
春。サクラを観に三春町を訪れる人々の目的はたいていひとつ。滝地区にある滝桜(たきざくら)である。推定樹齢1000年を超える圧巻のベニシダレザクラは日本三大桜のひとつとして全国的に知られ、令和6年度には約14万人もの観光客が訪れた県内有数の名所だ。
だが、三春は滝桜だけではないにもかかわらず、訪れる人の多くは滝桜だけを見て次の訪問地へ向かってしまう。そこで、三春町生まれである筆者の視点から、見逃しがちな隠れた桜スポットを3カ所紹介する。
歴史・静寂・幻想。三春町で出会う、もう一つの桜風景
【1】庚申坂

江戸時代後期から近代にかけて、三春町のある田村地方は良馬の産地として知られていた。三春藩では三代藩主・秋田輝季の時代に馬の生産が奨励され、参勤交代の際には領内で育てた名馬を江戸幕府に献上したという。岩代と岩城を結ぶ旧岩城街道は、こうした往来の多い重要な道だった。三春城下へ入る手前の急坂は、城下に入る前に身なりを整えたことから「化粧坂」と呼ばれ、その途中には清水が湧く井戸があったと伝わる。街道を行き交う人々が喉を潤したというこの場所は、かつての往来の記憶を今に伝えている。

【2】歴史と神様に守られて:三春城跡と田村大元神社

戦国時代、田村氏の居城だった三春城。その跡地は現在「城山公園」として整備され、桜越しの眺望はまさに絶景だ。麓の田村大元(たむらたいげん)神社では、厳かな社殿と桜が織りなす景色が楽しめる。滝桜に比べると観光客が比較的少ない分、落ち着いた空間で歴史と自然を同時に味わえるのが魅力だ。また、歴史好きには、城郭遺構と桜を同時に楽しめるこの場所は特におすすめだ。
【3】夜の駅に浮かぶ桜――JR磐越東線 舞木駅

最後に紹介するのが、三春町と郡山市との境にあるJR磐越東線・舞木(もうぎ)駅。普段はひっそりとした無人駅だが、春の夜には一変する。ホーム沿いの桜が投光器でライトアップされ、幻想的な風景をつくり出す。通過する列車のライトが桜を照らし、揺れる花びらが一瞬のドラマを生み出す―そんな光景に思わず足を止めたくなる。
三春の春を“歩いて”楽しむという選択
三春の桜といえば滝桜の壮麗さに目を奪われがちだが、ここには“歩いてこそ出会える桜”がある。静寂、歴史、人の営みが交差する町の風景に、心を預けてみてはいかがだろうか。
写真撮影:筆者
参考資料:
令和6年分_福島県観光客入込客調査ページ25(表 13 観光種目別観光客入込数の多い観光地)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/708089.pdf
コミュニティだより三春わが街第22号平成10年11月15日ページ4https://www.town.miharu.fukushima.jp/soshiki/27/uploads/%E9%9A%A8%EF%BD%AC22%E8%9C%BF%EF%BD%B7.pdf
春陽の士12 三春駒を育てた藩士|Web資料館|三春町歴史民俗資料館https://www.town.miharu.fukushima.jp/soshiki/19/12.html
國學院大學学術情報リポジトリ「K-RAIN」化粧井戸伝説が映す信仰の世界 : 福島県の事例から
https://k-rain.repo.nii.ac.jp/records/2001294





