里山×アートの祭典「かみこあにプロジェクト」を盛り立てる『こぶすぎ隊』を募集!【秋田県上小阿仁村】

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▲上小阿仁プロジェクトの作品制作の様子。村を流れる小阿仁川からインスピレーションを受けたのだろうか

集落を歩けば栗の花の匂いが立ち込め、山を仰げば一面の緑。村に響く鳥たちの声。オフシーズンのスキー場のふもとでは、「どうぞご自由に」と言わんばかりに山菜のわらびが群れを成します。

秋田県上小阿仁(かみこあに)村。人口およそ2000人、高齢化率は秋田県内トップと言われる静かな里山で、2012年から毎年行われているアートの祭典、「かみこあにプロジェクト」をご存知でしょうか。コロナ禍においては一時中断しながらも、来年は10周年を迎える「かみこあにプロジェクト」では、この秋、プロジェクトを多方面からサポートしてくれる「こぶすぎ隊」を募集しています。

「こぶすぎ隊」とは何をするのでしょうか?そもそもどんなプロジェクトなのでしょう?

イマジネーションを刺激する、“神”が住む限界集落

里山の魅力を発信する「かみこあにプロジェクト」が、他の村おこし事業と一線を画すのは、地域の名産品を加工して売り出そうというのでも、その土地のまだ見ぬ魅力を掘り起こそうというのでもなく、「村を訪れたアーティストに、村を体感して得られたインスピレーションをもとにアート作品を創造してもらい、集落や廃校などに展示して村を表現してもらおう」というのだから興味津々です。

秋田の美大出身者などをはじめとした、村に魅せられたアーティストらはその場所を、“桃源郷”、“楽園”、“上小阿仁のカミは神様のカミ”などと言っては創造力をかき立て、彫刻や絵画、また独自の素材を使って、村の風景や歴史、文化と一体化しようと制作に没頭します。

▲杉の木の常識を覆す、秋田県上小阿仁村の象徴「コブ杉」

いったいこの村には何があるのでしょうか?!そして、日曜の午後なのにテニスコートに誰もいない(テニスコートはある)、“カミ”の住む限界集落で、「こぶすぎ隊」には一体何ができるのか!?上小阿仁村の地域おこし協力隊の折笠昭宏(おりかさ・あきひろ)さん(39)にそのもくろみと、かみこあに愛を語ってもらいました。

▲「車、ほとんど通らないのでどこに停めても大丈夫ですよ(笑)」と、地域おこし協力隊の折笠昭宏さん。村が一望できる丘の上で

“外の人”、“中の人”ではなく、「おらえの村のイベント」として復活させたい

「上小阿仁プロジェクトは、もともと新潟で行われている『大地の芸術祭 越後妻有(えちごつまり)アート・トリエンナーレ』の飛び地開催地として、上小阿仁村で行うようになったのが誕生のきっかけです。村の人たちから見ると、始まった当初こそ『アートって何?』という感じでしたが、作家たちとの交流が深まるにつれ、少しづつ理解が得られていった感じですね。作品を難しく考えず、この絵、きれいだね、なんか面白いね、って感じてくれればいいと思っています」と折笠さん。

しかし、この10年間を遮るように訪れたコロナ禍により、一時は中断を余儀なくされたプロジェクト。その間に、自分たちの村でやっているんだというプロジェクトへの思いがクールダウンしてしまった感も否めないといいます。

▲アート作品のひとつ。村自体が小粋な博物館のよう

 「立ち上げから4年後の2016年に、村の人たちが中心となってやっていこうと、現在の『KAMIプロ・リスタ実行委員会』が発足しました。しかしコロナ禍で一度中断したことによって、村の一イベントというより、外から来た人たちが何かやってるみたいな認識になってしまった気がするんです。周知の仕方に問題点もあったとは思うのですが…」と折笠さん。

来年の10周年に向けた準備の年でもある今年は、全国から応援隊を募り、新しい意見を取り入れながら、こんなに注目されている村なんだということを、住民に実感してもらいたいという希望もあります。

▲アートトリックを思わせるこちらは本物の橋。真ん中がくぼんでいるのがお分かりだろうか

アートが分からなくても、全国どこででも「こぶすぎ隊」はできる

「コブ杉」というのは、樹齢250年の天然秋田杉の幹に、これまた大きな「コブ」が張り付いている、それ自体がアートと言わんばかりの上小阿仁村の象徴です。そこから命名した「こぶすぎ隊」について、折笠さんはこう語ります。

「実際に村に足を運んで、会場となる場所の整備をする以外にも、例えばオンラインで委員会に加わって意見を出してもらうことも歓迎します。そういう意味で、昨今は関係人口の関わり方に距離がなくなったなと感じます。どこにいてもこぶすぎ隊はできる。行ったこともない村のプロジェクトに関わっているっていうのも、なんか面白いじゃないですか」。

特にアートに詳しくなくても、草刈りでも掃除でも、どんな形でも良いので関わってくれる人が欲しいと折笠さん。また、こぶすぎ隊が縁でつながった人たちとは、プロジェクトをやっていない間も関係が途切れないように、作家やサポーターたちが気軽に出入りして交流を深められる“拠点”も作りたいといいます。そうしてプロジェクトを盛り上げ、折笠さんが最終的に目指す上小阿仁村の姿はどんなイメージなのでしょうか。

▲集まってくるのはアーティストばかりではない。ギャラリーやサポーターも大事なプロジェクトの仲間。村人たちと交流し、プロジェクトに“関わる”

目指すのは、村人と、訪れる人たちとのつながりの構築

「訪れてくれた人たちに向けて、村を知ってもらうためのツアーをやったり、集落でアートのワークショップをやったりして、村の人たち、作家たち、こぶすぎ隊の各々がつながりを持ち、コミュニケートすることによって、プロジェクトそのものが特別なことではなく、村人たちにとって当たり前のものになっていく空気を、もう一度作りたいと思っています」。

さらに折笠さんは、こんなことにも切り込んでくれました。

「最終的に雇用が生まれないと意味がないと思っています」

村に雇用を、子供たちに郷土愛を。食べていける、誇りの持てる村に

「芸術」と「雇用」。この一見相反するワードが出てきて、ますます興味をそそられました。

「プロジェクトについて、ボランティアではなく仕事として認識され、イベントで食べていけるようにならないと地方創生としては難しいのではないかと考えます。今はほとんどボランティアで成り立っていますが、事務局に常駐してつないでくれる人がいれば、消滅はしませんよね。一人分からでもいいので人件費を出せるようになりたい。秋田の人はお金の話をしたがらない傾向があるように感じます。もちろんお金がすべてではないですが、続けていくためには大事な部分です。だから『こぶすぎ隊』も、興味と好意に頼り切るのではなく、きちんと継続したつながりを築いていけるように考えています」。

▲向かい側に新しい保育園ができたため、現在は使われていないノスタルジックな旧保育園。こちらも今年のプロジェクトに一役買う予定

「そして、上小阿仁村には高校がないので、子供たちは中学を卒業すると近隣の市内の高校に通うようになります。課題は、中学までにどう郷土愛を育んでいけるか。心に残るイベントとか誇れるものがないと、大人になってからここに戻ってこようとは思わないですよね」

あふれんばかりの緑を眺めながら、折笠さんは村の未来に思いをはせます。

「僕はここが、最高だと思う」

課題は山積のようですが、上小阿仁村は、頼もしく愛あふれる協力隊を得たようです。秋田に素晴らしい場所や人は山ほどあれど、「行ってみたいな」と思われるには、そこに暮らす人が楽しそうかどうかにかかっているのではないでしょうか。最後に、地域おこし協力隊の任期が終わった後はどうしたいか、折笠さんに尋ねると、質問が終わらないうちから「定住します」と返ってきました。

「深入りしすぎない、心配しすぎない、人とのちょうどいい距離感がここにはあるんですよ。いや、心配はしてくれますよ(笑)。ただ適当に放っておいてくれるというか。何もないと言われますが、それが良くて来ていますし。人との距離感も、物理的な距離も、ストレスが都会とは全く違います。何を魅力に感じるかは人によりますが、僕はここが最高だと思っています。住まわせてくれてありがとう、ですよ。言葉(秋田弁)はいまだに分かりませんが(笑)」

▲「ここが最高」と言う折笠さん渾身の一枚。この風景を見つけた時の感動が伝わってくる(写真:折笠さん提供)

アーティストを惹きつけてやまない里山、その里山が「最高だ」という折笠さん、そして、手つかずの大自然などと、手あかの付いた言葉では表せない、“神”が住む(かもしれない)限界集落が、いったいどんな“楽園”なのか。芸術の秋、「こぶすぎ隊」となってその全容を探検してみると、きっと「農村」のイメージをユニークに覆す感動が見つかるに違いありません。

「こぶすぎ隊」関わりしろ

作家やサポーターたちが気軽に出入りし、村の人たちとも交流を深められる“拠点”をつくり、そこに関わっていただく方を募集しています!

・上小阿仁村をおとずれてみたい方
・アート作家・作品に興味があり、作家の方と交流をしてみたい方
・現地会場の整備サポーターとしてかかわって下さる方(草刈り・掃除どんな形でもOK)
・現地に来なくてもオンライン委員として意見の提供をしてくださる方
・現地に来て「こぶすぎ隊」プロジェクトに関わりたい方

【かみこあにプロジェクトの期間】9月~10月
【こぶすぎ隊の募集期間】7月下旬~


【お問い合わせ・申込先】KAMIプロ・リスタ実行委員会 
・電話:090-1068-2577(会長:田中さん)/090-9147-3777(事務局:折笠さん)
・メール:kamipro.re.since2016@gmail.com
・住所:〒018-4421 秋田県北秋田郡上小阿仁村小沢田字向川原72-2 
 コアニティー地域おこし協力隊オフィス内  

 「あきたの物語(https://kankei.a-iju.jp/)」は、物語をとおして「関係人口」の拡大を図ることで、県外在住者の企画力や実行力を効果的に生かした地域づくりを進め、地域の課題解決や活性化を促進する事業として秋田県が2023年度から始めました。秋田県や秋田にまつわる「ローカリティ!」のレポーターや地域の関係者が、秋田県各地の人々の活動を取材し「あきたの物語」を執筆して秋田県を盛り上げています。 

田川珠美

田川珠美

秋田県秋田市

編集部校閲記者

第1期ハツレポーター/移住と就業促進の仕事に関わってから、知らなかった魅力や課題のあることに気づきました。雪国のあたたかく柔らかい秋田を届けたいと思っています。ライフワークはピアノを弾くこと、ワクワクするのは農道探索、そして幸せは、心のふるさと北秋田市の緑の中をドライブすることです。

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