
全国各地に平家落人伝説がある。山口県美祢市にある「景清洞」もそのひとつだ。「悪七兵衛」(あくしちびょうえ)の異名を持つ平景清(たいらのかげきよ)。
平景清がひそみ、奉納したといわれている「生目八幡宮」のほか、自然が彫刻家のように作り出した作品が見られる。
今回は観光コースの中を探検してみることにした。
目次
平景清と景清洞
1185(元暦2)年、壇ノ浦の戦い(山口県下関市)で敗れた平氏は、多くの武将・女官が落人となり、西日本を中心に多くの落人伝説が残っている。そんな中、美祢市観光協会が発行したパンフレットを眺めていると、「景清洞」の紹介がされていた。あの平景清?と思って調べてみると、やはりそうだった。
平景清(大庭景清)は、源頼朝暗殺をもくろむも失敗に終わった。彼は悪七兵衛と呼ばれており、この「悪」は勇猛という意味合いも持つ、平家方の勇将だった。壇ノ浦の戦いに敗れた後、この洞窟で負傷した目を洞内のしずくで洗うと、傷が治ったという。この恩に報いるため「生目八幡」を祭ったといわれている。
筆者の高校時代に、『源平伝NEO』(漫画 別天 荒人/原作 あかほり さとる)という漫画があり、その中に「平景清」が出てきたことを思い出した。たしか、彼が使う霊帯剣の名前も「生目」で、高校時代と時空を超えてつながったことにおどろいた。
景清洞は秋吉台国定公園の中にある。日本を代表するカルスト台地で、3億年もの年月をかけて自然が造り出した。ここ景清洞のほかにも、秋芳洞(あきよしどう)・大正洞(たいしょうどう)があるので、時間があれば一緒に回ってみるのも面白い。

意外なことに、トリュフ発見の地でもあるという。

駐車場を降りてから歩いていくと、広場と遊具もあった。

チケットを購入したら、長靴とヘルメット、懐中電灯を借りることができる。

一般観光コースはバリアフリーにもなっている。ここでおよそのコースを確認したら、いよいよ景清洞内を探検開始。
いざ、景清洞へ

国指定天然記念物の景清穴。洞内では化石も発見できるかもしれない。サンゴや海百合などがあったということは、何かしらの地殻変動でせりあがってきたのだろうか。
さあ、いよいよ入り口が見えてきた。ここに平景清がひそんでいたといわれると、そんな雰囲気がひしひしと伝わってくる。

入り口のすぐそばまできたが、ここから見ても中は真っ暗だ。少々不安になってくる。

景清洞の中はどうなっているのか?

中に入ろうとするが、暗がりに私のビビり具合が伝わったのか、カメラもブレブレになっていた。

入ってみてすぐは、まだ陽の光が届くので植物が生えている。そして、すぐに生目八幡宮が見えてきた。

ものすごい雰囲気がただよう。しかしこわいというより、清らかさも感じられる。

生目八幡宮の由来を説明している。
生目の滝から流れ出るしづく(清水)の透きとおり具合が分かるだろうか?

この透明度はすごい。
上を見上げると、「景清つらら」と呼ばれる光景が広がる。所々にへこみがあるので、黒い何かがひそんでいる。これはコウモリだった。キイキイと鳴いていたり、飛んでいたりする。

足元はコンクリートで整備されており、歩きやすい。そこから外れるとゴツゴツした石や岩があるので、上を見ながら歩く際は要注意だ。

照明もあるので、順路もはっきりしていて歩きやすい。
自然が造り出した芸術作品たち
ここからは自然が気が遠くなるような時間をかけて生み出した、芸術作品ともいうべきものがたくさん見られる。それぞれに作品名のように名前がついている。
黄金岩

よく見てみると、キラッキラとした砂金のようなものが見える。しかしよく見ると人の顔のようなものも見えるがどうだろうか?
てんぐ岩
突き出した鼻のような岩が特徴的だ。
頭の上には烏帽子(えぼし)のようなものを載せているようにも見える。
へちまかべ

茶色の箇所は水がしみ出て、何かの成分が付着している。
胡瓜畑

胡瓜(きゅうり)畑なんてのもある。私が見落としたのかもしれないが、どれだろう?下にある岩なのか、壁なのか、よく分からなかった。
かくれ獅子

獅子が隠れそうな岩? それとも岩が獅子に見える? あなたはどっちだと思いますか?
しばらく歩いていると、平らな道だけじゃなく高低差のある箇所もある。少し登ってみることにした。

光と影が生み出した、地下要塞(ようさい)のような一面も見られる。
メロン天井

メロン天井なるものがある。下からみると、うっすら緑っぽいコケのようなものがあるのが分かる。あれがメロンなのだろうか?
近くに寄って見てみることにする。

近くにくるとよく分かるが、岩肌に裂け目が入っており、メロンの模様にそっくりだ。これがメロン天井といわれて納得した。

あけびの実

天井になっているあけびの実。よく熟れているあけびの実のようだ。

岩なのにこの滑らかさが表現されているのはすごい。自然には驚かされることばかりだ。
さいの河原

この暗さで「さいの河原」という単語にちょっとドキッとしたが、お地蔵様がいらっしゃいました。
景清の緞帳(どんちょう)

緞帳とは、劇場で垂れ下がっている厚手のカーテンのようなもので、舞台と客席を隔てるもの。そういえば学校の体育館にも垂れ下がっていた。
平景清を題材とした日本の伝統芸能作品が数多く残っている。人形浄瑠璃や能、そして歌舞伎。そんな平景清を舞台席から見るかのごとく、この緞帳が上がって、彼が登場するのを待っているかのようだ。
景清明神

生目八幡宮に続いて、この岩も平景清を明神様としてあがめているのだろうか?
竜神の森

これだけ澄んでいる湧水(ゆうすい)があるからだろうか。竜神も住んでいるかのようにも。
かくし舟

平景清がいつの日かここから出る日に備えて、岩に隠した舟なのかもしれない。そんな風に思いながら歩いているのも楽しい。
ほかにも驚いたのが、コケが生えていた。

わずかな光と水気で育っている。自然の生きる力、生命力に驚かされた。

歩いて奥まできた。ここで約700メートルにおよぶ「一般観光コース」は終わりだ。
そして本当の暗闇はここから

ここからは「探検コース」が始まる。ここから先は照明がないので、自分のライトだけが頼りだ。本当に暗闇の中を進むことになる。

この写真はミスでもなんでもなく、手元の懐中電灯を消して撮影したもの。本当に先は闇だけが広がっている。
はっきり言おう。こわい。私にはここから先に進む勇気はなかった。今度何人か一緒の時に挑みたいと思う。
1人でも平気だよ、という強者は是非チャレンジを。

無事帰ってこれたことにホッとした。
振り返ってみると、本当に平景清が潜んでいるような雰囲気満載の場所だった。こういった場所を訪れると、歴史で学んだことを身をもって体験できる生きた学習だ。時間が許す限り、全国の平家落人伝説の場所にも行ってみたい。
秋吉台「三洞物語」
この景清洞は、秋吉台にある「秋芳洞」「大正洞」と並んで、周遊して楽しめるスポットでもある。
そして、とあるアニメの聖地になり得るんじゃないかとも思っている。実は、日本テレビ系で放送されたテレビアニメ『葬送のフリーレン』のエンディングテーマとして流れている『Anytime Anywhere』。歌っているmilet(ミレイ)さんがMUSIC VIDEOを撮影していた。
このMVの中に景清洞と秋吉台の映像が出てくるとのこと。
(参考:美祢市観光協会HPより)
2026年1月からはアニメの第二期も放映されるし、個人的にもまた行ってみたい場所である。
※写真は全て筆者撮影
情報
場所:天然記念物 景清洞
住所:山口県美祢市美東町赤3108
入洞時間 8:30~17:15
※受付16:30まで(探検コースは15:30まで)
観光所要時間 目安:約60分
休業日:年中無休
交通アクセス:中国自動車道「美祢東JCT」経由小郡萩道路「絵堂IC」から車で5分
お問い合わせ TEL: 08396-2-2201





