
読者の皆様は「ジュンサイ」をご存じだろうか?ジュンサイとは秋田を代表する食べ物のひとつで、ぬるっとした食感が特徴である。今回は秋田県山本郡三種町にある「里山・志戸田園」にてジュンサイ採りを取材してきた。2025年7月1日に取材を行い、この日は曇り空であいにくの天気だったが、暑すぎずジュンサイを採るにはちょうどいい気温だった。園長の志戸田義友(しとだ・よしとも)さんのご指導を受けながら、ジュンサイ採りを楽しんだ。
目次
小学生以来およそ20年ぶりのジュンサイ採り
今回のジュンサイ採りは筆者にとって20年ぶりとなる。小学生の時以来で、ちゃんと採れるか少し不安だった。当時は学校の先生と二人乗りの小舟に乗ってジュンサイ採りをした覚えがあったが、今回は一人乗りの小舟で採るのである。長い棒を使いカヌーのパドルと同じ要領でこぎながらジュンサイを摘み取っていく。単純だがコツを掴むのは意外と難しい。ジュンサイ採りに気を取られて舟ごと転覆するのではなかろうか?そう思いながら件(くだん)の沼へと向かった。
しかしその不安は杞憂(きゆう)に終わった。園長の志戸田さんの熱心な指導のおかげでジュンサイをスムーズに採る事ができた。この日は午前9時30分頃からジュンサイ採りを始めたが、舟の上で黙々と採り続けているとあっという間に午前が終わり、気が付くと正午を過ぎていた。

一番おいしい所を覚えてもらうために口酸っぱく言う
園長の志戸田さんは御年74歳(※取材当時)。歯に衣着せぬ物言いで、最初は「なんだか口の悪い方だなぁ」と思っていたが、これはジュンサイの一番おいしい部分を来園者に覚えてもらうためであるとのこと。
ジュンサイは「ヌメリ」と呼ばれる寒天状の透明な粘着物のある主に若い葉が食用とされており、このヌメリには酸性多糖類が多く含まれている。光合成が活発に行われていれば多く分泌され、ヌメリが多いほど良質なジュンサイとなるのである。
初めて来た人にそれを知ってもらうために、志戸田さんは厳しく指導するのだ。
現在スーパーマーケットで出回っているジュンサイの8割は中国産で、国産(特に秋田県産)のジュンサイはジュンサイ園で採るか道の駅で買わなければなかなか手に入らない代物なのだ。

年間600から700人の来園者が訪れている
このユニークな指導方法が人気で、リピーターが多く口コミで新規のお客さまが各地から多数志戸田園を訪れている。この日も地元の高校生たちや大学生といった若者らが訪れており、老若男女問わず愛されているジュンサイスポットとなっているようだ。
なお、志戸田さんはリピーターの方々には口酸っぱく指導していないとのこと(ジュンサイのおいしい部位と食べ方を知っているからだそう)。

天候に左右されながら頑張っている
ジュンサイもお米と同様に天候に左右されやすく、あまり暑いと沼がぬるんでしまうし寒すぎても育たなくなる。元々志戸田さんは17年前に会社を辞めて米農家として活動していたが「田んぼだけでは飯を食えない」として、10年以上前にジュンサイ園に切り替えた。
ジュンサイの沼には農薬を一切使用していないが、これは来園者が採ったジュンサイを直接口に入れて食べるので、人体に有害な農薬は使えないためである。今年は4月と5月に寒い日が続いたのと6、7月の暑い日が続いたためジュンサイがあまり採れず、昨年まで行っていたジュンサイの袋詰めができなくなったという。
リピーターがいる事がうれしい
志戸田さんは、天候はもちろんのこと、加齢による衰えと何より跡継ぎがいないため「何年後になるかはわからないがいつかは確実にやめなければならない」と言っていた。
しかし、リピーターがいることと新規の来園者が増えているおかげで、まだまだ続けていきたいと前向きなコメントもしていた。
ジュンサイ採りのシーズンは5月から8月までの4ヵ月間である。
読者の皆様もここを訪れてジュンサイ採りを楽しんでみてはいかがだろうか?

情報
里山・志戸田園
住所:〒018-2304 秋田県山本郡三種町豊岡金田字豊岡84-1(体験集合場所)
TEL:0185-83-4108
携帯:080-1689-7535
営業時間:9:00~17:00
三種町観光協会の掲載ページhttps://mitanekanko.com/enjoy/%E9%87%8C%E5%B1%B1%E3%83%BB%E5%BF%97%E6%88%B8%E7%94%B0%E5%9C%92/