「まだ父は超えられない」高卒で葉ネギ農家を継いだ娘が語る農業の面白さ【静岡県浜松市】

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「おしゃれねぎ」。一度聞いたら忘れられないネーミングのブランド葉ネギが、静岡県浜松市の東部で栽培されている。温暖な気候と、天竜川が作り出す豊かな土壌と水の恵みが、青々しい緑の葉ネギを作り上げている。そんな「おしゃれねぎ」生産者の一人が、株式会社大場農園の3代目である大場紗瑛(おおば・さえ)さんだ。高校卒業と同時に後継ぎとして父親と共に農業に励み、現在は夫と共におしゃれねぎの栽培に励んでいる。そして、大場さんは筆者の妹でもある。7年間向き合って気づいた農業の魅力と、「おしゃれねぎ」づくりの展望に迫る。

温暖な気候、天竜川が作り出す豊かな土壌と、水の恵みが作る「おしゃれねぎ」の魅力

「おしゃれねぎ」は浜松市東部、天竜川流域の肥沃な沖積土で栽培されているブランド葉ネギだ。農薬の使用をできるだけ控え、完熟堆肥・有機肥料中心の生産を心掛けることで辛みが抑えられ、ネギ特有の辛味が苦手という方でもおいしく食べることができる。

「おしゃれねぎ」のネーミングは、おしゃれねぎ部会の創設者である田邊幹雄(たなべ・みきお)さんの「普通にネギを売り出してもイマイチだ」という気持ちが原点。田邊さんが三日三晩考えて思いついたそうだ。創設当時は葉ネギを栽培している生産者が周囲にいなかったということもあり、浜松市でブランドとなる葉ネギとして「おしゃれねぎ」の生産を開始したという。

▲販売時のおしゃれねぎ
 ▲収穫時のおしゃれねぎ 

小学生の時から後を継ぐことは考えていた

大場農園では3代目である紗瑛さんの祖父の代から農業を営んでおり、2代目である父の代で「おしゃれネギ」の生産を開始した。紗瑛さんはお姉さんと2人姉妹で、小学生の頃から父に「後を継ぐように」と言われていたこともあり、将来は農業従事者になろうと考えていた。高校卒業時には接客業に携わることも考え、レストランで職業体験をしたが、違和感を感じたという。職業先もいくつか紹介を受けていたが、ピンとくる就職先がなく、父の言葉を思い出し「将来、農家を継ぐなら、このタイミングで就業しよう」と、卒業と同時に大場農園へ後継ぎとして就業することを決意した。

仕事をすればするほど、父のすごさに気づく

紗瑛さんは、就業すると、まず父の偉大さに気づかされた。これまで通り同じことをしていれば安定的に生産ができる基盤があるにもかかわらず、父は常に新しいことに挑戦している。冬に蒔くはずの種を夏に蒔いてみたり、防風対策として鉄骨を追加したハウス設計など、常識破りのアイデアでチャレンジをし、成功させてきた。そうした成功事例を、同じネギ農家にも展開していく父の仕事熱心さを間近で感じ、尊敬の気持ちを持つようになった。

「同じことをやっていれば、同じものができるわけではない」正解のない農業の面白さ

紗瑛さんは「同じことをやっていれば、同じものができるわけではないからこそ、農業は面白い」と語る。1年に4回収穫できる「おしゃれねぎ」は、天候によって収穫できる日数や、出来上がりが異なるため、天候に合わせてさまざまな工程を施している。その中で、最も重要な工程が散水だ。土の配合量や濡れ具合などで散水の仕方も異なり、経験に富んだ父ですら失敗することもあるという。

「まだ父に言われたことしかできませんが、新しいことをやりたいと思っているんです。でも、知識も経験も不足している私が、そんなこと言えません。」と紗瑛さんは少し寂しそうに話す。就農7年目の紗瑛さんは、「まだまだ知らないことがたくさんあります。研修に参加したり、周囲の農家の方の話を聞いたりすることで知識を蓄え、農業の本当の面白さを知り、将来は父を超えていきたいです」と、力強く続けた。

 ▲ネギの消毒時の様子

世代交代をしても今と同じように経営ができることを目標に

紗瑛さんは父の後を継ぐべく、夫と共に日々仕事に励んでいる。「夫婦で世代交代をしても、今までと同じように経営を続けられるよう、今やれることを一生懸命やりたい」と紗瑛さん。農業の世界は奥が深いようだ。夫の瑠夏(るか)さんは、「もう少しネギ農家としての自覚をつけ、自分たちが後を継ぐ時に、『自分だったらどうしていきたいか』を考えながら、日々仕事をしたいです」と、将来に向けた思いを語った。

▲紗瑛さんと瑠夏さん

もっと多くの人におしゃれねぎのおいしさを知ってもらい有名にしていきたい

2人は「スーパーに売っている葉ネギ以外にも『おしゃれねぎ』という葉ネギがあることを知ってもらいたい。農業は買い手と直接関わることができないからこそ、日頃購入してくださる方の声を直接聞いてみたい」と思っているそうだ。「『おしゃれねぎ』を販売していない地域にいき、スーパーの一角で直接販売しながらおしゃれねぎを知ってもらう

ことができれば」と続けた。

 

より一層「おしゃれねぎ」のおいしさが感じられる食べ方

葉ネギは薬味としての役割がメインと思われがちだが、実は、ネギそのものを楽しめる食べ方が多くある。

その創作料理の1つがネギサラダだ。ネギを5センチ幅ほどで切り、ごま油・塩コショウ・味の素・焼肉のタレ・にんにくチューブ・レモン汁を好みの味になるように混ぜる。その上から、韓国海苔もしくはいりごまをかけるだけで完成!シンプルだが病みつきになる味付けがたまらない。お家での焼肉や中華料理の副菜として準備していただくことをオススメする。

▲ネギサラダ
▲ネギとツナマヨを和え、油揚げの上にのせる

静岡県内のスーパーはもちろんのこと、長野県、愛知県、岐阜県、大阪府、東京都と多くの都府県に卸してるので、スーパーに寄ったらぜひ「おしゃれねぎ」がないか一度みて欲しい。

情報

株式会社大場農園 

住所:〒431-3101 静岡県浜松市中央区豊町3220-2
ホームページ:http://osharenegi.com/
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大場有紗

大場有紗

静岡県浜松市

第8期ハツレポーター

静岡県浜松市で生まれ大学と同時に上京。25年3月から淡路島に移住し、地域に根差した活動を行う。その地域に住む人にしかわからない地域の魅力を引き出し、これまでにない旅の経験を提供したいと思い、執筆を行っている。

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