トイレだけでなくキッチンにもTOTO。技術革新と品質確保を極め、永続していく会社を目指す〈TOTOプラテクノ株式会社 阿部剛士さん〉【福岡県豊前市】

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「私の夢は、“会社を永続させていくこと”。これは毎年入ってくる新入社員が定年退職するまで会社が存続し続けてほしいからです」。そう話すのはTOTOプラテクノ株式会社の代表取締役社長・阿部剛士(あべ たけし)さん。1917年、福岡県北九州市で日本初の衛生陶器の製造会社として東洋陶器株式会社(現在のTOTO)が創立され、1973年にグループ会社としてTOTOプラテクノ株式会社の前身となる福岡東陶株式会社が誕生しました。TOTOプラテクノは、TOTOの「洗面カウンター・ボウル」「便器に関わる樹脂商品」を主に製造。「世界中にTOTOファンを増やしていく」TOTOグループの国内製造企業です。

安心して気持ちよく暮らすために、日常に欠かせない商品作りを担うTOTOプラテクノ。世界中のお客さまの日常がもっと快適に過ごせるようになるために、同社が成長し続けるには「“人”の力が欠かせない」と話す阿部さんにお話を伺いました。

受賞確率2%未満の賞を受賞したシステムキッチン「THE CRASSO」

TOTOは100年以上の歴史を誇る水まわり設備の製造・販売を手がける住宅設備機器メーカーです。TOTOプラテクノはグループ内での合併などを経て、2013年に発足しました。豊前工場(福岡県)、苅田工場(福岡県)、勝浦工場(千葉県)、奈良工場(奈良県)の4つの生産拠点で600名以上の従業員が働いており、TOTOグループの国内製造拠点として稼働しています。

TOTOプラテクノの事務所(豊前工場横)

TOTOプラテクノではキッチンカウンターの製造も行っています。TOTOシステムキッチンの最上位モデルである「THE CRASSO(ザ・クラッソ)」は、世界最大級の国際的なデザインを称えるドイツの「レッド・ドット・デザイン・アワード2023」で、「ベストオブザベスト」を受賞。これは日本国内のキッチン設備としては初受賞であり、レッド・ドット応募商品(約6000点)の中でも受賞確率2%未満の賞です。

THE CRASSO

「クリスタルカウンター」の魅力とは?

THE CRASSOに使われるクリスタルカウンターは、一連の工程における、材料調合・成形・加工・検査の4つの工程において、品質確保へのこだわりが集約されています。それにより、高い透明感を実現しているほか、自然光や照明などの光によってカウンターの表情が変化するため、日々の生活に明るさをもたらすことができる特徴的なデザインを実現させています。また耐熱性が高く、暮らしの中でお手入れがしやすく清潔に保てることも魅力のひとつです。

クリスタルカウンター
バックコートがクリスタルカウンターの中に光を閉じこめ空間を明るくする

油性ペンで書いても、すぐに消えるほどお手入れがしやすい
※写真左がクリスタルカウンター。右側は同様の処置をしても汚れが残っている様子が伺える

「”人”の力が欠かせない」と感じたのは過去の経験から

2023年からTOTOプラテクノの代表取締役社長を務める阿部さんは、入社当初は主に技術部門などで新商品の開発などに携わっていました。営業部門に転籍後「いくら自分で良い商品だと思っていても、販売店様や施工業者様に賛同いただけないとお客さまにその価値が伝わらないし、購入していただくことができない」と実感したそう。今でもTOTOプラテクノの社員と一緒に販売部門や社外パートナーと話す機会を意識してつくり、製品のアドバイスなどを聞いているそうです。

阿部さんはその後、中国・上海でウォシュレットなどの製造会社の董事・総経理(とうじ・そうけいり)※として赴任しました。上海でのコロナ禍でのロックダウン時にも多くの社員の協力のおかげで製品の供給責任を果たせた時にも、“人”の大切さを痛感したと言います。

※中国での董事・総経理は、日本での代表取締役社長

年間離職率1%の永続する会社は、社員仲が良好の証

TOTOプラテクノは「離職率が年間1%程度」だと言います。その秘訣とは一体何なのでしょうか?

TOTOグループ全体で進めている働きやすい環境整備もさることながら、阿部さんは“社員同士の仲の良さ”を強調します。「仕事終わりにテニスやバドミントンをしていたり、去年は餅つき大会があったり。アフターファイブでメリハリをつけ、業務中でも何かあったら相談ができやすい関係性を作っていることも大きい要因だと思います」

ベテラン社員が多いと技術は自ずと上がり、さらに若手との仲が良好なことによって技術の伝承ができ「品質・作業効率・生産性もどんどん上がる好循環が出来上がっている。まさに強い”人”が育っている」と阿部さんはうれしそうに語ります。

TOTOプラテクノが永続する”ための日々の意識とは?社員のチャレンジする意識を引き出す

「TOTOプラテクノを永続させたい」と語る阿部さんが会社づくりで日々意識していることがあるのだとか。

「永続していく会社というキーワードが私は大好きです。だから在籍している私たちの役割は、毎年入ってくる新入社員が、定年退職するまで会社を存続させ続けることだと伝えています」。これは年に2回の方針説明会で全社員に向けて必ず伝えている言葉だといい、社内で視座を合わせているといいます。

また、社員のチャレンジする意識を引き出す工夫もしています。

「TOTOプラテクノにもすごく優秀な技術者がいて、良い仕事をしているのに、TOTOグループ内や社外の成果発表の場にはあまり出場していなかった」そうです。そこで阿部さんは社員の背中を押すようにしました。「一例で言うと、TOTOグループ内にCS(お客さま満足)大会というお客さま視点での活動事例を競う大会があります。昨年は苅田工場の事例が銀賞を受賞。他の製造改善などの表彰にも多くのメンバーがチャレンジし良い成果が出るという好循環が生まれつつあります」これにより、ほかの社員のモチベーションも上がり、業務の成果としても表れていると言います。「引き続き技術力や生産する力を、他の製造グループ会社にも負けないよう、少しずつ高めていきたい」と阿部さんは意気込みを語ります。

技術力や生産する力を、グループ会社内でも負けないよう、少しずつ極めています。

機械化しても再現できない。最終確認は必ず人の目と手で 

デジタル化が進む昨今、TOTOプラテクノでは品質管理のKPIとして「品質不具合を出さないこと」を明確に掲げています。その取り組みの成果として、現在では品質不具合件数は年に1件あるかないかの水準にまで達し、品質は非常に高いレベルを維持しています。こうした成果は一朝一夕で実現できるものではありません。

特に「検査の面で徹底的な品質へのこだわりを持ち、社内検査資格を持つ検査員による厳しい検査工程を経てお客さまに良品のみを届けている」といいます。阿部さんは言葉を続けます。

「その高品質を支えているのは、“人”だと思います。最終的には人が使うものだから、ここを機械に判断を委ねたらいけない。最後の仕上げも機械技術は、人の感覚、職人の匠の技術には及ばないですね。これは機械化してもなかなか再現できないと思います。そして必ず最後は人の手で仕上げ、人の目で検査をすることで、機械では見逃してしまう違和感にも気がつくことができます」。

人を大切にし、人を尊重するからこそ、積み上げることができた技術がある。TOTOプラテクノが永続していくための挑戦は、これからも続きます。

TOTOグループが大切にしている社是

聞き手:三芳洋瑛、執筆:藤木彩乃

藤木彩乃

藤木彩乃

福岡県生まれ、沖縄県宮古島育ち、長崎県壱岐島在住。
けしごむはんこ「あやとりや」という屋号で作家活動をしています。最近はサーフィンと植物/野菜を育てることにハマってます。

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