EC×総合支援で挑む地方企業の伴走者。現場起点のノウハウで、企業の“次の一手”を支える【福井県坂井市】

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株式会社アートエイジホールディングス 代表取締役社長

Koki Makino
牧野 光輝氏

福井県坂井市を拠点に、EC支援・ブランディング・マーケティング・コンサルティングを総合的に展開する株式会社アートエイジホールディングス。代表取締役社長の牧野 光輝(まきの こうき)さんは自身で副業として始めた通販の経験をもとに会社を立ち上げ、現在は中小企業の課題解決を支える多角的な支援体制を築いています。今回は、創業の背景から現在の事業戦略、そして地方に根ざして挑戦を続ける原動力までを伺いました。

副業のネット通販を「もうひとつの本業」感覚で取り組み、会社設立へ

会社立ち上げまでの経緯を教えてください。

福井県は母の実家だったこともあり、高校まで過ごしました。最初は警察官になろうと大阪の大学に進学したのですが、中退してしまいました。本当に勉強が苦手だったのです。
フリーターや専門学校を経て、株式会社ALL CONNECTに入社しました。そこではコールセンター部門で人材育成やクレーム対応に従事しました。会社員として働くかたわらで副業として物販ビジネスを始めたのが、現在の会社を立ち上げたきっかけです。
数年で年商1億円を超える事業へと成長したのをきっかけに、独立を決意。2017年に「ART AGE(アートエイジ)」を創業し、本格的にEC事業に参入します。

どうしてネット通販事業を副業でやろうと思ったのでしょうか?

副業としてECの物販を始めたのは、低リスクで自分の力を試せるフィールドだと思ったからです。商品を選び、出品し、売れていく過程が面白く、修正すればすぐに売上に結びついたので、面白さを感じてのめり込みました。「自分で商売ができる」という実感が自信にもつながっていきました。
ネット通販の知識はトライアンドエラーを繰り返し、独学で身につけていきました。平日は本業の勤務が終わってから夜中まで、そして土日は丸一日、副業に没頭していました。副業というより、ほぼ“もうひとつの本業”という感覚でしたね。それくらい真剣に取り組んでいたからこそ、本業として会社を設立させることができたのだと思います。

いつかは自分で会社を立ち上げたいと考えていたのですか?

いいえ、当時はまったく意識していませんでした。ところが最近になって、親戚が集まったときに「自分は将来、社長になるんだ」と小学生の頃の私が言っていたという話を家族から聞きました。父方の親戚には会社を経営している人が多く、そうした環境の中で、知らず知らずのうちに影響を受けていたのかもしれません。

事業を行う中での課題をグループ会社で解決していく本質的支援。「総合力」が強み

現在の事業について教えてください。

創業当初は、型番商品を中心とした「型番通販」モデルで堅実に売上を伸ばしました。その間に蓄積したノウハウや失敗・成功の経験をもとに、他社へのマーケティング支援やLINEを活用した営業支援システム「LINAS(ライナス)」の提供など、自社で実証済みの施策を他社へ還元するコンサル事業へと展開しています。

これまでの事例を具体的に教えてください。

たとえば、当社が支援した型番通販の案件では、もともと年間売上が3億円だった企業が、仕入れフローの最適化と販売戦略の見直しを経て、10億円規模へと成長しました。単に広告や価格調整に頼るのではなく、仕入れから販売までの全工程を見直すことで、業務効率の向上と利益率の最大化を同時に実現しています。
また、上場企業が展開する店舗で売れ残った商品をECで再流通させる仕組みをゼロから構築した事例もあります。これにより、在庫ロスを防ぐと同時に、新たな販路開拓にもつながりました。
さらに、ECでは価格が同じ場合に「選ばれる理由」として、商品写真のクオリティーが大きく影響します。そこで私たちは、ただ写真を撮るだけでなく、AIを活用して商品画像に適切な背景を自動で合成する手法を導入しました。これにより、撮影や編集の工数を抑えながら、視覚的な訴求力を高めて売上アップにつなげたケースもあります。こうした現場ベースの工夫や改善が、私たちのコンサルティングの強みです。

グループ会社としての強みはありますか?

私たちアートエイジホールディングスは、単一のサービスや領域にとどまらず、EC、マーケティング、採用支援、クリエイティブ制作、物流、そしてVTuberなどのエンタメ事業まで、幅広い分野に事業展開しています。それぞれの領域で子会社を設け、専門性を追求しながらも、グループ全体で連携することによって、他社にはない“総合力”を提供できることが最大の強みです。
よく「御社は何の会社ですか?」と聞かれますが、私は「結果をつくる会社」と答えています。クライアントの目指すゴールを実現するために、最適な手段と体制を組めること。その柔軟さと再現性こそが、アートエイジグループの価値だと考えています。

“総合力”を発揮した事例を教えてください。

たとえば、EC事業では、商品企画から販売、広告運用、顧客対応までを一貫して担える体制を構築してきました。その過程で得た現場レベルの知見や失敗も、リアルなコンサルティングの材料になります。
サービス集客やリクルート支援を専門とする株式会社ART AGE Marketingでは、SNS運用やWeb広告、採用ブランディングに特化した提案が可能です。グループ会社のMemorynator株式会社では、若年層に向けた情報発信に特化し、VTuberやアニメーションを活用した動画コンテンツ制作でブランディングやPRの幅を広げています。
2025年には物流と配送の領域を担う株式会社ART AGE Transportを設立。ECビジネスを本業にしているからこそ、物流の末端拠点から配達先までの「ラストワンマイル」と呼ばれる課題に直面し、社内で対応できるようにしたのがきっかけです。
単に商品を売るだけではなく、届けるところまで含めて設計する。ここまで支援できる体制を持っている企業は、全国的にも稀だと思います。

AIやアプリを活用してコンサルティングを強化。「地方企業の成長支援モデル」目指して

今後、新たに注力したいことはありますか?

「ブランディングの設計」に力を入れていきたいと考えています。特に地方企業の多くは、「売れる仕組みをつくりたい」とは思っていても、自社の価値や魅力をどう言語化・可視化すればいいかがわからないという悩みを抱えています。そういった企業に対して、単なるデザインや広告ではなく、企業の本質的な強みを掘り起こし、戦略的に“伝える設計”から関わるような支援をしていきたいです。
また、複数の分野にまたがるノウハウを融合させた「地方企業の成長支援モデル」を確立したいとも考えています。「売れる」だけでなく、「選ばれる」企業になるための仕組みを作ることが今後、地方の企業が生き残っていくためには必要だと思います。

今後の展望について教えてください。

弊社は自社の事業で課題感がある部分をシステムやAI、アプリ化等のITスキル+マーケティングスキルを用いて解決していく社風にあります。自社の課題解決だけではなく、自社で蓄積したノウハウを生かしクライアント企業に応じた、角度の高い「課題解決案」を提案していきたいです。

正解がわからなくても「踏み出してみて」。EC事業で成果を出すために

一緒に働くクリエイターに求めることはありますか?

EC事業では、商品をつくって終わりではなく、販売後のデータ分析や改善までを含めたPDCAサイクルをいかにスピーディに回していくかが成果に直結します。クリエイターとしての感性に加えて、マーケティングや実務との接点を意識できる方が活躍しやすいと思います。
たとえば、アプリ開発においても、以前は専門的なコーディング知識が必須でしたが、現在ではノーコードで実装できる環境も整っています。だからこそ重要になるのが設計とデザインのバランスです。実際の業務やユーザー行動に即したフローを考えられる力、伝えるべき情報を正しく配置できるスキルなど、見た目の美しさだけでなく、使いやすさを重視した思考が求められます。そうした意味で、今後は「デザインができる人」というよりも、「課題を解決するための手段としてデザインを活用できる人」が、より必要とされていくのではないかと感じています。

最後に、若手クリエイターへメッセージをお願いします。

「好き」や「得意」にこだわりすぎず、まずは目の前の仕事に飛び込んでみてほしいです。
人には大きく分けて2通りのタイプがいると思います。ひとつは「もともと興味のあることを突き詰めて仕事にしていく人」、もうひとつは「最初は興味がなくても、挑戦する中で成果が出て面白さを感じていく人」。私自身は完全に後者でした。EC販売が好きで始めたわけではありません。でも、やっていくうちに自分に向いていることを見つけて、そこに磨きをかけ、結果を出すことができました。
やってみて、失敗して、迷って、また戻る。 動き続けてさえいれば、いつかその経験すべてが線になり、道になります。大事なのは、諦めずにやってみること。そして、どんなに小さなことでも「成果を出す」ことに向き合うこと。
正解がわからなくても、まずは踏み出してみてください。その一歩が、きっとあなたの未来の選択肢を広げてくれます。

取材日:2025年6月30日 

株式会社 アートエイジホールディングス

  • 代表者名:牧野 光輝
  • 設立年月:2023年10月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:インターネットを利用した集客・広告・求人、ホームページ制作、ECモールでの物販、ECモールでの代理販売・コンサルティング
  • 所在地:〒919-0521 福井県坂井市坂井町下新庄16-8
  • URL:リニューアル準備中
  • お問い合わせ先:0776-43-6367

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

高井寧香

高井寧香

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