妥協なき想いが導く「想像を超える」デザイン。コロナで鯛10万匹が立往生…漁師協働で魅力発信【大阪府大阪市】

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株式会社REALWORKS 代表取締役

Yuya Hirano
平野 裕也氏

「愛のあるデザイン」をコンセプトに、クライアントの想像を超えるクリエイティブを生み出し続ける――。そんな唯一無二の姿勢で注目を集めるのが、大阪の株式会社REALWORKSです。単に“かっこいい”や“きれい”では終わらせない、心に届くデザインとはどんなものなのか。孤独な挑戦の日々からデザインで地域を変えた軌跡まで、代表取締役の平野 裕也(ひらの ゆうや)さんにインタビューしました。

仲間が去っても、孤独に挑んだ創業期。FAXと車中泊からデザイン事業を切り拓く

独立までの経緯をお聞かせください。

もともとは新聞社で釣り情報を専門に取り扱う釣り新聞を作っていました。インターネットがまだ普及していない時代でしたが今後はWebの時代が来ると感じ、社長に「釣りのWebサイトを作りませんか?」と提案したんですよ。そうしたら「新聞が売れなくなる」と言われてしまいました。なので、ほかのスタッフと4人で、26歳のときに独立しました。

独立後の事業展開は、どんなものだったのでしょうか?

Web事業は儲からず、経費がかさむ日々でした。仲間は一人、また一人と辞めていき、最終的に私一人になりました。そんなとき、取引先の人たちに「なぜ私に仕事を依頼してくれるのでしょうか?」と聞きました。答えは「若いのに頑張っているから」。実績のない私に対して不安もあったとは思いますが、応援の気持ちを込めて私に仕事を回してくださっていたんです。「この厚意は無碍(むげ)にはできない。自分一人でもやる!」と覚悟を決めました。

たった一人での挑戦はどんなものだったのでしょうか?

大阪以外にも営業をかけようと、地方を回り続けました。現在はメールやLINEなどのツールは整っていますが、当時のネット環境はゼロ、Wi-Fiなんてもってのほかの時代でした。そのため、お客さまのWebサイトを更新するためには、FAXで情報を取得する必要がありました。しかし、地方への営業のためFAXを受け取るのが困難だったため、街の飲食店にお願いして「FAXを受信させてください!」と頼み込む日々が続きました。
そういった状況が1年くらい続いたなか、それまでWebサイトを中心にデザインの仕事をしてきましたが、携帯電話のチラシ作成の仕事が舞い込みました。この仕事を転機に事業が拡大しました。

事業を進めるなかで、どんな大変さがありましたか?

当時は同業種の仲間もいなかったので相談もできず、ノウハウもない。作品のできが良いのかすら分かりませんでした。その一方で、仕事を仕上げないと間に合わない。手探りで悩みながら、作るのは大変でしたね。

法人設立にいたった経緯を教えてください。

個人事業主で独立してからは、がむしゃらの毎日で法人化はとても考えられなかったです。でも、人を雇い始めたときに雇用保険や社会保険などの社会保障をきちんとしたかったので、2014年、以前のオフィスへの移転とともに法人化をしました。

想像を超えた驚きと信頼をつくる、REALWORKSのデザイン哲学

現在の事業を教えてください。

Webサイト制作・企画・構築、グラフィックデザイン、ロゴ制作、広告の企画・制作、映像制作、ECサイト運営を行っています。撮影はスチールと動画の両方です。ときには協力会社にお願いすることもありますが、ある程度は自社でまかなっています。

仕事で大切にしていることを教えてください。

想像以上のものを作りあげることです。広告やクリエイティブには正解がないからこそ、打ち合わせを重ねることで、お客さまの思いや意図をしっかり理解することが大事です。そうしてお客さまの想像を超えることを心がけて制作することで、「すごい!こんな発想なかった!」と驚いていただける。“ここまで考えて、やってくれた”が、お客さまとの信頼になり、その積み重ねで、今の仕事につながっています。

制作事例①:彩星工科高等学校

コンセプト「愛のあるデザイン」に魅かれました。このコンセプトの意図を具体的にお聞かせください。

案件一つ一つの細部にまで思いを込める。それが愛のあるデザインになるということです。
デザインの仕事において、効果が保証できる明確なものはありません。だからこそ細部にまで思い、考え、デザインする、そこに全力を尽くします。そこには必ず結果を残し、お客さまの要望にお応えするという気持ちが詰まっています。そのデザインをきっかけに、別のチャンスが訪れるかもしれない。そんな未来の可能性も大事にしています。
クライアント様とは、面と向かい合って考えるのではなく、横に座って手をつないでるかのように、一緒に考え、そして前に進んでいきたいです。これは私がお客さまによくお伝えしている言葉です。「愛のあるデザイン」もそうですが、思わず恥ずかしくなるような言葉ですよね。でも、私たちは堂々と言います。依頼を受けたら、お客さまの思い、ユーザーの視点など、徹底的に考え抜きます。目的や思いを愛に変えて、デザインで表現しています。

制作事例②:株式会社ナリコマホールディングス

「なぜ、それをするのか?」。真意に寄り添うためのチームづくり

御社の強みをお聞かせください。

他社に負けないクライアントファーストの思いが強みです。客観的な視点を取り入れることが結果的にお客さまのためになると考えているため、会社の目的に合わせてはっきりと良し悪しを伝えます。お客さまの未来を一番に考えているからこそ、忖度のない正直な意見を交わすことが大切だと考えています。

制作事例③:株式会社ひかり工務店

制作事例④:Lakeside Resort & Cafe AFUMI KITAKOMATSU

クライアントファーストを社内でどのように実践していますか?

デザイン構成を見て、疑問点があれば対話をして、すり合わせをします。特に「お客さまやエンドユーザーはどう思うのか?」の観点は重要視していますね。みんな、見た目がかっこいいデザインをまず作りがちですが、それ以上にこのデザインによってどのような目的が求められているのかが大事なので、その指導はしっかりと行います。

お客さまから言われたとおりに作業をするのは簡単です。例えば、「青を赤にしてください」と言われて、その通りに色を変える。でも、「なぜ、青を赤にするのか?」をお客さまにちゃんと聞いてほしいと、スタッフに伝えています。その真意は、目立たせたいだけかもしれない。それなら、青のままで目立たせる方法はたくさんあります。ニーズの核心を掴めるようなチームづくりをしています。

ピンチから生まれた「あなたに逢い鯛。」行き場をなくした鯛を食卓へ届ける

「あなたに逢い鯛。」プロジェクトについて教えてください。

「タイの里」と呼ばれる三重県迫間浦の真鯛を知ってもらおうと、この鯛のブランドの構築、ネーミングなど、ブランディングから販売までを現地の養殖家さんたちと協働して行っています。
はじまりはコロナ禍でした。知り合いの養殖家さんから「10万匹もの鯛が、出荷先がなくて余っている。鯛のオーナーになれるWebサイトを作ってほしい」と依頼がありました。卸し先のホテルや飲食店が相次いで休館となったからです。現地で食べた鯛は、驚くほど美味しく、「もっと多くの人に届けよう!」と動き始めました。

デザインやキャラクターが印象的で、一度見たら忘れません。

テーマは「コロナで食卓に並べなくて会いたかった鯛」です。キャラクターやロゴを作って養殖家さんに提案しました。鯛の顔をした女の子にドレスを着せるなんて…アイデアが斬新すぎるので反発覚悟でしたが、予想外に乗ってくれました。その勢いで、ふるさと納税にも登録して、今では三重県南伊勢町のブランド鯛に認定されました。

地域の漁師さんたちとの新規事業立ち上げ…ものすごい行動力ですね。

この事業は、大きな挑戦でした。これまでは「デザインを作ってほしい」といった依頼に対し、どうデザインで結果を出すかが私たちの役目でした。でも、「あなたに逢い鯛。」はゼロからブランドを作って育てています。そのなかでシーフードショーに出展したり、大手外食産業とコラボさせて頂いたり、テレビの取材も何度も受けました。現地には同じ名前の大きな釣り堀までできました。
立ち上げ当初は「なんでこんなことしないとあかんねん」と養殖家さんから振り向いてもらえないこともあったのですが、事業が動きだすと次々に協力してくれるようになりました。

コロナ禍でのピンチから地域活性につながったんですね。

はい。「あなたに逢い鯛。」をはじめて4年ほど経ち、少しずつ形になってきました。今、注文管理やお客さまへの対応は私が行っていますが、手が回らなくなってきているので、思いを持ってこのプロジェクトを運営してくれるスタッフも募集しています。ゼロから作る面白い事業です。

「愛のあるデザイン」は、仲間も事業も育てていく

一緒に働くクリエイターにどんなことを求めますか?

自分が作るものすべてに愛着を持っている人がいいですね。作品の大小に関わらず、自信を持って人に届けられる。そんな思いを持つ人と、一緒に挑戦を楽しみたいです。職種では、グラフィック・Webデザイナーを募集しています。

これからの展望をお聞かせください。

トータルブランディングが今後の課題です。実際に「チラシだけ」というよりも「パンフレットと動画も作りたい。Webも作り替えたい」と、関連した依頼が多くなっています。すべてのご要望に応えられるように力を伸ばしていきたいです。

取材日:2025年7月9日 

株式会社REALWORKS

  • 代表者名:平野 裕也
  • 設立年月:2014年5月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容: Webサイト制作・企画・構築、グラフィックデザイン、広告宣伝・販売促進の企画・制作、映像制作、ECサイト運営
  • 所在地:〒550-0001 大阪市西区土佐堀1丁目1-23 コウダイ肥後橋ビル5F
  • URL:https://real-w.net/
  • お問い合わせ先:06-6445-3228

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

大野佳子

大野佳子

生まれは福井、育ちは大阪。公務員、栄養士、農業、食品加工の遍歴あり。「農と食」のフィールドでセルフ人事異動(転職)を行ってきました。
現在は農業と福祉を連携させた商品づくりに取り組んでいます。「暮らし」に感動し、「科学」に挑戦し、「芸術」を愛して生きています。趣味はカフェ巡りと数学です!

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