「世界の屋根」エベレストを見に自分の足で③エベレスト街道からカトマンズへ。 雑踏が心を映す【ネパール・カトマンズ】

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カトマンズで民族衣装を着た女性 2025年11月21日

「世界の屋根」エベレストを間近で見たい。何度も危険を乗り越えながら登山を続けるうち、心が洗われるような景色、人の良さ、動物たちとの遭遇など、山にどんどん魅せられ、いつしかヒマラヤへの憧れを抱くようになりました。エベレスト登頂は叶わずとも、その雄姿をこの目で見たい・・・。その長年の夢を、2025年秋、友人の誘いを受けてついに実現しました。今回は3回目の紀行文を投稿いたします。地球と自然の素晴らしさや、そこに生きる人たち、そこから学んだことを記事に書きました。少しでも良さを感じていただければ幸いです。

不必要な音が無い世界に整えられた「体と心」

▲ヒマラヤイワヒバリ 2025年11月20日

いよいよエベレストも見納め。

3日間かけて登ったエベレスト街道を2日間下ってルクラに戻ります。

ヘリコプターの爆音を除いて、ある瞬間から「静」の世界に入っている感じがしていました。

音が消える感じでなく、「不必要な音が無い」ようでした。聞こえるのは沢からの水の流れ、鳥のさえずり風の音、足音、息使い、荷物を運ぶ牛や馬、ロバのベルと足音、彼らに命令する声、村人の笑い声‥

まるで人工的に作られた都会とは全く違う、心地よい時間の流れの様でした。

だからこそ、自分の心の声をよりはっきりと聴くことができたのかもしれません。私には、エベレスト街道を歩いて感じた静けさは、身体を鍛えるというより「体と心を整える場所」だったようです。

健康とは、何かを足すのではなく「余分なものを引く」ことと山が教えてくれたと強く感じています。

エベレスト街道からの帰路

▲ラメチャップに向けて 2025年11月21日
▲ラメチャップ空港 2025年11月21日

ルクラからラメチャップまで小型飛行機で30分。ルクラは「世界で一番危険な空港」と言われるように、谷底に落ちるように滑走します。滑走直後はビビりましたが、アッという間に離陸。熟練の飛行技術に恐れ入りました。眼下には地殻変動によってインド大陸から押され褶曲(しゅうきょく)した山々が広がり、ヒマラヤ山脈を横目に眺めながら少しづつ遠ざかっていくと涙があふれてきました。できればもう一度来たい!そしてもう少しエベレストに近づいてみたい!

▲褶曲した山に広がる畑 2025年11月21日
機内からのヒマラヤ山脈 2025年11月21日


ラメチャップからカトマンズまでバスで約7時間。峠を越え、崖っぷちを走り、水害でえぐれた川底のガタガタ道を延々と走り続けるアドベンチャーな行程。トレッキング後の体にはかなりこたえました。

▲水害でえぐれた川底 2025年11月21日


ただ地質が大好きな私にとって川底から見上げる崖には、地球のかなり古い地層が露出していたので心がおどりました。この一瞬だけ疲れを忘れることができました。

やや青白く見える岩石は太古の痕跡 2025年11月21日


カトマンズで見えた世界

ネパール陸軍 2025年11月22日 ※写真の一部を加工しています

やっとのことでカトマンズに着くと、現地ガイドさんが迎え入れてくださいました。ガイドさんによるとネパールでは2025年9月に若者を中心とした反政府デモが全国的に拡大したのだそうです。「政治への不満」「失業や経済停滞」「SNS規制」への抗議が暴動にまで発展しました。「市民活動で政権が崩壊する」のは珍しく、今後は暫定政権が発足し総選挙が行われる予定になっていました。

私たちが訪れた11月頃は、政府機関周辺の建物はガレキのままでしたが、観光地にはその気配すら感じられませんでした。これはネパールにとって観光エリアは財産と理解されているのか、と思いました。ネパールでは、政治的混乱は一部の地域のみで市民生活は普通を継続する社会構造。これがヒマラヤ文化圏特有の「社会が不安定でも、人は普通に生活する」という価値観が強く出た年に行けたのは反面幸運だったかもしれないと思えました。

カトマンズに残る社会構造

パタンダルバール広場 2025年11月22日
広場へ行く路地を歩く 2025年11月22日

カトマンズ滞在時には、パタン・ダルバール広場などの世界遺産を4つほど訪れました。世界遺産の周囲に住んでいるのは、社会構造の中では下層の方々でした。ガイドさんの説明では、宗教などの思想とむすびついたカースト制度のなごりがあるため「才能があって、この構造から一旦抜けたとしても親族たちに呼び戻され、再び抜け出すことができない」と話されていました。例えば土器作りの家族ならば一生素焼きの土器を作り続けるのが義務になると。

路地に並べられていた土器  2025年11月22日

私はそのような所に行くことに躊躇(ちゅうちょ)しましたが、予想に反し明るく活発な雰囲気に驚きました。

カースト制度は過去に廃止されてはいるものの、なぜいまだにこのような社会構造が維持されているのだろうかと考えました。カースト制度の枠外にいる支配的な立場の人々が政府や国を管理し、下層の人々に対し、人生を変える可能性のある知恵や技術を学ぶ機会を与えなかったことが引き金になっているのではないか。その結果、下層の人々は住む場所を変えることができなくなり特定の場所にとどまり続けた。一方で、それが世界遺産の維持につながったのではないか、そう思いました。

カトマンズ・ダルバール広場 2025年11月22日

「変化」の中で生き続けることこそ健康の源

カトマンズでは、車のクラクッションが名鳴り響き、バイクの爆音、雑踏の中の話し声、客引きの声など音と共に匂いも津波のように押し寄せてきました。

今までと余りにも違うギャップに圧倒され、整っていた感覚が乱されるような苦痛を味わいました。

世界遺産を歩き、また雑踏を歩くうちに気づいたことがあります。「雑踏そのものが悪いのではない」ということに。

私がどう受け止めているかが問題なのではないかと思えたのです。

トレッキング中、私は本当に癒されていました。しかし、普段の雑音が聞こえる生活に戻ったとたんにそれが途切れてしまう。

その両方の深い経験を重ねて「非日常の静けさと日々目まぐるしく変わる日常、双方に対応できる力」は、健康で過ごし続けられる源なのではないかと思いました。

エベレスト街道トレッキングとカトマンズの雑踏で得たこの実感は、日常をより健やかに生きるヒントになりそうです。「自然の中で整い、日常で確かめる」このサイクルを多くの方に提案し、ともに素敵な毎日につなげたいと思います。

そして日本に帰ってきて最初に思ったのは「何と素晴らしい国」に住んでいるのだと。

もっと自然と人を大切に毎日を過ごし、人生を謳歌(おうか)したいと強く思いました。

「『世界の屋根』エベレストを見に自分の足で」は3回にわたって気づいたことや壮大な景観を記事にしてお伝えしました。

次回から日本に戻り、丹波篠山など地元に密着した記事を投稿いたしますのでよろしくお願いします。

加藤 晴之

加藤 晴之

兵庫県丹波篠山市在住。「丹波の山猿 はっくん」として登山ガイドをしています。また前職(臨床検査技師)時代、健康講座も行っていましたので初心者や中級クラスの方に健康情報をお伝えしながら安全に楽しい登山を行っています。他のスポーツとは違う登山の魅力を体験くださると嬉しいです

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