ナマハゲを学ぶ学問!?ナマハゲ伝導士認定試験で男鹿の文化とナマハゲの真意を深く学べ!【秋田県男鹿市】

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▲写真提供(一社)男鹿市観光協会

男鹿(おが)の「ナマハゲ」行事をご存じでしょうか?

ナマハゲ行事は、毎年大晦日の夜に男鹿半島のほぼ全域の集落ごとに行われます。ナマハゲは男鹿市にある真山と本山という山に鎮座する神々の使者として、年に一度各家庭を巡り「怠け者はいねが!泣く子はいねが!」と、人々の悪事を戒め厄災をはらい、豊作・豊漁・吉事をもたらす来訪神として古くから伝統を受け継ぎ続けられています。


ナマハゲ行事は1978年に「男鹿のナマハゲ」として国重要無形民俗文化財に指定され、また2018年にはユネスコ無形文化遺産「来訪神(らいほうしん):仮面・仮装の神々」のひとつとして登録されています。今なお多くの謎が残されているものの、大切に守られ継承されている男鹿の独自の文化です。

ナマハゲを正しく恐れる真意を学ぶナマハゲ伝導士

ナマハゲ伝導士認定試験(以下認定試験)は、男鹿に古くから伝わるナマハゲの文化を正しく理解し、その本来の意味を広めることを目的として、(一社)男鹿市観光協会が毎年実施している認定試験で、試験を通じて、ナマハゲの習俗やしきたりに対する知識を深め、保存伝承の担い手として活動できる力を養います。

今年で22回目を迎え、毎年80名の定員を上回る応募がある人気の認定試験ですが、この試験が行われるようになった経緯を男鹿市観光協会の事務局長 佐藤豊さんはこう話します。

「テレビなどの普及によってナマハゲが全国的に知られるようになってきたとき『子どもを怖がらせる虐待ではないか』『トラウマになるのではないか』といった批判的な意見が寄せられるようになりました。しかし、ナマハゲは神聖な神であり、現代の社会に薄れがちな戒めや礼儀を重んじることを教えてくれる大切な存在で、ナマハゲを恐れたり、泣いたりすることはありがたいことなのです。この試験は、その真の意味を正しく理解し、次世代に伝えていくための重要な取り組みです」

伝統行事の作法や文化の保存だけではなく、ナマハゲが文化を通して人間形成や社会形成にも深く関わっていることを知ることが認定試験の目的のひとつです。

ナマハゲにも降りかかる少子高齢化問題

ナマハゲの文化が残る男鹿市は秋田県内でも少子高齢化が著しく進む地域です。

ナマハゲの文化は各集落ごとに細部に相違がある興味深いもので、それは各集落によって守られてきました。少子高齢化の影響がありナマハゲになる人、またナマハゲが訪れる家庭などの減少によりその文化を継続するのが難しい集落も増えています。

「ナマハゲ行事は、集落内で不幸があった年は行わないなど、その判断は基本的に各集落にゆだねられていますが、担い手がいないなどの理由で継続ができなくなってしまった集落も多くあります。毎年統計をとっていますが、男鹿市全域の80数集落のうち現在ナマハゲ行事を行っているのは約半数までに減っています」

佐藤さんがそう話すように、少子高齢化はナマハゲ文化にも影を落としています。

ナマハゲ伝導士になって自分の心のふるさとの文化を知りつくす

▲(一社)男鹿市観光協会提供 第22回ナマハゲ伝導士認定試験ポスター 

ナマハゲ伝導士は、ナマハゲ文化の保存と伝承を支える重要な役割を担います。認定試験を通じて、地域の観光振興にも貢献し、ナマハゲ文化を内外に広めるサポーターとして活動することができます。

「受験希望者は毎年、県外・県内がちょうど半分くらいずつの割合」と話す佐藤さんが過去の受験者の受験動機を明かしてくれました。

「開設当初は、地元の観光業や会社単位で受験者を募っていたこともあったのですが、近年は『県外に就職をするにあたり、秋田の文化を県外の人に伝えたい』と試験を受ける学生や、県外から仕事で秋田に赴任するにあたり『自分が暮らす秋田の伝統文化を知りたい』と受験する人がとても増えました。県内外問わず、みなさんが心のふるさとである秋田の伝統文化を自発的に知りたいという純粋な動機を持ってくれることがとてもうれしいです」

そう話しつつ、県内在住者が半数であるにも関わらず、中でも受験者が一番少ないのは実は地元の男鹿市であるということも教えてくれた佐藤さん。

「『地元で毎年当たり前にやる行事』だから別に試験を受けなくても知っているという人がほとんどです。だからこそより深く学び、なぜこの行事がこれまで長く続いているのか、今後、継承していく地元の人たちにもその根源や真意に向き合ってほしいです」

男鹿で生まれ育ち、男鹿の観光の仕事に就く佐藤さんは、「男鹿は景観だけでなく、海の幸や山の幸に恵まれています。ハタハタやしょっつる(ハタハタの魚醤)文化、ナマハゲ文化など、世界に誇れる素晴らしい文化がたくさんある場所。普段すごしていると気付きにくいのですが(笑)。他の場所に旅行などで行くと、改めて自分はいい場所に住んでるなと感じます」

伝統を守り続ける意識を高めるとともに、ナマハゲ文化の魅力を深く理解し、国内外に広めることで、地域はもとより、日本や世界規模での文化交流の活性化にもつながります。

「試験当日は、ナマハゲを実際に見たり、講義を受けたり、一日かけてナマハゲについて学びます。地元の方はナマハゲ文化の新しい発見を、遠方の方は旅行もかねて男鹿を訪れ、ナマハゲの真意の深さにふれてみてはいかがでしょうか」

第22回 ナマハゲ伝導士認定試験 概要

詳細は公式ホームページより: https://oganavi.com/dendoshi/
【下記日程は公式ホームページhttps://oganavi.com/dendoshi/より引用)

試験日時:2024年12月1日(日) 8:40~17:00

集合場所(開会式・スケジュール説明):男鹿温泉交流会館五風(男鹿温泉郷内) TEL0185-33-3191

受験資格:中学生以上で性別は問いません。
※但し、試験会場で受験可能な方で中学生は保護者の同意が必要となります。

受験料:一般7,000円・大学生および専門学校生6,400円・中高校生3,200円
※消費税込。試験・研修講義(テキスト代・視察研修・講義・入館料・視察研修時移動費含む)となります。

試験及び講義の日程:受験手続きが完了された方には、講義テキストを事前に送付させて頂きますので予習をお願い致します。なお、テキストは講義時使用しますので、当日忘れずにご持参願います。

試験方法:筆記試験(60分)

試験内容:試験内容は、ナマハゲの歴史やナマハゲの面及び男鹿のナマハゲの継承状況等から出題予定

講義内容:ナマハゲの行事・由来・装束などナマハゲに関わる事について

スケジュール(予定)

08:40~09:00 受付(男鹿温泉交流会館五風)
09:05~09:20 スケジュール説明
10:00~11:00 視察研修(男鹿真山伝承館・なまはげ館等) ※バスで移動
11:30~12:00 講義
12:00~12:40 昼食休憩
12:45~15:25 講義
15:25~15:40 質疑応答
16:00~17:00 試験(60分)

募集人数:80名(定員になり次第締切)

合格発表:2024/12/20(金)に試験結果を郵送します

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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