韓国で人気の「ミナリサムギョプサル」が日本でも注目を集めている
大量のミナリ(日本のセリ)と豚バラ肉を一緒に焼くスタイルがSNSで広がり、都市部では行列ができる店もあるという。
もしこの食べ方が広がれば日本で鍋料理の“わき役”という印象が強いセリの価値が見直される可能性もある。
「ミナリサムギョプサルにはまってるんだよね」
テレビで流行を知ってはいたが、友人の口からその名前を聞いた瞬間、「やっぱり本当に流行っているんだ」と実感した。
この韓国発の食べ方は、日本のセリの価値にどんな変化をもたらすのだろうか。
そこで改めて「ミナリサムギョプサル」と「セリ」について調べてみた。
目次
韓国で人気の「ミナリサムギョプサル」
火付け役とされるのが、韓国で広がった「ミナリサムギョプサル」だ。
豚バラ肉と大量のセリを一緒に焼き、包んで食べるスタイル。
脂の強い肉と、爽やかな香りとほろ苦さを持つセリの相性が話題となり、専門店が登場するほど人気を集めた。
この流れがSNSを通じて日本にも波及。
都市部の韓国料理店では“セリ山盛り”のビジュアルが拡散され、週末には行列ができる店舗もある。
SNSを通じて日本にも波及し、都市部の韓国料理店では“セリ山盛り”のビジュアルが拡散され、週末には行列ができる店舗もある。
日本の人気韓国料理店での反響
新大久保の韓国料理店「ブルバム」新大久保店の店長、オ・ギョンテクさんに電話取材を行った。ギョンテクさんによるとブルバムでは韓国での人気を受け、約1年前からミナリを使ったメニューを取り入れたという。ミナリサムギョプサルだけでなく、ユッケや冷麺、ビビンバなどにもミナリを使う形でメニューを改変した。
その結果、売り上げは月300万〜400万円ほど増え、これまでの約25%ほどのびたという。
ギョンテクさんは「韓国のミナリの方が香りや食感が良い」と話し、韓国から仕入れたミナリを使用しているそうだ。

日本では“わき役”だったセリ
一方、日本でのセリの立ち位置は少し違う。
春の七草のひとつとして知られ、鍋料理やおひたし、天ぷらなどに使われる。主役とは言い難い。
そうしたなか、宮城県の「仙台せり」は全国有数の産地として知られ、出荷量でもトップクラスとされるブランド野菜だ。根まで食べられる香り高いセリは、冬のセリ鍋文化を支えてきた。
また、秋田県湯沢市の「三関(みつせき)せり」も名高い。
清らかな伏流水で育つ三関せりは、太くて歯ごたえがあり、爽やかな香りと甘みのバランスが絶妙だと評価が高い。
ちなみに私の家では毎年正月に、祖父母のふるさと・秋田の郷土料理「きりたんぽ鍋」を囲む。特に根っこは香りが強く、歯ごたえも良い。子どもの頃から、家族で“根っこ争奪戦”になるのが恒例だった(笑)。
こうした産地では、セリは決して珍しい野菜ではない。むしろ、日常に溶け込んだ存在だ。
しかし、それ以外では主役になる機会は多くなかった。 「香りづけ」「彩り」という役割が中心だったのが実情だ。
海外トレンドを介して「視点の転換」が起きるかもしれない地方食材
興味深いのは、日本の伝統食材であるセリが韓国の食トレンドを介して、再び日本でその価値が見直されているのではないかという点だ。
宮城や秋田で当たり前に食べられてきたセリが、韓国トレンドという新しい文脈を得て都市部で“新しい野菜”として注目されている。
地方では日常、都市ではトレンド。その視点の違いが、食材の価値を塗り替えている可能性がある。
なぜ今、セリなのか
セリが注目を浴びるのはなぜなのか、自分なりに考察してみた。
背景にはいくつかの要因があるのではないだろうか。
① 健康志向
脂の多い料理に、香り高い野菜を合わせることで“罪悪感を薄める”。
② SNS映え
鮮やかな緑が皿いっぱいに広がるビジュアルは写真向き。
③ 「懐かしいのに新しい」感覚
日本人にとってセリはなじみ深い。
だからこそ、韓国スタイルで提供されると“新鮮”に映える。
地方産地にとっては追い風になるか
もしセリ需要が安定的に伸びれば、宮城や秋田などの産地にとっては新たな販路拡大の可能性がある。
これまで冬〜春の鍋シーズン中心だった消費が、焼肉や韓国料理との組み合わせで広がれば、通年化の道も見えてくる。
ただし、ブームが一過性に終わるのか、定番化するのかはまだ未知数だ。
セリは、昔からそこにあった野菜だ。
変わったのは、食べ方と文脈。
宮城の仙台せり、秋田の三関せり。
地方で大切に育てられてきた伝統野菜が、海外トレンドを経て再び脚光を浴びる。
「古いものが、新しい」――。
セリ食べたさに並ぶ行列は、地方食材の可能性を映している。


【2026年3月10日 編集部追記】
2月19日に公開した本記事について、掲載基準の確認のため一時非公開としていました。ローカリティ!掲載基準に基づき、追加取材を行い内容を再編集のうえ、再公開しました。
情報
ブルバム新大久保店インスタグラム:https://www.instagram.com/bulbam_shinokubo/





