「美しい郷」と「人」の力。あたたかく寄り添い五感を刺激し子どもを育む、『ほとり食堂』【秋田県美郷町】

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秋田県の横手盆地の東に位置し、町内各所に地下水が湧き出て「水の郷百選」にも選ばれるほど美しい水が豊富な美郷町(みさとちょう)。町の東側は奥羽(おうう)の山々が連なる自然豊かな美しい郷(さと)です。

そんな美郷町で、全国的に広がる子ども食堂のしくみを取り入れ、誰でも参加でき、町の食材を使った食育や、人と人との交流をテーマとした地域のコミュニティ活動を行う「ほとり食堂」があります。毎月第3土曜日に町内の3地域(千畑・仙南・六郷)を巡回する形で開催されており、2024年7月20日には千畑(せんはた)地区の北ふれあい館で第22回目の「ほとり食堂」が開催されました。

北ふれあい館は、2012年に閉校した旧千畑中学校の校舎を利用して公民館にしている場所で、広い調理室や和室などもあり、当日は「ほとり食堂」代表の阿部大地(あべ・だいち)さんとボランティアのメンバーが調理室でこの日のメニューを調理していました。

「世界を相手に」仕事をする地元企業の仕事を体験!

今回のほとり食堂に集まったのは地域の未就学児や小学生の13名とその保護者。

美郷町内で、半導体や様々なものに加工されるガラスを研磨する、株式会社斉藤光学製作所による「ガラスの傷をみつけよう」という体験が今回の催しでした。

斉藤光学製作所3代目社長の斉藤大樹(さいとう・だいき)さんと従業員の二人が手伝いながら、直径5㎝ほどのA、B、C、の各ガラスのうち、傷があるもの、気泡が入っているもの、異常がないものはどれであるか、それぞれが目をこらしながら真剣にガラスに向き合いました。

「みなさんはこの傷や気泡を見つけるのにとても時間をかけていましたが、これをお仕事でしている人たちは1枚10秒ほどで見分けていくんです」

斉藤社長がそう話すと、子どもたちから「えー!はやっ!」と驚きの声が上がりました。

たくさんのガラス製品を検品し、修復可能な傷であれば研磨し商品を製造しているという斉藤光学製作所。

斉藤社長(左)と手伝いに駆けつけてくれた従業員の方(右)がガラスの傷について説明する

「研磨というお仕事は水をたくさん使います。他の地域だと、きっと水道料が高くて大変なことになると思います。美郷町はとても水が豊富で安価で水をたくさん使うことができるすごいところなんです。また、原料となるガラスを仕入れたり、色々な技術をたくさんの人と連絡を取る必要があるので、いつも海外の人と英語でメールをしています。美郷町から、世界に向けて仕事をしているんです」

斉藤社長は、近い将来この地域から世界に羽ばたく子どもたちに向けて、美郷町には大きな可能性があるということに言及しました。そして、会場の旧千畑中学校の卒業生でもある斉藤社長は、この場所で子どもたちに地域の特色や良さを伝えられることができてとてもうれしいし、「ほとり食堂」の取り組みがとても素晴らしいと話してくれました。

地域から提供された食材がふんだんに。野菜たっぷりのメニューで「いただきます!」

交流イベントの終了後には、同会場で昼食会が開かれました。

この日は参加ボランティアの人数が少なかったこともあり、順番に並んだ人たちに阿部さん自らがごはんを盛りつけた皿を渡し、各自がバイキングのように好きなおかずを盛り付ける形式がとられました。

この日のメニューは、ギョーザと、ナスとピーマン、オクラの煮びたし、アスパラの卵炒め、デザートにはスイカと、テーブルにところ狭しと並べられました。地域から提供されたり、ボランティアスタッフが持ち寄った食材を使っています。

4人で参加した小学5年生の男子は「ギョーザが大好きなのでおかわりをして食べた。おいしかった!」と、部活などで参加できない日もあるけれど、予定が会えばいつも参加したいと話してくれました。

また、「他の子ども食堂は、食べてごちそうさまをして、それで終わりのところもあるのですが、ほとり食堂は地域のことや人のことも知れる交流イベントがあるのがとてもいいんです。予定が合えば必ず参加しています」。小学生の子どもを連れて参加した保護者からそんな声も聞くことができました。

▲斉藤社長も家族で参加
▲食事をしながら大人たちの交流も。阿部さん(左)と斉藤社長(右から2番目)

子どもたちを健やかに育む。大人たちがあたたかく寄り添うという意味を込めて名付けた「ほとり食堂」

▲今回のほとり食堂について説明する阿部さん

代表の阿部大地(あべ・だいち)さんは隣の横手市の出身。

美郷町に住むことを決めたときに、この地域に何の貢献ができるかを考え、自身が結婚し子どもができたタイミングたったことから、地域の未来を担う子どもたちの健やかな心身の育みに取り組みたいと思ったのがきっかけだったそうです。

「子ども食堂というと、食べ物に困っている人たちが行くというイメージが先行してしまいがちですが、子どもたちが楽しめて活躍ができる場所を作りたかったんです。また、子どもたちが大人になっても町に残って一緒に関われるものがあればいいなと。様々な年代や立場の人と五感を刺激し関われる、新しい時代の『子ども会』のような活動にしていきたいんです」

地域の未来を担う子どもたちの健やかな心身の育みに、大人たちがあたたかく寄り添うという意味を込めて「ほとり食堂」と名付けたと阿部さんは話してくれました。

2022年8月の初回から、クリスマス会や節分などの季節イベントや、地域の農園の一角を借りて野菜の種をまき、苗を育てるなどの食育にまつわる活動、また今回のように地元企業とのコラボなど、バラエティに富んだ企画で子どもと大人にも受け入れられています。

▲2024年6月のほとり食堂のようす

イベントの告知はInstagramを利用し、スタッフが撮影したものを毎回YouTube で発信しています。少しずつ認知が広がり、2023年の12月には地元六郷高校の生徒から校内で育てたシイタケやネギの寄付が届いたり、周辺企業の協力も得られたりするようになってきたと阿部さん。

▲ボランティアスタッフの食事のようすも撮影

ただの子ども食堂じゃない、地域の課題が解決できる場所を目指す

阿部さんは、美郷町で訪問介護を提供する株式会社Ccolor(シーカラー)の代表取締役でもあります。

日々の業務から、少子化や高齢化が著しい地域の課題を身をもって感じています。

また、美郷町は3町村が合併してできた町でもあり、「ほとり食堂」は学校や地域が違う子どもや親たちの話せる場所にもつながると考えています。

「ひと同士がつながって、それぞれが地域の課題を認識し、それぞれができることを少しずつ活動してくれるようになったら地域の課題は解決できるはずです。ただの子ども食堂ではなく、ほとり食堂から美郷町を変えていく仕組みにしていきたい」と阿部さんは力強く話してくれました。

※写真は全て2024年7月20日筆者撮影

関わりしろ

■子ども食堂の運営に携わりたい
・調理・後片付けなどの手伝いをしてくださる方
・食材の提供をしてくださる方
・地産地消、食育について子どもたちに伝えてくださる方
・子ども食堂の運営について知りたい方
・金銭面で支援をしてくださる方

■ほとり食堂のコミュニティ活動に参加してくださる企業や人
・仕事やご自身のスキルなどを通して、子どもたちに仕事や地域の魅力を伝えてくださる方

■地域を変えていく活動をしたい方
・子ども食堂にかかわらず、地域課題を解決したいと考えている方
・アイデアの提供をしてくださる方

問い合わせ先

事務局 ウォランタスみさと
美郷町六郷字宝門清水72-2フラワータウン1F(株式会社C color内)
代表:阿部大地
電話番号:090-8460-7216
Eメール:voluntas.misato.hotori@gmail.com
nstagram:https://www.instagram.com/hotorishokudou/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCs-r_168weeeIBYYhP2C2eA

オンライン開催
“あきたの物語”プロジェクト
〜地域の食を子どもと学ぶほとり食堂オンラインイベント〜
https://fb.me/e/4L2JTrjgI

◆日時:9月3日(火)20:00~21:30
◆オンライン開催

東京で開催!”あきたの物語”プロジェクト
〜地域の食を子どもと学ぶほとり食堂〜
https://misatocho.peatix.com
東京に阿部さんが出向き活動についてお話してくださいます!阿部さんの活動に興味のある方、ぜひ足をお運びください!!

◆日時:9月19日(木)14:00~16:00
◆場所:アキタコアベース
  〒104-0031 東京都中央区京橋2丁目6−13 京橋ヨツギビル
  JR東京駅から徒歩7分(八重洲地下街24番出口)
  東京メトロ銀座線京橋駅から徒歩2分(6番出口)
  都営浅草線宝町駅から徒歩2分(A5・A6出口)

 「関係人口による”あきたの物語”拡大事業」
 主催:秋田県
 企画・運営:秋田魅力発掘発信関係人口創出共同企業体
 (NPO法人こまちハート・オブ・ゴールド,合同会社イーストタイムズ)

「あきたの物語(https://kankei.a-iju.jp/)」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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