高め、関係人口を活用しながら持続可能な地域づくりを目指している「AsoV!va秋ノ宮」です。地域資源の活用や地元のお祭りへの関わり、地域内外の人の情報発信、地域内の若者のつながりの強化などに取り組んでいます。
筆者も夏に訪れたときからLINEグループに参加しており、定期的に開催される定例会の中で、各自がやりたいことを持ち寄り、実現に向け意見交換を繰り返しています。
洋子さんの娘の真美さんも「AsoV!va秋ノ宮」のメンバーの一人です。「AsoV!va秋ノ宮」の活動について、「昔は青年会みたいな若い人たちが自然に集まる場所があったんだけどね。今は全然ないでしょ。でもやっとそういう場所ができた。応援したくなるよね。頑張ってほしい」と語る姿は、まるで秋ノ宮の未来そのものを見つめているようでした。
「人の気持ちで成り立つコミュニティ」太陽の光を反射するような明るい未来に向かって
洋子さんをはじめ、会場で楽しそうに話すお母さん方の笑顔を見て、筆者はこのコミュニティは義務や仕組みではなく「人の気持ち」で成り立っているのだと実感しました。会場には子供を連れた若いお母さん方も自然に集まり、年齢を超えて笑顔が交わされる、あたたかな情報交換の場となっていました。
限界集落と呼ばれてもなお、この地域が大好きで、1人でも多く関係人口になってくれたら嬉しいと考える人たちが集まっている、この場所の温かさに、誰よりも筆者自身が引き込まれているのです。
筆者は、何度も足を運ぶうちに、秋ノ宮の方々が真剣なまなざしで自分たちのやりたいこと、実現のためにできることを話し合う様子を見てきました。1人じゃない、同じようにこの地域をよくしたいと思っている人がたくさんいる、そんな空気感が多くの人を巻き込み、向き合うことで、よりよい地域づくりにつながっているのだと感じました。
少子高齢化と言われる今、このような集まれる場所の存在は確実に未来への財産となることでしょう。静かに、でも確かに次の世代にも受け渡されていくバトン。この地域の未来は、少し解け始めた雪が太陽の光を反射するように、やさしく、そして眩しく輝き続けると筆者は確信しています。
秋山咲奈さんの投稿





