「院内が俺の東京」オンリーワンじゃなくていいまちづくりとは。院内地域づくり協議会会田一男さん【秋田県湯沢市】

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▲院内地域づくり協議会会長を務める会田一男さん

 「住んでいる自分たちが楽しまなければ周りの人も移住してくるわけがない!」

その言葉をきっかけに、秋田県最南端に位置し物理的に東京に最も近いであろう「院内(いんない)」という地で長年地域づくりを行うのは、院内地域づくり協議会会長を務める会田一男さんである。取材の中で秋田弁を交えた”会田節”連発で周りの空気すらも温まるような会田さんのお話を伺った。

▲駅に併設されている院内銀山異人館

人口1,230人、高齢化率52.6%、平均年齢60.7歳。この少子高齢化を象徴するような数字が並ぶのは2023(令和6)年3月末現在の院内地区のことである。

約420年前に開山した院内銀山はかつて東洋一の産出量を誇ったといわれている。しかし、銀貨が暴落してしまったことや災害の影響などにより院内銀山は1924(昭和29)年に閉山した。

銀山の中に唯一残っている県指定の史跡が金山神社だ。2006(平成18)年の大雪の影響で金山神社の屋根が崩落してしまい、このままなくしてしまうのはもったいない、あるべきものはあるべきところに残すべきだ、ということで立ち上がったのが「院内銀山史跡環境整備実行委員会」である。

無事に修復事業は成功に終わり、完成記念事業を行ったのちに、「このまま団体が解散してしまうのはもったいない!」という思いから会田さんはNPO法人おがちふるさと学校を立ち上げた。

2005(平成17)年に湯沢市では大きな市町村合併がなされ、それをきっかけに院内地域づくり協議会が地域自治組織として設立された。しかし、それらの地域づくりに携わる会の会員はほとんどが年長者であり、これでは地域の若者の声が取り入れられないというのが問題点であった。そこで、会田さんのバックアップのもと、院内の若者団体として「いんない未来塾」が2018(平成30)年に設立された。

これら3団体が互いに連携しあうためのキーパーソン、つまり院内の地域づくりのまとめ役の1人が会田さんというわけである。

なぜここまでして会田さんは院内のまちづくりに尽くせるのか。そのきっかけは学生時代からの会田さんの院内愛にすべてがある。

 「雄物川止めでやる!」

湯沢市より北側にある秋田県横手市の高校に通っていた会田さん。秋田県南部を流れる県最大の河川である雄物川は湯沢市側を上流として横手市に流れている。「院内なんか、湯沢なんか」と横手側の友人たちが発する、湯沢を軽んじる言葉を耳にするたび会田さんは「上流から雄物川を止めてしまえば横手に住んでいる友人たちは生活できないくせに!」というユーモアを含めた反抗の思いで「雄物川止めでやる!」と、この言葉を発していたそうだ。このひとつのエピソードからも会田さんらしい院内愛の深さが感じられる。

 「院内が俺の東京」

東京にあこがれて、学生時代に東京に行った経験を持っている会田さん。最先端の空気に触れたのち、ふるさとの院内へ帰ってきた。そんな会田さんは「自分にとっての東京は院内」だという。最先端を求めて、よりよい場所を求めて東京に出てしまう人が多い中、自分で自分のまち院内をつくってしまえば、それはもはやあこがれの町「東京」になりうるのである。自分のあこがれは自分でつくり、つかむものであると会田さんのお話から教わった。

▲イベントであいさつをする会田さん

 「女性に好かれるまちづくりを。オンリーワンではなく、まねしてつくりたい」

 新しいものを作る必要は全くないと会田さんは言う。わざわざリスクを背負ってまで新しいものを生み出すより、すでに成功している例をまねして自分たちも成功すればよい。とくに女性の心をつかむようなキャッチーなものは目に留まりやすいのでまねするべきだと話す。会田さん自身は自ら訪れた湯布院の町が好きだそうで、そのような魅力的な街づくりを提供していきたいそうだ。

「気軽に遊びに来れるようなまちを提供したい」

会田さんのご自宅は院内駅の近くにある。そのご自宅を近々ゲストハウスに改造しようと考えている。地元の方のお話によると、会田さんのご自宅はすでにゲストハウスであるかのように多くの来客者がいるそうで、地域の人の憩いの場の一つとなっている。

院内駅前には院内石を使ったピザ窯でピザ手作り体験ができたり、天然温泉の施設など観光施設としての魅力がたくさんある。院内駅でフラっと下車して立ち寄ってもらう、「気軽に遊びに来れる」そんなまちをつくりたいそうだ。

▲院内石のピザ窯

会田さんの「俺の東京」にぜひ足を運んでほしい。

照井楓さんの投稿

情報

湯沢市 院内地区センター:〒019-0112秋田県湯沢市下院内横川193

ふるさとミライカレッジ×ローカリティ!in湯沢院内

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「ふるさとミライカレッジ」は、秋田県が進める地域づくりワークキャンプです。
今回はカリキュラムのひとつとして「ローカリティ!」が湯沢市院内地区においてワークショップを実施し、参加した大学生たちが地域の人に出会い、祭りや地域の宝、そして日々の営みを取材をし、記事制作を行いました。

その土地に、何か想いを持てば、 そこはあなたの大切なふるさとになります。 大学生のフレッシュな視点で綴られた、地元愛爆発の素敵な記事をご紹介します!

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