地方創生の現場では、デジタル技術を活用した新しい取り組みが注目されています。その中でも分散型自律組織(DAO)は難解なイメージを持たれがちですが、香川県三豊市仁尾(にお)町では、DAOを通じて誰もがまちづくりに参画できる仕組みが導入されました。空き家を活用し、地域再生の新たなモデルが動き出しています。一軒の家から始まり、エリア全体へと広がりつつあるこの挑戦の今をお伝えします。

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観光客数が6年で約100倍!仁尾町の歴史
香川県三豊市の西に位置する仁尾町には、日本のウユニ塩湖とも称される父母ヶ浜(ちちぶがはま)があります。数年前にSNSで話題となり、観光客数は6年で約100倍に急増。年間約50万人が訪れる人気観光地となりました。
この町では移住者や地元の経営者を中心に、空き家などの再活用が進みました。過去5年間で100件を超えるプロジェクトが生まれ、30億円以上の民間投資が実行されるなど、「自分たちの暮らしを自分たちの手でつくる」動きが定着し始めています。
投資を通じて誰でも参画できるDAO
DAOとは、中央集権的な管理者を持たず、ブロックチェーン技術を基盤に参加者全員が意思決定を行う組織です。今回の「身の丈商店街DAO」は、住民と関係人口が共につくる「新しい商店街のあり方」を目的とした取り組みです。
出店者の選定や収益の使い道はDAOメンバーと住民が協議し、投資を通じて誰もがまちづくりに参加できる仕組みを整えています。約400名のDAOメンバーと総額4,000万円の資金調達を目指すと発表されており、今後はふるさと住民をはじめ多様な人々が主体的に参画することが期待されています。
「かっちゃん家」からはじまるDAOの輪
DAOの第一号案件は「かっちゃん家」です。地元を愛し、最後の時まで仁尾町で生き抜いた故人「かっちゃん」が暮らした住宅を改装し、カフェ・バー・レストラン、ワインバー、コーヒースタンド、小商いスペースなどが整備される予定です。さらにDAOメンバー専用の宿泊施設も用意され、最大10名が滞在できる環境が整います。
解体や荷物搬出の作業には地域課題を支援するサービスを通じて人手が集まり、私自身も記者活動の傍ら参加しました。現状ではすでに参画者数は80名を超え、出資金額も800万円以上が集まっていると、報告が出させています。
DAOという仕組みを用い、少額投資でも意思決定と経済循環に参加できる構造をつくることで、都市住民・副業起業家・移住希望者などもまちづくりに参画しています。
DAOの広がりが生活の一部に
かっちゃん家は商店街の入り口にあたる角に位置し、再生の中心的存在となっています。周囲ではすでに新たな店舗やプロジェクトが誕生しており、地域全体に活気が広がっています。私の住居予定地からも徒歩圏内にあるため、変化を身近に感じています。
角を曲がれば市民大学、瀬戸内暮らしの大学や様々な交流拠点があり、まちの盛り上がりは一つの建物にとどまりません。身の丈商店街DAOは、かっちゃん家を起点にエリア全体の再生を加速させ、地域全体を巻き込む原動力となっていきます。




