兵庫県の中東部に位置する丹波篠山(たんばささやま)市。市の中心部から車を10分程走らせるとそこはもう野生動物のパラダイス。
狸や狐、鹿に猪などの野生動物が多数生息しているが、中でも厄介なのが猿である。
網でも柵でもどこかしら隙間を見つけて畑に侵入し、大事に育てた作物を狙うのだ。
どうせ食べるのなら残さずキレイに食べ切ってほしいところだが、たちの悪いのは作物を手当たり次第掘り起こしてはひと口ふた口かじって食べ散らかしてしまうのである。
本当に腹が立つが彼らも生きていく為に必死なのだろう(…と思う事にした)
我が家の畑は電気柵をする程立派なものでもないので手作りで網や柵を作るのだが、いつも適当に仕上げてしまうので結局毎回猿にやられてしまうのだ。
何かないかと考えそこで登場したのがマネキンの彼女である。
知人から譲り受けた時から彼女の首元に「8」の数字があった為、彼女を「ハチ子」と名付けた。早速ハチ子には畑で案山子として働いてもらう事になった。
ハチ子がやってきて初めての年は猿も不審に思ったのか畑への侵入もなく無事に芋を守り抜く事ができたのだが、そのうち猿もハチ子が動けない事を察知したのか次の年からはいつも通り畑に侵入し作物を食い散らかしてしまったのだった。
これはいかん…とハチ子の仲間を増やす事も考えたのだが、徐々にハチ子の存在がご近所の皆様に知られてしまい、気持ち悪がられるようになってしまったのである。(確かに暗闇で見たら恐怖でしかないが…)
あまりの評判の悪さにハチ子には退職していただく事になった。
2年程しか活躍できなかったが、ハチ子のおかげであの時守ってもらった芋を美味しく食べる事ができた。
雨の日も雪の日も瞬きを忘れた大きい瞳で優しく微笑みながら畑を守ってくれたハチ子。
今まで本当にありがとう。
和中美香さんの投稿