さらばスマホよ!無心で読書に没頭できる秘境温泉で過ごすぜいたくな時間とは【山形県米沢市】

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米沢に向かってJR福島駅を出発する奥羽本線。撮影:2019年6月9日

東京から北へ約300キロ。タイミングを逃すと次の列車が来るまでなんと5時間。終電を逃したような絶望を昼間に経験できる米沢の秘湯のひとつが滑川(なめがわ)温泉だ。

秘境駅としても知られ、滑川温泉の最寄りでもあるJR峠駅。撮影:2023年5月20日

そのうえ、駅前にはコンビニもタクシーもなく、温泉までの移動手段は送迎車か自分の足のみ。叫んでも返ってくるのは山びこだけという環境で、車がやっとすれ違うことができるほどの道にはガードレールもない。

峠駅を出発し、ひたすら山道を歩く。撮影:2023年5月20日

冬季は深い雪で閉鎖されるうえ、携帯電話がほとんど使えないこのエリアは、現代の喧騒(けんそう)から離れた「秘境」と言える。

滑川温泉の一軒宿である福島屋。撮影:2023年5月20日

ここにある旅館福島屋は、約250年前に開湯され、それ以来、多くの人々に癒しを提供してきた。自然に囲まれた露天風呂では、自家源泉から湧き出る天然温泉を楽しむことができる。特に周囲には日本の滝百選にも選ばれた大滝をはじめ、多くの滝が点在しており、豊かな自然と調和した時間を過ごすことができる。こうした環境は、スマホやインターネットに依存する現代人にとって、心身のリフレッシュにはもってこいだ。

昭和30~40年代当時と思われる滑川温泉の写真。撮影:2023年5月20日
宿の電気は目の前を流れる川の水力による自家発電。撮影:2023年5月20日

電力も自家発電でまかなっており、冷蔵庫もない。そのため、電力が途切れることもあるが、これが都会生活では体験できない不便さを味わわせてくれる。

滑川温泉の露天風呂。大自然に包まれ開放的な気分に。撮影:2023年5月20日

滑川温泉は、まさにデジタルデトックスにピッタリの場だ。コンビニはなく、スマホやネットも使えないため、自然に包まれた環境で心身をリセットする絶好の機会となる。通知に煩わされることなく、普段忘れがちな自分自身や大切な人との対話に集中できるのだ。この不便さこそが、滑川温泉の最大の魅力であり、都会の生活に疲れた人々にとって心地よい解放感をもたらしてくれる。

(周囲は人影も少なく、動物注意の標識も。撮影:2014年11月2日)

道中の難しさ、不便な施設、そして携帯電波の届かない環境。それでも滑川温泉を訪れる価値があるのは、この「秘境」が都会の喧騒から離れ、心と体にたまっていた疲労やストレスから解放される場所だからだ。不便さを超えてたどり着いた先に広がる自然の美しさと川のせせらぎ、そして天空を仰ぐ温泉の心地よさは、まさに楽園のような時間を提供してくれるだろう。

途中で見つけた看板。すっかり木に飲まれてしまっている。撮影:2023年5月20日

都会の喧騒の中で心と体の疲れを感じたとき、ぜひ滑川温泉を訪れてみてほしい。不便さを楽しみながら、自然との触れ合いを通じて、心の疲労やストレスから解放される時間を体験できるだろう。

昆愛

昆愛

福島県郡山市

第4期ハツレポーター

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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