ローカリティ!時代の開拓者たち

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「お金を貸すこと」は目的ではない。“伴走者”として地域の中小企業を支え、金融の本質を問い直す【大分県大分市】

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1949年の創業以来、地域の発展と共に歩んできた株式会社豊和銀行。バブル崩壊後の不良債権問題に苦しみ、公的資金注入という難局を経験。その苦難の中で経営のかじを「地域・顧客目線」へと大きく転換させたのが、権藤 淳(ごんどう・あつし)代表取締役頭取です。「お金を貸すことは目的ではなく、一つの手段でしかない」。そう語る権藤頭取が描く、“新たな地域金融の姿”とは一体なんなのか。話を伺いました。

苦難の歩みと、経営者としての出発

権藤頭取は1976年、東京大学法学部を卒業後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。ジェーシービー(JCB)取締役を歴任した後、2009年、経営再建の途上にあった豊和銀行の専務に就任し、2012年には代表取締役頭取に昇格しました。

2006年、バブル崩壊後の不動産・建設関連融資の貸し倒れが深刻化したことから、総額90億円の公的資金注入を受けていた同行。しかし、想定を上回る不良債権の追加処理や収益力の低迷、内部管理体制の不備などから、当初の経営強化計画はなかなか進捗がみられませんでした。

転機は2014年。金融機能強化法の改正(2008年12月)により、公的資金の目的が「銀行を救うため」から「地域経済を守るため」へと大きく変わり、同行はこれを機に、前代未聞となる公的資金の「借り換え(再注入)」を実施しました。権藤氏は、当時の金融庁長官から紹介されたマイケル・ポーター教授の「CSV(共通価値の創造)」の考え方に共感し、「顧客第一主義」へとかじを切る決断をしたのです。

「“企業がビジネスを通じて社会の課題を解決し、社会的な価値と経済的な利益の両方を同時に生み出す”というCSVの考え方を知り、当時は目からうろこ。『地域のために何ができるか』を軸に、経営を根本から組み直していくことにしました」


「伴走者」としての在り方 金融の本質への回帰

「私が目指すのは、ブラインドマラソンのランナーの横でガイドロープを持って走る伴走者のような存在です」。権藤頭取は、銀行の役割をこう例えました。

「かつて銀行は、地域の人々が資金を出し合い、産業を興し街を支える存在でしたが、いつしか『融資をすること自体』が目的になってきてしまった。ネットで簡単に資金調達ができる今の時代に、当行が追い求めるのは違う」

「お金を貸すのは、あくまでお客さまの業績を良くするための一つの手段に過ぎない。本当の目的は、事業を成長させ、困難を共に乗り越えることだ」

決算書という過去の数字だけで判断するのではなく、自ら現場に足を運び、工場の稼働状況、従業員の表情・仕事振り、仕入れから販売までの一連の流れに直接触れることで、書類には現れない真の課題を見つけ出し、経営者とともに解決策を探ります。

「道に穴があれば事前に伝え、一緒に避けて前に進む。そうした関係性の先に、自然と融資や収益の機会が生まれる」というのが、同行の信念です。

「第三の本業」V サポート 金利競争からの脱却

こうした思いを体現するのが、預金・融資に次ぐ「第三の本業」として定着した、成功報酬型の伴走支援「V サポート」です。中小企業の「売上向上・業務改善」を目指し、展開しています。

最大の特徴は、単なる取引先紹介にとどまらず、事業のあらゆる悩みに最後まで寄り添い、ともに歩むことで、長く続く安定した関係をつくり上げる点にあります。

例えば、地元のある干物業者と取引先である旅館に関する印象的な事例があります。干物業者の商品を同行のネットワークを生かして旅館に紹介し、取引が始まりました。ところがしばらくして、「商品の大きさが不ぞろいなため、お客さまからのクレームが心配だ」と旅館から取引中止の申し出があったのです。

そこで同行は、両者の間に入って話し合いを仲介。「規格をそろえるには人手とコストがかかるが、単価を少し調整してもらえれば品質を安定させられる」という業者の事情を伝え、双方が納得できる着地点を探りました。結果的に価格を微調整することで合意し、継続的な取引を実現したのです。

さらに現在は、「売上は増えたのに利益が残らない」という企業の悩みに寄り添い、原価計算や工程管理といった内部体制の改善支援にまで踏み込んでいます。成功報酬は「1年間安定した成果が出てから」受け取る仕組みのため、銀行側も真に顧客の成功にコミットできるのです。

こうして同行は、金利競争に巻き込まれることなく、「事業そのものを支えるパートナー」として選ばれ続けています。

理念が育む文化と、これからの未来

同行は経営理念に「3つのC」として、「Contribution(貢献)・Customers(お客様第一主義)・Challenge & Change(挑戦と変革)」を掲げています。「お客さまに貢献することが、巡り巡って銀行と地域の未来につながる」という考えは、社内全体に浸透しつつあります。

「最初は『融資につながらないのでは』という不安もあった。だが、人は助けてもらえば恩返しをしたくなるもの。事業をともに育てれば、いざという時に真っ先に相談してもらえる」と権藤頭取は話します。

こうした姿勢は、同行を志望する人材にも表れています。近年の採用では「V サポートをやりたい」「大分に恩返しがしたい」と志望する若者が大半を占めていると権藤頭取。「お金を貸す」という従来の役割から、「課題を見つけ解決する」役割へと発想を転換することが、同行の最大の強みとなりつつあるのです。

創業から75年余り。苦難の中で得た教訓を胸に、豊和銀行は「地域の伴走者」として、企業とともに走り、ともに成長する道を歩み続けていきます。

最も印象に残った言葉

「お金を貸すことは目的ではなく、一つの手段でしかない」

聞き手:ローカリティ! 編集長 中野宏一 書き手:ローカリティ!編集部 猪股豪
※写真はすべて株式会社豊和銀行提供

企業情報 

会社名:株式会社豊和銀行
創業:昭和24年(1949年)12月22日
本店所在地:大分県大分市王子中町4番10号
経営理念:

  1. Contribution(貢献)
  2. Customers(お客さま第一主義)
  3. Challenge & Change(挑戦と変革)

公式HP:https://www.howabank.co.jp/

猪股 豪

猪股 豪

宮城県加美町生まれ・在住。地方創生に興味を持ち政治の世界へ。国会議員秘書を経てまちづくりに取り組む。

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