IJU株式会社
Kaori Ueda
上田 香織氏
沖縄のIJU(アイジェイユー)株式会社は広告代理店業からスタートし、観光情報フリーペーパーの制作、システム開発など、2002年の創業から今日にいたるまで、少しずつサービスの幅を広げ続けてきました。2代目の代表取締役・上田 香織(うえだ かおり)さんに長く存続できた秘訣を伺うと、「社員の適材適所に努め、クライアントとじっくり向き合える体制を常に心がけていることが理由のひとつかもしれない」と、あくまで謙虚。しかしその言葉の裏には、社員に対する深い愛情と、事業にかけるブレない思いがありました。
広告代理店業からシステム開発まで。時代の要請に即して事業を拡大
02年に設立した経緯から教えていただけますか?
私は2代目の代表取締役になります。実質、創業者がペーパーカンパニーの会社を再建させる形で、現在の業務に通じる広告代理店業を始めました。私自身は大阪出身で別の会社でデザインなどの仕事をしていたのですが、縁あって創業者と知り合い、まずはグラフィックや経理などを、大阪にいながらリモートで手伝うようになりました。
移住当時、創業者は、沖縄出身者ではないということが障壁となって、会社運営が思うように軌道に乗らず苦労していたようです。そのような状況もあり、長くお手伝いしていた私に「本格的に仕事を手伝ってほしい」と声がかかり、12年ほど前に大阪から沖縄に移住することを決意しました。そして数年後、依頼され代表取締役に就任しました。
当初は広告代理店業がメインだったとのことですが、現在はWeb制作やシステム開発、フリーペーパー制作などさまざまな事業を展開しています。変遷の経緯を教えてください。
広告代理店業からの派生でチラシやパンフレットなどのグラフィック制作を手がけていましたが、時代の要請にともないWebサイト制作を望むクライアントさんが増えてきました。当時は、企業の公式サイトをもつことが一種の流行だったので、制作できるスタッフを雇い、対応していました
利益を生み出しにくいフリーペーパーを続けるワケ。コロナで滞った窓口業務を救うシステム
フリーペーパー事業についても詳しくお聞かせください。
「たのしま(楽島)」というフリーペーパーを企画・運営・発行しています。10年ほど前に石垣島と宮古島を拠点に別の会社が制作していましたが、その会社がフリーペーパー事業から撤退することになり、ご縁があって事業ごと譲り受けたのです。その後しばらくして、未着手だった沖縄本島版を新しく創刊することにしました。
コロナの影響を受け、観光客をターゲットにしていた沖縄のフリーペーパーはほとんどが廃刊してしまいました。正直、弊社としても雑誌という媒体は利益的に非常に厳しいです。しかし観光立県である沖縄の会社である以上、観光客へ有益な情報を発信することは意義があり、社会にも貢献できると考え、Web展開や県外の配布場所の拡大など、試行錯誤しながら何とか存続させています。とはいえ、今のところ事業の主軸はWebシステム開発で、そちらに多くのリソースを割いています。
どのようなシステムを手がけているのでしょう?
代表的なものが、行政が管理している公共施設の予約管理システムの開発です。公共施設を予約するためには現地まで直接行く必要があったり、平日しか受け付けていなかったりと昔ながらの方法がいまだに残っていて不便極まりないという現状がありました。それらを改善するために、大規模な会議やイベントなどMICE事業を手がける会社と共同で、アイデアを持ち寄り、弊社が開発しました。
開発後すぐにコロナ禍にみまわれて公共施設の窓口業務が滞る中、時代の要請もあり、このシステムが徐々に使われるようになりました。現在では10近い自治体に導入され、長野県など県外にも少しずつ広がり始めています。
Webサイト制作にもリソースは割いているのでしょうか?
システム開発ほどではありませんが、フリーペーパーへの掲載をきっかけに取引が生まれたクライアントさんを中心に制作から運営まで請け負っています。
Webサイト制作に関しては積極的に営業を行うというより、クライアントさんへ提供できるサービスの一貫として取り組んでいます。そうすることで長く深くお付き合いできるようになることが期待できるので、やはりフリーペーパー「たのしま」は、弊社にとっても重要で必要なコンテンツだと感じてます。
長く存続する秘訣は「1人1人と真摯に向き合うこと」。時代に合わせた柔軟な事業展開も鍵に
創業20年以上経ちますが、長く続けられる秘訣を教えてください。
一つ言えるのは、1人1人のクライアントさんを大切にしている点だと思います。先代の社長は経営コンサルティングを専門としていました。先代から受け継いだ教えとして、「クライアントが何に困っていて、何が必要なのかを丁寧にヒアリングし、課題解決のための提案を真摯に行うべし」という理念があります。売上のためにやみくもに営業を強行することはナンセンスで、クライアントとWin-Winの関係を築くことが最も重要であると。
この考え方は社員に対しても同様で、1人1人の得意とすること、やりたいことを尊重して業務分担をしています。それぞれ個性がありますので、画一的な指導では社員の成長を後押しできません。例えば、営業担当の社員へは「苦手なクライアントのところには無理に行かなくてもいいよ、その代わり、こちらのクライアントの方が合うかもしれないからトライしてみては?」と、適宜促しています。営業面ではかなり緩い会社だとは思いますが、プログラマーや制作担当の社員もしかりで、得意なことを伸ばした方が成果につながりやすいと考えています。
二つ目の秘訣かもしれないと感じているのは、臨機応変に事業を増やしたり、変化させたりしている点かもしれません。もともと広告代理店業からスタートし、グラフィック制作、Webサイト制作、システム制作と、少しずつ事業領域を拡大していきました。飛びぬけて成長した時期というのはありませんが、必要に応じて都度対応してきた積み重ねが、存続の鍵ではないかと思います。
「猛獣使い」として、社員がのびのびと能力を発揮できるような環境づくりに尽力
新事業を始めるためには大きな労力が必要だと思いますが、なぜそれを実行し続けられるのでしょうか?
社員の自発的な働きのおかげだと思います。例えば、月曜日は定例ミーティングを設けており、活発に意見が交換されています。1人の社員が外部の講習などで得た知識を共有したり、アイデアを出し合ったりと、積極的な社員が多いように感じます。もちろんそうでない社員もいますが、積極性のある社員が引っ張っていけばいいことですし、レールを敷いてあげた方が力を発揮してくれる場合もあります。
そのような自由で活発な雰囲気づくりのために、上田さんご自身で心がけていることはありますか?
「猛獣使い」と言われることがあるのですが、個性的なメンバー1人1人をよく観察し、相性や適正を鑑みてメンバー同士をつなげるように心がけています。弊社にはママパパ世代が多いこともあり、あまり飲み会などは設けないようにしています。良くも悪くも飲み二ケーションは人となりがあらわになってしまうものなので、仕事面では不要な場合もありますし。その代わり、話しかけたり相談に乗ったりと、日常の中でできるだけコミュニケーションを取っています。私自身はプログラマーでもWebデザイナーでもありませんので、具体的な手助けはできません。その代わり、それぞれの専任の社員が快適に仕事をできる場を提供することが、社長としての務めだと考えています。
ツアーサイトと紙媒体を紐づけてフリーペーパー事業再燃へ。子育て・介護中の方でも歓迎
目標を教えてください。
まずはフリーペーパー事業を再び盛り上げたいです。実はコロナの少し前に、大手の別の会社が運営していた、マリンレジャーなどのオプショナルツアー販売サイトを譲り受けたのですが、手つかずのままなんです。そのサイト運営のためにツアーを販売できる資格を取得したので、今後はこのサイトを「たのしま」に紐づけて、紙とWeb媒体の両方で積極的にオプショナルツアーの販売に注力したいと考えています。
最後に、どんな方と一緒に働きたいと思いますか?
積極的に発言し、自発的に動ける方に参画してもらえると助かりますね。今いる社員の多くが積極的なので、彼らとともに切磋琢磨していける人材を求めています。
また、弊社はコロナ前からリモートワークを推奨していました。毎週月曜日だけはミーティングを設けており出社が必要ですが、それ以外は9時から5時まで必ず会社にいる必要はなく、各々の裁量での出社が可能です。例えば子育て中の方や介護中の方でも、都合がつく時間帯で働いていただけますので、どんな方でもぜひ遠慮なく参画していただければと思います。
取材日:2024年8月5日
IJU株式会社
- 代表者名:上田 香織
- 設立年月:2002年4月
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:たのしま、ICT事業(Webマーケティング、ITシステム、サイト運用、管理)、観光科学開発事業、総合広告代理事業、ビジネスコンサルティング事業
- 所在地:〒900‐0015 沖縄県那覇市久茂地2-21-1 渡口万年ビル 201
- URL:https://www.ij-u.co.jp/
- お問い合わせ先:098-988-4681
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