変幻自在に全部やる。世界を巡り尾道に根ざした代表、見つけたデザインのかたちと活版印刷の魅力【広島県尾道市】

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株式会社カメレオンワークス 代表取締役

Noriyoshi Ueda
上田 昇辰氏

ホームページやグラフィックの制作、そのほかブランディングに必要なことはできるだけ自社で行う。できない言い訳をするのではなく、「ZY=全部やる」の精神で日々前進−−。そんな思いで活動しているのが広島の株式会社カメレオンワークスです。カメレオンが変幻自在に色を変えるように、柔軟な提案を実現する同社の代表・上田 昇辰(うえだ のりよし)さんにお話を伺いました。

学芸員を目指して大学へ。仕事、各国への旅を経て、30代で尾道の地に開業

デザイナーになるまでの道のりを教えてください。

高校生の時に修復師の道を志し、学芸員の資格を取るために奈良県の大学へ進学しました。
しかし20歳の頃、旅先のインドで偶然デザイナーをしている人に出会ったことでデザインの魅力に引かれ、その道を目指すことに。帰国後、通信教育で絵の勉強を始め、卒業後は地元・尾道の制作会社でデザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。
地元の小さな制作会社だったので、一から十まで自分でやらなければならない大変さはありましたが、一方で当時では少数派になりつつあった、文字を印画紙やフィルムに焼き付ける「写植」などいろいろな経験を積むことができました。

カメレオンワークスを設立したきっかけを教えてください。

紆余曲折あったあとの、アルバイト先での奇跡的な出会いがきっかけです。
制作会社を退社し、再びバックパッカーでインド、ネパール、東南アジア諸国を巡った後、広島市にある大手印刷会社にデザイナーとして入社しました。忙しいながらも充実していたのですが、「30歳までにはもっと世界を旅しよう」と心に決めていたので退社。
ヨーロッパなど約40カ国を一年かけて巡る中で、ネパールの仏教画に出会いました。技術を身につけたいと思ったのですが、習得に6カ月間は必要だと言われ、資金集めのために帰国。10カ月間住み込みで農業を手伝いました。再びネパールへ向かい、10カ月間ほどアパートを借りて仏教画を習いました。
2008年に尾道へ戻り、アルバイトをする中で現在もパートナーとしてタッグを組んでいるWebデザイナーの織田くんと出会いました。腹を割って話せる彼と意気投合したちょうどその頃、昔の知り合いからWeb制作の相談を受けており、織田くんと一緒にその案件を仕上げました。織田くんと仕上げたそのWeb制作に手ごたえを感じ、2009年、2人でカメレオンワークスを設立しました。

カメレオンワークスという社名の由来について教えてください。

旅先のモロッコで出会ったペットとして飼われていたカメレオンを思い出し、「カメレオン=体の色を変幻自在にできる=お客さまに合わせて柔軟に対応できる」という意味にとらえて、社名を決めました。

世界各地を旅した後に尾道を拠点とされた理由は何ですか?

若い頃は都会への憧れもあったのですが、日本、世界のいろいろな場所を巡り、拠点とするのは都会でなくても良いかな、と思い始めていました。山と川があって田舎過ぎない場所…と考えたところ、尾道水道の細長く続く景色が浮かび、拠点とすることを決めました。ちょうど尾道でも、「尾道で何かしたい」という思いを持った30代前半くらいの人たちが各地から集まり、小さな波が少しずつ町を動かし始めていた頃だったように思います。

ブランディングに特化したホームページ制作をはじめ、活版印刷の技術と文化を引き継ぐ

現在の事業内容についてお聞かせください。

ブランディングに特化したホームページ制作・Webコンテンツ・各種印刷物をはじめ、動画撮影・編集・イラストレーション・尾道案内も行っています。デザインでより多くのお客さまを笑顔にすることを喜びとし、自分たち自身の「楽しい」を表現しています。

一方で、活版印刷体験と雑貨販売の店「活版カムパネルラ」、活版印刷と写真スタジオ「活版カムパ工場」をそれぞれ2016年と2021年にオープンさせました。活版印刷の魅力を広め、技術とその文化の継承を目指しています。

活版印刷の魅力について教えてください。

活版印刷は手作業の部分が多いので、一つ一つの印刷物に味わいがあり、現代の印刷物にはない温もりが感じられることが大きな魅力です。また、そこへいたる作業も人それぞれのやり方があり、正解は一つではありません。それぞれのやり方で個性が生まれ、発見がある。古い印刷方式なのに、新しい見方や考え方が生まれる、それも魅力の一つです。

「活版印刷」とはどのように出会ったのでしょうか?

印刷会社勤務時代に印刷の現場を見学する機会があり、その時に活版印刷に出会いました。当時、活版印刷に魅力は感じていたのですが、まだぼんやりと「いつかは活版印刷を扱ってみたいな」と思う程度でした。

その後、カメレオンワークスを設立。数年して当初開設した事務所の移転時に、「活版印刷をやろう」と決意。知り合いや、心当たりのある印刷会社などに機会を譲ってもらえないか、と呼びかけていました。やがて少しずつ思いがつながり、寄せ集めではありましたが2016年に「活版カムパネルラ」をオープン。旅行者をはじめとする一般のお客さまに、活版印刷の魅力を伝え、広めることを目的として活動を始めました。お店やイベントなどを通じ、活版印刷を共通項とする仲間が全国各地に増えていきました。
2021年には、ドイツ・ハイデルべルク社製の凸版平圧式印刷機「プラテンT型」を譲り受け、業者向けの活版印刷と写真スタジオを備えた「活版カムパ工場」を開設しました。昭和初期より創業されていた「第一印刷」さんで大切に使われ続けてきた機械を迎え入れるために、ダンスホールだった建物をリノベーションしました。印刷機を扱う技術は、私が3年間かけて印刷所へ通い習得しました。とは言え、まだまだ未熟なので70代になるその道の師匠に教えていただいています。

できない言い訳をせず「全部やる=ZY」を理念として、挑戦し続ける

貴社の強み、そして今後の展望についてお聞かせください。

お客さまの課題に対して、ホームページ制作だけでなくブランディングを意識して必要なことは「全部やる=ZY」を理念とし、変幻自在にお応えする姿勢を強みと考えています。
デザインでより多くのヒトを笑顔にすること、それを自分たちの喜びとして17年、あっという間でした。この先も一瞬だと思うので、やってみたいな、と思うことは言い訳をせず、諦めずに挑戦したいと思っています。また、活版印刷の技と文化を次世代に引き継ぐこともこの先の大きな目標です。
また、「備後デザインサロン」という任意団体にも参加しており、デザイン会社と地元事業者(メーカー)がアイデアを出し合い、新しい商品や仕組みを生み出す作業をしています。さまざまな強みを持ったみなさんと協働する中で、これまでになかったものを世の中に打ち出したいです。

若いクリエイターたちへのメッセージをいただけますか?

若い方、これから何かに挑戦したいと思っている方には、とにかくいろいろな経験をしてほしいと思います。私自身はバックパッカーとして世界各地を巡ったことが、とても貴重な経験となっています。どんなことでもいいので、ネットではなく、リアルな経験を積んでみてください。きっと、その先につながる何かに出会えると思います。

取材日:2025年6月11日 

株式会社カメレオンワークス

  • 代表者名:上田 昇辰
  • 設立年月:2020年10月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:ホームページ/Webコンテンツ/各種印刷物デザイン/動画撮影・編集/ブランディング・グラフィックデザイン/活版印刷/イラストレーション/尾道案内
  • 所在地:〒722-0033 広島県尾道市東土堂町11-2
  • URL:https://chameleon-works.jp/
  • お問い合わせ先:0848-51-7796 mobile:080-5233-7988
  • mail:ueda@chameleon-works.jp
村上雅水

村上雅水

広島市在住のコピーライター。東京の大学を卒業後、映像制作会社を経て広告代理店でコピーライター・プランナーとして勤務。その後、フリーランスとして広告物の企画やコピーライティング、ライターとして活動中。電波媒体から紙媒体、WEBまで幅広く企画・ライティングを手掛ける。得意分野は食、子育て、介護など。▲この記事を書いた人にお仕事をお願いしたい場合には、直接クリエイターズステーション編集部にご連絡ください。https://www.creators-station.jp/category/interview/legends

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