
2025年8月23日、秋田県湯沢市の院内地区センター広場で、いんないMIRAI農園収穫祭が開催されました。農園に集まった子どもから大人までが挑戦したのは「収穫した野菜の重さを当てましょうゲーム」。500gピッタリの野菜を収穫することを目指して、普段農業に触れていない大学生も小さい子どものように農園を探索しました。
実際に触って、重さを確かめるなかで、意外にも知らなかった野菜の姿に気付かされます。大学生もワクワクするような収穫祭の仕掛け、多世代間の交流を生み出す農園の狙いについてレポートします。

目次
誰もが収穫を楽しめる仕組み「いんないMIRAI農園収穫祭」
いんないMIRAI農園の目的は、若者と高齢者が集うこと。農業経験のない若者たちが主体となっているこの農園は、子どもから年配の方まで、農業をずっとしている人から土いじりもしたことのない人まで、みんなが集まる場所です。
院内地区センターで8月23日に行われたのは、いんない未来塾の主催による「いんないMIRAI農園収穫祭」。「採れたて野菜をみんなで食べよう!」のコーナーでは、枝豆やジャガイモ、なすやゴーヤなど様々な種類の新鮮な野菜が振る舞われました。盛り上がりを見せたイベントの一つが、「収穫した野菜の重さを当てましょうゲーム」です。


子どもから大学生、大人までが赤いネットを手に、オクラ、きゅうり、にんじん、なす、ズッキーニなどの野菜を、ぴったり500g収穫することに挑戦しました。普段農作業をしない私たち大学生も、ナスのとげに気をつけたり、きゅうりのトゲトゲさに驚いたり、大きくなりすぎたズッキーニに爆笑したりとにぎやかな時間となりました。

ただ収穫するのではなく、重さを考えなければならないので、自然とツヤツヤしたナスに手を伸ばして実際に触り、重さを確かめるようになります。小学生が一位をとって照れくさそうにナスを抱えたり、高校生が「あのきゅうり入れればよかった!」と本気で悔しがる様子に、農園を気にかけて整備してくれる年配の方々も自然と笑顔になっていました。
ベテランから子どもたちまで「みんなで植えて、とって、食べる」学習とコミュニティの場
20〜40代の若い世代で構成された「いんないMIRAI塾」のメンバーの中に、もともと農業をしている人は多くはありません。院内地区センター事務員の木村由美さんは、このメンバーについて「親が畑をしていても、本人は土いじりもしたことない、っていう人も多い世代」だと話します。同じく地区センター事務員の伊藤尚子さんは、「農園は地元の60代、70代の農業技術をわかっている人たちに教えてもらいながらやっています」と教えてくれました。

伊藤さんは、いんないMIRAI農園は「みんなで植えて、とって、食べるところまで学習する、若者から高齢者までの地元のコミュニティ形成の一つとしての農園」なのだと話します。若い世代が石拾いから始めたこの農園は、地元の農業のベテランたちがバックアップしています。
コロナでイベントが制限され交流の場を作ることが難しくなったなかでも、住民どうしの心の交流は必要でした。このとき、地区センター近くの老人ホームで働く方が、そのすぐ前の土地で畑をしないかと提案してくれたことがきっかけで、この取り組みが始まりました。もともとこの畑はゴミ捨て場のようになっており、畑作りはくずを拾うことから始まったそうです。活動のメンバーには農業の経験がない人たちが多いため、地域でずっと農業をしてきたベテランが技術を教えてくれるようになり、畑は自然と世代間交流の場になってきたのだといいます。
農園を支えているのは、農業に楽しみを見いだして取り組もうとする人たち

いんない未来塾の事務局長で、毎朝5時から農園の野菜を収穫して販売している鹿角将良さんは、「朝起きて野菜を採ってるというと『大変じゃないか』と周りには思われるけど、やりだしたら面白くてハマってる。明日の朝に早くなんねえかな、明日は何の野菜から採ろうかな、ってワクワクする」と教えてくれました。こうした、農業に楽しみを見いだして取り組もうとする方々が、この農園を支えています。


いんないMIRAI農園収穫祭の「収穫した野菜の重さを当てましょうゲーム」では、オクラの生え方すら知らない大学生も、みんなで500gピッタリの野菜の収穫を目指して、和気藹々(あいあい)と野菜に触れることができました。
いんないMIRAI農園や、こうした収穫祭のイベントを通じて、農業に触れたことのない若い世代も、地元のコミュニティのなかで、誰もが小さい子どものように農業の面白さに胸を踊らせられる、こうした貴重な経験がこれから先にもつながっていってほしいと思います。