まだ知られていない北海道の魅力を道外へ伝える。映像でつなげる「北海道の食」の未来戦略【北海道札幌市】

5 min 11 views

GIBEON株式会社 代表取締役

Yuta Takahashi
髙橋 雄太氏

映像制作・Webサイト制作を軸に、北海道の食・生産者・地域企業を盛り上げる。そんな思いで北海道の魅力を発信するコンテンツを制作しているのが、GIBEON株式会社(ギベオン)です。今回は、テレビ制作歴20年以上の経験を持つ代表・髙橋 雄太(たかはし ゆうた)さんに、事業を「北海道の食」に特化した経緯や、今後の展望についてお話をうかがいました。

埼玉と札幌でディレクター経験を積み、テレビの枠を超えた映像の世界へ

立ち上げまでのキャリアを教えてください。

東京の大学を卒業後、テレビ埼玉の子会社である番組・映像制作会社、株式会社ユーネットに就職しました。12年間ディレクター業をやり、35歳の時に地元・札幌に戻って来ました。
札幌に戻ったきっかけは、高校の後輩から「札幌テレビ放送の子会社、株式会社札幌映像プロダクションでディレクターの中途採用がある」と聞いたことでした。私は札幌出身で妻は余市町出身ですが、その話があるまで北海道に戻ることは特に考えていませんでした。
ただ、子どもが小学校に入学するタイミングだったことや、埼玉での生活では両親がなかなか孫に会えないといった事情もあり、採用試験を受けることにしました。無事採用され、2011年に札幌へUターン。札幌映像プロダクションでは5年間お世話になりました。

GIBEON株式会社を設立したきっかけを教えてください。

埼玉のユーネット、札幌の札幌映像プロダクションと、テレビ業界で映像制作に携わるなかで、自分なりにテレビの未来が見えてきた気がしました。情報を得る手段として、インターネットの存在感がどんどん強まっていくのを、肌で感じていた時期でもあります。
当時は、YouTubeなどの動画配信はまだ今ほど普及していませんでしたが、これからの若者は、テレビよりも、自分の好きなコンテンツを好きなタイミングで視聴できる動画配信に移っていくだろうと確信しました。
テレビの需要が下がっていく現実を前に、「このままテレビ業界に甘んじていていいのか」「このままではテレビ以外の仕事を経験できないかもしれない」と自問自答する日々が続きました。そうして考え抜いた末、より幅広い映像制作に挑戦するため、独立を決意しました。

いずれは会社を立ち上げたいという思いはお持ちでしたか?

まったく考えていませんでした。基本的に私は、直感やひらめきで動くタイプです。札幌にいる後輩から転職の話をもらったことや、子どもの小学校入学のタイミング、そして両親のことを考えてなど、いくつもの条件が重なった結果、自然と札幌に戻る決断につながりました。
結果的に、子育ての環境としても札幌はとても良かったですし、起業を通じて、自分が本当にやりたかったことを仕事にすることができています。今は、札幌に戻ってきて本当に良かったと感じています。

映像制作の先にあるもの。北海道の“まだ知られていない魅力”を全国へ

起業して制作したかったのはどのような映像ですか?

起業前の取材で、私がいつも大切にしたいと感じていたのは「人と人とのつながり」でした。ディレクターとしての仕事は、生産者に出会い、取材し、映像を制作して放送する。それで終わりになる関係性に、いつも物足りなさを感じていたんです。
取材を通して、普段は聞けないような貴重なお話を伺うなかで、その取り組みや土地の魅力、特産品の価値に強く惹かれていきました。だからこそ、その出会いを「番組が終わったら終わり」にするのは本当にもったいないと思いました。
北海道に帰ってきて感じたのは、「北海道グルメ」というブランドの強さでした。起業当初は、映像制作全般を幅広く売り込んでいましたが、せっかく北海道に戻ってきたのだから、自分の経験や強みだけで勝負するのではなく、まだまだ発掘の余地がある北海道のブランド力を生かしたいと考えるようになったんです。
独立後は、自らが直接お客さまと向き合い、その魅力をさらに深く引き出していくことを大切にしています。「映像の力を使って、より多様な見せ方や切り口で、PRの支援ができないか」。日々、そう考えながら取り組んでいます。

現在の事業内容について教えてください。

主な事業は、映像制作、Webサイト制作、SNS運用、YouTube動画制作などのコンテンツ制作全般です。広告に関する企画・制作・販売、広告代理業にも対応しています。
ただし、これらの制作はあくまで手段にすぎません。私たちが本当に目指しているのは、北海道の「食」の魅力をさまざまな形で全国へ発信し、道外への販路拡大につなげることです。
単に「売れればいい」とは考えていません。北海道にしかない歴史やストーリー性、生産者一人一人の思いを丁寧に伝え、消費者と深くつながる。その“架け橋”の役割を果たすことが、私たちの大切な使命だと思っています。

第一次産業のプロモーションに課題を感じ、解決のために立ち上げたプロジェクト

事業の要を「北海道の食」にしようと思われたきっかけは?

高校のOBから、水産物のプロモーションについて相談を受けたことがきっかけでした。北海道では、第一次産業が不可欠であるにもかかわらず、生産者や関連会社、自治体も含めて、プロモーションに関する知見や人手が不足しているという課題が山積していることを知りました。
私は以前、首都圏で仕事をしていた経験を生かし、北海道の食を道外に広めるための活動ができないかと考えました。そこで立ち上げたのが、北海道の物産展「HOKKAIDO LIVE with LOVE」というプロジェクトです。これは、首都圏に向けて北海道の「食」の魅力を発信するPR企画。映像ディレクターである私が、食のイベントを手がけるという新たな挑戦でもあります。
すでに開催されている北海道物産展は、顔ぶれがほぼ固定されており、新規参入は非常に難しいのが現状です。だったら、自分で仲間を集めて、オリジナルの物産展を企画するしかない。そう考えました。良質で、生産者の想いが伝わる特産品を集め、小規模ながら確実に実施していく計画です。

貴社の強みを教えてください。

埼玉のユーネットでディレクターをしていた頃は、企画・台本作成・撮影・編集・放送まで、すべての工程を一人で担っていました。こうした経験に加えて、制作歴20年以上のカメラマンや音声スタッフの協力により、私たちは映像制作をワンストップで提供できることが最大の強みです。
企画力・行動力・スピード感を兼ね備え、次の展開にも柔軟かつ迅速に対応できるフットワークの軽さは、私たちの大きな持ち味だと自負しています。

これまでに印象に残っているお仕事について、具体的な事例をあげて教えてください。

2021年、観光プロモーション映像の制作でスペインへ行きました。現地カメラマンが手配されていないという想定外の事態に見舞われ、私自身がディレクションと撮影を兼任しました。1週間で3エリアを回るハードなスケジュールでしたが、これまでの経験があったからこそ対応できたと感じています。
また、25年5月には「HOKKAIDO LIVE with LOVE」プロジェクトの第1回を東京・大丸百貨店で開催。猿払村にフォーカスし、その土地のホタテや乳製品など約20種を販売しました。物産展の数日前から生産者が出演する動画や短編映像を発信したほか、当日の物産展では生産者にも同席していただき、首都圏の消費者に北海道の魅力をリアルに届けました。

ブレないのは映像制作を軸とした「北海道の食」の魅力発信。ゆくゆくは海外進出も

どのような会社にしたいとお考えですか?

特に今年からは「食」に特化した企画に注力していきます。北海道の生産者に向けて、特産品のPRやブランディングを、多角的に提案していきたいと考えています。すでに、来年のお正月に向けた企画も進行中です。
会社の規模も、今後さらに拡大していく予定です。現在は、顧問と業務委託スタッフ、そして私の3人で運営していますが、スタッフを増やし、今注力しているプロジェクト「HOKKAIDO LIVE with LOVE」をより広く展開していきたいと思っています。
また、「HOKKAIDO LIVE with LOVE」は海外進出も視野に入れています。将来的には、海外で物産展などのイベントを開催できたらと考えています。
これからも映像を軸に据えながら、「北海道の食」にしっかりとスポットを当てたブレのない展開を続けていくつもりです。

一緒に働くクリエイターに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

いろいろなことに興味を持って、積極的にチャレンジしてほしいと思っています。映像制作の世界では、誰もが「カッコいい」と感じるミュージックビデオのような作品を目指す人が多くいます。ですが私は、それよりも「自分にしかできない映像をつくること」に重きを置いてきました。
これから一緒に働くメンバーにも、そういったマインドを持ってほしいですね。映像に特化しなくても構いません。カメラでも、ライブ配信でも、お客さんとのコミュニケーションでもいい。幅広い視点を持ち、いろいろな出会いや未知体験にワクワクできる人なら、自分の限界を超えていけるはずです。

取材日:2024年5月21日 

GIBEON株式会社

  • 代表者名:髙橋 雄太
  • 設立年月:2017年4月
  • 事業内容:Web制作、広告サポート、映像制作
  • 所在地:〒064-0912 北海道札幌市中央区南12条西13丁目2-36-401号
  • URL:https://gibeon.co.jp/home/
  • お問い合わせ先:080-1883-0600

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

宮本 和加子

宮本 和加子

15年間出版社に勤めた経験を活かしてフリーライターとして活動中。フェローズでは風雲会社伝の札幌を担当。普段は雑誌やWebでグルメ系や人物取材記事などを執筆している。ライター以外には、マヤ暦アドバイザーという別の顔も持つ。

FOLLOW

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です